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0976・治療終了




 Side:ミク



 「ここで押し問答も鬱陶しいから、これだけは約束しろ。私達は助ける方法を一切誰にも見せない。これが助けてやる条件だ。呑むか呑まないかは、そっちの好きにするといい。私はどちらでも構わない」


 「その条件を呑みます。ですから夫の命をお願いします!!」


 「分かった。皆、ここの面倒な伯爵を助けたらすぐに出て行く。そのつもりで」


 「心配ないわよ。こっちを捕まえようとしてきたところで相手になんてならないしね。私達が本気で暴れたら壊滅するけど、まあ、バカが悪いって話で終わるわ。しょせん何処までいっても、人間種なんてそんなものだもの」


 「アレッサもそんな事を言えるようになったのねー。と思ったけど、伊達に500年も生きてないか」


 「誰かさんみたいに1000年以上生きている訳じゃないけどね。って今思ったんだけど、カルティクって私より年下じゃない。確か300年ぐらいだった筈」


 「いや、大分前に言ったでしょうが。忘れたの?」


 「忘れてはないけど、理解はしてなかった感じかな? そもそもある程度生きると気にしなくなるじゃない?」


 「まあね。300年ちょっとしか生きていない私でも、もう年齢なんて然程気にしなくなってるもの。500年とか1000年だと本当に気にしないんだと思うわ。似たような毎日の繰り返しだろうし」


 「そうよ。だからこそ長く生きる者にとって最強の敵は暇なのよ。ミクも言ってたけど、暇ほどの強敵は他に存在しないもの。どんどんと未知が既知になっていき、知れば知るほど感情が動かなくなる。そんな感じかしら」



 下らない話をしつつ領主の館に移動していると、こちらに兵士がやってきた。慌てて銃を構えて喚くものの、ウェルディに一喝されて銃を下ろす。



 「貴方達は当家のお客様に対して何をしているのですか! さっさと銃を下ろしなさい!!」


 「しかし、我々は……」


 「ここから去りなさい! 当家の客に銃を向けるなど、当家に対して銃を向けると同じ事! それを分かってやっているのですか!?」


 「い、いえ! 決してそのような事は……!」


 「ならばさっさと戻りなさい!」


 「は、ハハッ! 失礼いたします!」



 そう言って兵士達は去っていったけど、こちらを睨んでくる事は無く困惑してたね? いったいどういう事なのかと思うけど、おそらく伯爵家の中にそういう指示か命令を出した奴が居るんでしょ。


 私達はそのまま馬車と共に進み、再び伯爵邸へとやってきた。いちいち鬱陶しい目で見てくるヤツが居るが、そういうヤツはウェルディが一喝して止めさせていく。そうやって伯爵の部屋まで来たけど、邪魔者が居たようだ。



 「いったい何をしに現れた! お前のような者の所為で我が子が撃たれたのだぞ! しかもその薄汚い者どもを連れて来おって。今すぐ伯爵家から出て行け!!」


 「今すぐお義父様を部屋の外に連れ出して下さい。……早く!!」



 ウェルディがそう言うと、隣に居た家令がすぐに命じる。ウェルディは侯爵家の令嬢だよね? 何で先代らしきこのオッサンは偉そうに振舞ってんの? 本当に貴族なのか疑問に思えてくるよ。



 「奥様のおっしゃられた通り、先代様をお部屋まで連れて行きなさい」


 「「「ハッ!」」」


 「くそっ! 離せ! そこの薄汚い連中を息子に近づけるな、女狐めが!! 離せと言っておろうが!!!」



 どうやらいちいち鬱陶しかった元凶はアレか。先代伯爵なら確かに兵士に命令を下せるだろう。実際には当主ではないので命令権は無い筈だけど、そんな理屈はバカ貴族には通用しないし周囲は忖度する。その結果だろうね、兵士が来たのは。



 「これから治療はするけど、この部屋から全員出て行ってもらおうか。何度も言うが、私達は治療法を教える気も見せる気も一切無い。それが守られないなら助ける気も無い。好きに選べ」


 「分かっています。私が助けていただいた時も同じでした。治療法は問わない、知ろうとしない。皆、出て行きましょう。夫が助かる事が一番大事であり、それより優先する事柄などありません」


 「……かしこまりました。皆、出ますよ」


 「しかし」


 「出ますよ」


 「……分かりました」



 そう言って部屋を出て行く。いちいち面倒な奴等だよ、まったく。部屋を出た後で、イリュとカルティクが空間と闇影を使って完全に遮断してくれたので、部屋の中を見る事も聞く事も出来ない状態になった。


 その部屋の中で、私は伯爵に眠りの香りを注入して寝かせると、まずは体の中の銃弾を摘出する。私は触手を細くして服の中へと滑り込ませ、体に残っている銃弾を絡め取って引き抜く。


 その後、伯爵の体に【浄滅】を使い、最後に生命の神の権能で傷を治せば終わりだ。2分も掛からずに終了したのでイリュとカルティクに遮断を解除してもらい、私達は部屋を出る。


 部屋の前にはウェルディや家令などが居て、一斉にこっちを見てきたので私は答える。



 「伯爵は寝かせているけど、治療はもう終わった。助けてやったのだから、二度と私達に関わってくるな。迷惑だ」



 それだけを伝えて私達はさっさと伯爵邸を出る。先代とやらは伯爵邸の奥にある別邸に住んでいるらしく、そちらに反応があるがどうでもいい。私達は伯爵邸を出た後、そのまま町を出て行く。こんな所に居ても仕方ないからね。


 町を出てからバイクに乗り、私達はそのまま北へと走り始めた。南ガウトレアの北部分はまだ善人化が終わっていないので、そちらを先にする為に進んで行く。第2東町の者には北に進んだのを見られたかもしれないが、追いつけない以上は問題無いだろう。


 最悪は野宿でも構わないし、私達は色々と持っているので環境が悪い訳でもない。なので気にせず北へと走り、夕方前には第1北東町に辿り着く事が出来た。


 町に入った私達はすぐに宿の部屋をとり、食堂へと移動して夕食をとる。まったくもって面倒の極みのような連中だったが、私は二度と助ける気などない。そもそも治療法を開示しないのは、こちらを囲おうとしてくるに決まっているからだ。考えればすぐに分かる。



 「貴族だもの、都合よく使えるとなれば必ず囲おうとするわ。それも粘着質に絡んでくるに決まってるしね。とはいえ善人化するんでしょ?」


 「するよ。先代とやらは意図的にしないけどね。ヤツは完全な悪人だったから、両腕両足を切り落として放置する。碌に何も出来ない無力を味わってから死ねってところかな」


 「容赦ないけど、ミクが完全な悪人だと言うって事は何かあるわね。あの先代伯爵。それが何なのかは分からないけど」


 「今夜になったら分かるでしょ。ファーダかノノが尋問というか聞いてくるだろうし、それで明らかになるじゃない。口はつぐめないんだしさ」


 「正確には、魅了されているから口をつぐむという事すら考えられない、だね。そんな警戒する思考すら抱かせないし、最悪はマハルの持っていた魅了の香りを使ってもいいんだよ。自分に魅了されて溺れ死ねばいい」


 「そう考えると、マハルの持っていた香りって恐ろしいのよね。自分自身に魅了されるから解けない可能性が高いし、自分で自分に暗示を掛けるようなものだもの。建国できるのも納得ではあるのよ」


 「そうそう。あの頭のおかしそうな先代伯爵も、そういう風に自滅させたら? どうなるかの実験としてさ。五体満足でも狂ったのなら大丈夫だろうし」


 「五体満足は駄目よ、何をし出すか分からないわ。邪魔をさせずに観察するには、手足を無くしておべきね。私はそれよりも善人化の方が良いと思う。あんまりおかしな事をしたら、こちらの関与がバレるでしょ」



 それはそうなんだけど、アレ鬱陶しかったからなぁ。何とか潰したいんだけど……仕方ないかな?。


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