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0970・カジノでの遊び その4




 Side:ミク



 マグヴェルを私が抱えたまま次の遊戯台へと向かう。次の遊戯台は……ブラックジャック? ここでは<21>という名前のゲームらしいけど、ガイアのブラックジャックとはルールが違うね。


 エースが1か11となるのは変わらないみたいだけど、Jは11、Qは12、Kは13とそのままみたいだ。よってカードが配られた段階でバーストしている事がある。当然その場合はゲームに参加せず終了となるようだ。


 このゲームではディーラーが勝つと賭け金がプールされていき、一巡目で<21>を達成した者が総取りできる仕組みになっているらしい。現在はまったくプールされていないので、誰かがゲットしたのだろう。


 ウェルディは参加用のチップである10ダルチップに変えて参加するようだ。私は皆に【念話】を行い、ある程度は参加してチップを減らす事を提案。いちいちこっちに悪意が向けられるのも面倒なので、100ダルチップ2枚にまで減らす事にした。


 これで使ったお金と変わらない訳だから、私達の懐が痛む訳ではない。このゲームはカードを配るディーラーが絶対的に有利なので、ここで負けておけばカジノ側がいちいち目くじらを立てる事も無い筈だ。ウェルディの200ダルは諦めよう。


 そう思い参加するも結構な割合でディーラーが勝っていく。どうやら必死になって私達のチップを取り戻そうとしているらしい。



 「あー! だう、うー! あー!」


 「これでいいんだよ、これで。いちいち面倒臭いし鬱陶しいからね」


 「………」



 私の一言でディーラーは理解したらしい。私達が意図的にチップを減らしている事と、悪意がこちらに向かっている事もだろう。


 急にチップを取り上げる速度が落ちて、ゲームとして上手く運ぶようにしている。特にウェルディに関しては勝ったり負けたりを繰り返しているみたいだ。私達は100ダルチップ2枚になった段階で席を立ち、後はウェルディを見守る事に。


 ウェルディ自身は楽しんでいるみたいなので、良かったと思おう。そろそろチップが尽きるなと思ったんだけど、そうなると盛り返させる。ディーラーが何を考えているのかと思っていたら、空いている席に偉そうなヤツが座った。



 「なかなかヒートアップしている台があると思ったら面白そうな状態じゃないか。お嬢さん、ワシと一つ勝負せんかね?」


 「どういう勝負でしょう?」


 「ワシが勝ったらそこにプールしてあるチップと同し量のチップを渡そう。お嬢さんが負けたらワシに同量のチップを渡してもらう。簡単じゃろう?」


 「私はそんなに持っていませんので、お断りします」


 「なあに、ここのカジノが貸し付けてくれるから問題あるまい。見たところハンターのようだし、ゆっくりと返せば済むじゃろう」


 「お断りします。何だかやる気が無くなったので、これで失礼しますね」



 そう言ってウェルディは席を立ち、私達の方へと来た。よく分からないオッサンはウェルディを睨んでいるけど、ウェルディは知った事じゃないって顔をしてるね。そもそもプールされているチップは結構な額だ。あんなもの、冷静なヤツなら払えないと分かるだろうに。


 私達も呆れてしまい、興醒めだと言わんばかりの態度で歩いていく。ハッキリ言って、あのオッサンは最初からウェルディに対して悪意を向けていたんだよ。それもかなり大きな悪意だった。


 もしウェルディが勝負するつもりだったなら、イカサマしてでも勝たせていたんだけどね。そうはならずに済んで良かったよ。いちいち余計な揉め事になっていた可能性もあったし、わざわざ下らない事なんてしたくなかったしね。


 私達は入り口にあるチップの換金所に行き、チップをお金へと換金する。100ダルチップを換金する場合は95ダルでしか返ってこないらしい。まあ、いいかと思いつつ換金し、少しの負けで私達は帰る事にした。


 大通りの宿の部屋へと戻った後、マグヴェルの夕食を作りつつオッサンの反応を奇妙に思っていると、私の態度に気付いたアレッサが声を掛けてきた。



 「ミク、どうかした?」


 「最後にウェルディに声を掛けてきたオッサン。カジノの奥にずっと反応があるんだよね。だからだけど、もしかしたらカジノのオーナーか侯爵なんじゃないのって疑ってる。ウェルディはここの侯爵の顔を知ってる?」


 「もちろん知っていますが、あの怪しい人物ではありませんよ。それにあそこまでのイヤらしい顔をするような人物でもありません。あのような小物ではなく、何というか大物感のある人物であり、結構な髭をたくわえています」


 「あのオッサン、髭はまったく無かったものねえ。その侯爵が付け髭でもない限り同一人物はあり得ないでしょ」


 「こう、説明し辛いのですが、顔がまったく違いますから同一人物はあり得ません。カジノのオーナーが誰かは知りませんが、その上に侯爵が居るのは間違いありませんね。それ以上は私には分かりません。夫なら知っているかもしれませんが……」


 「まあ、大丈夫でしょう。こっちに何かしてくる様子も今のところは無いし、私達の後ろを尾行している奴等も居なかったしね。となると、特にどうこうしようと思ったわけじゃない……なんて事はないわよねえ」


 「あそこまでウェルディに悪意を向けていた以上、借金を背負わせてどうこうしようと思っていたんでしょうね。向こうは普通のハンターだと思っていたみたいだし、身の丈に合わない借金をさせて奴隷に落とそうという気しか感じないわ」


 「だよねえ。あの好色そうなオッサンからは、それ以外に見えなかったし、ウェルディが逃げたのは正解ね。まあ、あの視線を向けられて逃げないヤツは、よっぽどのバカだけだろうけど」


 「よし、出来た。後は冷ますだけで出来上がりっと。次はイリュだから渡しておくけど、気をつけてね」


 「私、こう見えても1000年以上生きてるんだけど? その間に赤ん坊を抱いた事とかいっぱいあるから大丈夫よ。1000年の経験を舐めないでちょうだい」


 「1000年?」


 「あぇう?」



 1000年以上の経験があるのは事実だけど、それをウェルディに聞かせる意味は全く無かったね。まあ、イリュは気にしていないし、知ったところで問題無いって思ってるみたいだけど。


 それに信じないという可能性も十分にあるから、適当に流せば済むかな? マグヴェルはイリュに食べさせてもらって御機嫌にアムアムしてるけど、そのイリュの顔をボーッと見てる。


 何か態度とか反応を見てると転生者かと思ってしまうんだけど、まだ一歳にもならないんじゃ分からないんだよね。普通の子供の場合、三歳までの記憶というのは失われてしまうから、今日の発言も普通の子供なら忘れるだろう。


 転生者なら分からないけど、転生者とて肉体の齎す結果には抗えないと思うんだけどね? その辺りは何とも分からない部分なので、私であっても不明で理解はできない。まあ、転生者だろうと私達がボロを出さなければ問題は無し。


 転移者や転生者に関して口走らなければいい。そうすれば分からないまま終わる。そもそも転移者だろうが転生者だろうが、私達にとってはどうでもいいしね。人間として産まれた以上は大した力なんて持ってないし、この星は既に銃がある。


 チートで俺Tueeeeeなんて無理なんだし、だったら放っておけばいい。魔力や魔法で何かをやらかしても、狙撃銃で殺される星だ。もし死んだら、やらかしたバカが悪いで終わる。


 転生者が居ても、その程度の事でしかない。


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