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0094・ドラゴンの話




 第3エリアで警戒しつつの犯罪者狩りを終え、1階で元の姿になり脱出。宿へと戻ったミクは食堂へと行き、大銅貨1枚で大麦粥を頼む。


 椅子に座ってゆっくりと待っていると、シャルが来てテーブルの反対側に座る。その後、大銅貨3枚分の注文を終えたシャルは早速ミクに話し掛けてきた。



 「第3エリアってのは面倒臭かったよ。突破したからいいものの、森な所為で緊張感を持たなきゃいけないし、妙な罠を仕掛けている連中も居たしさ。ブチ殺してやったけど、邪魔だったらないよ、まったく」


 「まあ、あそこでは罠が有効だから仕方ないんだろうけど、情報共有でもしてるのかってくらい似たような罠が多いんだよね。そのうえ適当に仕掛けてる奴等も居れば、キッチリと仕掛けてる奴等も居る。腕がバラバラなんだよ、あいつら」


 「そうなのかい? あたしは精神のおかしいっていうか、悪意の塊な連中を見つけて、近くにある罠を確認してる感じかな。罠を仕掛けて見張ってる奴等は、悪意を強く持つしダダ漏れなんだよ、おかげで簡単に見つかるから対処はしやすいね」


 「それなら楽だったろうね。それよりトレントはどうだった? 身体強化をして試した?」


 「試したけど、あたしの力では壊れる事はなかったね。思いっきり叩きつけたけど、特に問題の無いような感じだった。ただ、内部がどうにかなってる場合は分からないよ。あたしは専門家じゃないんでね」


 「私も違うけど、振って問題無さそうなら多分だけど大丈夫だと思う。駄目なら新しく作るから言ってくれればいいよ。私にとっても色々な情報を蓄積するには都合がいいし。何だったら剣を作ってもいいよ、私は使わないけど」


 「あたしもなんだか微妙な感じだね。何といってもパワーが強いから壊れそうで、今は使いたいとも思えないんだよ。元々は剣を使ってたっていうのに……」


 「仕方ないよ。パワーが強ければ強いほど、剣は使い難くなる。折れやすい武器で戦う奴なんて唯のバカだしね。普通の人間種なら問題ないんだろうけど、私達じゃ無理。壊れるのがオチだよ」


 「本当にそうさ。短剣ですらちょっと心配なのに、長くてしかもワイバーン素材じゃ作れないっていうなら、耐えられるとは思えないね」


 「ワイバーン素材で剣は無理だね。出来ても短剣が限度だよ。長柄は骨を練って固めて焼けばいいけど、刃物はね。1本丸ごとじゃないと強度が弱くなるし、牙1本でも30センチぐらいが限界で、それ以上の長さは無い」


 「だろうね。50センチとか60センチの牙なんて、流石のワイバーンにも生えてないさ。ドラゴンなら生えてるかもしれないけど、天然のドラゴンは倒せないし、手を出すのはマズい」


 「そうなの?」


 「ミクはドラゴンの事を知らないんだろうけど、ドラゴンってそもそも温厚なんだよ。別に何処かの国を襲うとか無いし。でも家族愛は凄く強い……いや、仲間意識が強いって言うべきか。その所為で、手を出されると大多数で報復に来るのさ」


 「成る程。だから天然のドラゴンに手を出すとマズいと。じゃあ天然じゃないドラゴンが居るってこと?」


 「いや、あたしは知らない。ただ、ここゴールダームのダンジョンなら居るかもしれないって言われてるね。ダンジョンボスとしてのドラゴンがさ。ワイバーンだって居るぐらいなんだし、ドラゴンだって居ると思うよ、あたしは」


 「確かにその可能性はありそうだね。っと、シャルはこれから第4エリア? あそこからはシャルも大変かもしれないけど、その肉体のスペックなら行けるでしょ」


 「いやいや、ミクについてきてもらうよ? そもそもミクだって<影刃>を連れてったんだろう? そう聞いてるよ。あたしにソロクリアさせようったって、そうはいかないさ」


 「んー……面倒臭いけど仕方ないか、私の方にも何か言ってくるかもしれないし。シャルは第5エリアで止まりそうだから、連れて行くだけは連れて行っておくかな」


 「そうしてくれると助かるよ。あたしだって第5エリアでお金稼ぎたいし、ゴールダームの最前線っていうのは興味あるからね。とはいえ、ソロクリアじゃ絶対に騒がれちまうし、それは勘弁してほしい」


 「私もそうだったからカルティクに頼んだんだけどね。それでも2人でクリアした事に騒がれたよ」


 「それじゃあ、ソロクリアなんて絶対に駄目じゃないか。面倒どころの話じゃない、貴族どもに拘束されかねないよ」


 「あんた達なんて話をしてるの。第4エリアをクリア出来て当たり前みたいに聞こえるから止めなさい。もちろんソロクリア出来るのは知ってるけども、誰が聞いてるか分からないでしょ」


 「たとえ聞いてたって、バカが何か言ってるって程度で聞き流すよ。プライドの無駄に高い連中ほど信用しないさ、そんな言葉。だから聞かれたところで大した事にはならないよ。それより何かあったかい?」


 「貴女じゃなくて、ミクに話があるのよ。今日も朝から元気に兵士達が走り回ってたわ。この区画にある、とある建物に雪崩れ込むようにね。結果、奴隷にされていた女性探索者や、違法な借金奴隷が見つかったそうよ」


 「そう。随分と悪どい連中が居たんだね。で、そいつらは?」


 「さあ? 蛻の殻っていうか、誰も居なかったらしいわ。助けられた女性達もよく分からないそうよ。何でも急に体が痺れて動かなくなったんですって。その間に何かあったみたいだけど、何も分からないって。どうも見てないらしいわ」


 「まあ、体が麻痺させられてたんじゃ、何があったか分からないだろうさ。目の前しか見えないだろうからね。いや、そもそも目が開けられるのかい?」


 「目を開けたり閉じたりぐらいは出来たそうよ。ただ、全員が壁の方を向かされて、壁以外が見えなかったらしいわ。一人はうつ伏せになっちゃって、何も見えなかったそうよ。その間に居なくなってたみたいね」


 「へえ……そりゃ奇怪な事件だ。しかも違法奴隷って事は裏組織かい? それとも闇ギルドかい? あたしはゴールダームの裏組織には詳しくないからさ」


 「潰されたのは闇ギルドの<強欲の腕>だそうよ。何でもドルム地下王国に本拠地があるらしいけど、ドルムでも本部のアジトは割り出せてないみたい。あそこは寒いから余計に調査が捗らないんでしょう」


 「まあ、あんなクソ寒いところで、ウロウロと移動なんてしたくないだろう。村から村、町から町の移動でも地獄だってのに。闇ギルドの捜査であっちこっちに行かなきゃいけないんて、いったいどんな苦行なんだか」


 『呼んだ?』


 「呼んでないよ。あんたも分かってて聞かずに、大人しく食べてな」


 「ドンナはどんな感じ?」


 『こんな感じ』


 「ミク、あんたも遊ばないでくれるかい? ドンナは食事と寝る時だけはしっかりしてるけど、それ以外はダラダラしてるかね。レティーみたいにアイテムバッグの上に鎮座してて、血抜きの時だけ元気に動くよ。たまに喰いやがるけど」


 『料理もいいけど、生も良い』


 「うん、分かる。やっぱり最高なのは踊り食いだよ。それは正しい」



 ドンナの言葉に「うんうん」と頷きながら話すミクに対し、「また言ってるよ、こいつ」という視線を送るイリュとシャル。流石に人間種の踊り食いは、引く事は無くとも理解は出来ない2人。まあ、当然と言えるだろう。


 そんな食事も終えて、ミクとシャルは第4エリアへと向かう。ミクにとっては久々の平原ダンジョンではあるが、シャルにとっては初めての場所だ。


 2人とも突破する事しか考えておらず、また、突破できて当たり前である事を疑ってもいない。当然、実力者である2人は油断も無く、ショートカット魔法陣に乗って第4エリアへ。


 夕方には宿に帰る予定で2人は動いているが、そもそもそれがおかしいという自覚は無いらしい。


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