0967・カジノでの遊び
Side:カルティク
私達は南ガウトレア中央町の繁華街、その中心にあるカジノにやってきた。かなり大きな施設であり、入る前から中から大きな音がするのが聞こえてくる。実際に中に入ると煌びやかな見た目であり、派手な場所になっているのが一目で理解できる。
あからさまに客を嵌めようとしているのがよく分かるわ。射幸心を煽って金を吐き出させ、自分達の養分にしようというのが丸分かり。ガイアのカジノのようにバニーガールは居ないけど、扇情的な服を着た女性が働いているみたいね。
この星では未だに女性は足首までしか人目がある所では出さないけど、太腿の半ばぐらいまでしかない広がったスカートに薄手のブラウス、そして何故かネクタイをしてるわね? 同じ格好の女性が多いから制服なんでしょうけど、随分と変わった格好をしてる。
そんな女性達に下卑た視線を向けている男達。大変分かりやすい集金システムが目の前にあるんだけど、ウェルディはちょっと嫌そうにしてる。そんなウェルディに顔に出さないように言い、私達は色々と見ようと歩き出す。
すると、横から男性の従業員が声を掛けてきた。日本のビジネスマンそっくりのスーツ姿だけど、何故か蝶ネクタイをしてる。これが男性従業員の制服かしら? 完全に黒服だけど、私達は微妙に見慣れてるから何とも言えないわねえ。
「お客様。当カジノではチップをご購入頂く必要がございます。まずはカジノで必要なチップをご購入下さい」
「チップね、それってどういうもの?」
「下から1ダルのチップが黄色、5ダルのチップが緑色、10ダルのチップが青色、50ダルのチップが赤色、そして100ダルのチップが紫色となっております。それぞれの遊戯によって払い戻しのチップ量が違いますので、それぞれの遊戯台でご確認下さい」
「じゃあ、お試しとして200ダルずつにしようか。私が二人分出すから、三人は自分で出してね」
「ういうい」 「はーい」 「分かってるわ」
私は200ダルを出して5ダルのチップを10枚、50ダルのチップを1枚、そして100ダルのチップを1枚購入。全員がチップを持って一塊で遊戯台を見に行く事にする。周囲を警戒しながらだから、一塊になるのは仕方がない。
まず最初に見つけたのはルーレットだった。これはガイアで見た事があるわ。ただし当たった場合の倍率が悪く渋い。とはいえ、それは私達がガイアのルーレットを知っているからであって、知らなければこういうものだと思うでしょうね。
色が合えば1.5倍、偶数か奇数かが合えば2倍、数字が合えば5倍となっている。それ以外には賭ける場所がないのでそんなものなのだろう。私は偶数の場所に5ダルのチップをベットしてゲームを開始する。皆も思う所に賭けたらしい。
ルーレットが回り、それを見ていると玉が投入された。そのまま見ていると入ったのは赤の11で、見たところイカサマは無し。おそらくディーラーはある程度は狙った所に玉を落とせるのでしょうね。技術ならイカサマとまでは言えないし、証明できない。
なかなかに厄介なやり口かとも思うけど、私やイリュなら自在に玉を狙った所で止められるし、跳ねさせる事も可能なのよね。だから私達の方が卑怯かしら。いえ、ミクなら視認できない速度でやるから、私やイリュの方がまだマシか。
それは横に置いておくとして、ウェルディが当たったみたいだから続けるようね。ちょっと楽しそうだから好きにさせましょう。それに、私達も賭けて遊びましょうか。
…
……
………
私もそうだけど、皆も100ダルチップが1枚しか残っていない。色々と相談して、ここは一点賭けをする事にした。全員が20を選択して賭ける。そして回るルーレットと玉を送るディーラー。
20に近付かない場所に落としたんでしょうけど甘いわね。私は闇影を操り球を跳ねさせて移動させる。そしてイリュが空間ごと固定して20番で止める。それも自然に止まったかのように見せかけた。流石はイリュ、綺麗にやったわね。
「よっしゃー!! 最後の最後に勝ったわ! あはははは、最後に勝てば良いのよ、最後に勝てば!」
「キャー! 勝ったわ、最後の最後で5倍だなんて凄い!」
「あー! だぁ、だーあ!」
何故かマグヴェルも喜んでるけど、ああやって単純に喜んでいると私達がイカサマをしたとは思われないだろう。私とイリュとミクも喜んでいるフリをしているし、傍目には運良く当たってラッキーにしか見えない。
私達は100ダルのチップを5枚貰い、今度は別の遊戯台に移動する事にした。ルーレット以外にも色々とあるので、ここで賭け続けるのも楽しくない。移動していて次に見つけたのはナイフ投げという変わったものだった。
こんなのカジノにある? とは思うけど、割と人気のゲームみたい。ディーラーに全てされるのではなく、自分の腕で何とかできるからだろう。的に当てて合計点数を競うものと、カジノのチャンピオン相手に戦うものの二種類あるらしい。
せっかくなのでチップを両替してもらい、10ダルチップを支払って的当てをアレッサが始めた。投げる場所から的までは10メートルくらい離れてる。感覚的に微妙な距離ね、コレ。
的の中心は100点、その周りが50点でその外側が20点、一番外周が10点で、的に当たらないと0点。シンプルで分かりやすいものだった。
投げナイフを五本投げて合計点数を競うらしいけど、五本全て100点なら10倍になって返ってくるみたい。つまり10ダルチップが100ダルチップになるという事。なのでアレッサは気合いを入れて始めた。
「くぅぅぅぅぅ、アレぐらい別に良いでしょうが! ほぼ真ん中じゃないの!」
一本がほんの僅か中心からズレたので50点になってしまい、アレッサの点数は450点。10ダルチップが返ってくるだけだった。とはいえ、この的当ては賭け金が返ってくる可能性が高い為、長時間遊びたい人には人気があるらしい。
そしてミクがついに出陣し、カジノのチャンピオンに挑む事に。周りからも観客が集まったけど、未だかつてチャンピオンに勝った者は居ないみたいね。ちなみにチャンピオンに勝ったら100ダルチップが10枚らしいわ。よっぽど負けない自信があるのね。
ミクはチャンピオンへの挑戦に必要な100ダルチップを支払い、チャンピオンを呼び出した。格好をつけて登場したのは、見た目だけは品の良さそうな優男だ。なんかピエロでもしてそうな男ねえ。
「チャンピオンである私を御指名との事で登場いたしましたが、まさかこんなに美しいレディに挑まれるとは思いませんでした。しかし私もチャンピオン。美しさに揺れるような心は持っておりません。それではチャンピオンの妙技、とくと御覧あれ!」
本当にピエロみたいな奴ね? 見目はかなり良いと言って良いんだけど目が超絶にマイナス。演技をするなら全てきちんとやりなさい。相手をカモにしか見ていない目をしながら演技をしても意味なんて無いわ。観客にすら見抜かれるわよ。
始まったチャンピオンとの勝負は、ミクが先行でスタート。当たり前だけど中心に当てて100点を出した。その後はチャンピオンが投げて、交代しながらゲームは進む。
さて、このチャンピオンという輩はどこまで耐えられるのかしら? ミクが外す事なんて絶対にあり得ないんだけど、チャンピオンの側は唯の人間でしかない。さっきのルーレットのディーラーは魔族だったけど、普通の人間ではね。
集中力が最後まで保たないでしょう。ミクとの勝負に勝つ事はイカサマを用いても不可能よ、だって相手は最強の怪物。崩れる事も失敗する事も無い。何だったら透明の触手を使ってでも勝つでしょうしね。
ミクという存在そのものがイカサマなんだもの、それに勝つなんて人間じゃ不可能よ。




