0966・南ガウトレア中央町
Side:アレッサ
わたし達はバイクで走り続け、南ガウトレア中央町が見えた辺りでバイクを降りる。アイテムバッグにバイクを収納したら、徒歩で南ガウトレア中央町へ。多少の者には見られたものの、珍しいという感じで悪意は飛んできていない。
ミクも含めて感じていないのだから、今のところ悪意は無いのだろう。そのまま中央町へと入ったわたし達は宿を探す為に聞き込みを開始。程なくして三つの地区の宿の情報が集まったが、何処に泊まるかで悩み中。
「1つ目はスラムに近い宿。金額が安いのと、泊まっているのが伯爵家夫人だとバレる可能性が低いのが良さ気。2つ目は繁華街にある宿。一応はきちんと整えられているらしいけど、人通りが多いのと有象無象が居ても怪しまれないので襲われる危険性は高い」
「最後が大通りの高級宿。安全は担保されるだろうけど、単純に金額が高い。何処に泊まるのが一番良いかとなれば、マグヴェルが居る以上は大通りの宿に泊まらざるを得ないわね。私達だけなら間違いなくスラム近くだけど」
「そうね。襲ってきた者は叩き潰せば済むし、私達を襲ってタダで済む奴なんて居ないもの。私達もそうだけど、中途半端な宿が一番困るのよね。特に繁華街のヤツは最悪で、怪しいヤツが居ても不思議じゃないのが面倒なの」
「スラムに近い所って人通りがそこまで多くないから、警戒としてはしやすいんだけど、繁華街の辺りって一番警戒し辛いの。人が多く居るのが当たり前だから、誰が襲ってくるか分からない。だからスラムに近い所か大通りかの二択になるわけ」
「成る程、そういうものなのですね。私としては安全を一番に考えて、大通りの宿が一番良いと思います。カジノがある町ですから高額なのは知っていますが、危険に晒されるのは……」
「まあ、そうね。必要経費だろうし大通りの宿に行きましょうか。たまには高い宿に泊まっても悪い事は無いんだし。ただ、部屋が空いていてくれれば良いんだけど、カジノがある町の宿に泊まる客って多そうだし、部屋は大丈夫かしら」
「ま、行ってみてからよ。まずは行って聞かないと部屋が空いてるかは不明だしね」
話が纏まったわたし達は大通りの宿に行き、五人部屋があるか聞いて行く。結果としては五人部屋が空いている宿は三軒目で見つかったのだが、その金額があまりに高くてビックリした。
「五人部屋一泊で50ダルってビックリよ。流石にここまで高い宿は始めてだわ。流石はカジノがある町の大通りの宿ね。値段の割にはこの程度の部屋だし、食事もついてないのに無駄に高い」
「部屋の中だから良いけど、外で言うのは止めなさいよ。それにしても高いうえにコレじゃ、値段に見合った部屋じゃないのは確実ね。まだマシな宿は既に押さえられていて、こんな宿しか残ってなかったんでしょう」
「それにしても酷いわね。町によってはスラム近くの宿と同じぐらいよ? スラムに近いっていう立地の悪さだけで、良い宿なんて結構あるもの。それにボッタクリじゃないしね」
「私から見てもこの宿は酷いですので、これがボッタクリなのだと初めて知りました。今まではきちんとした宿を押さえていてくれたのだと、改めて知れたのは良かったです」
「流石に貴族に対してボッタクリはしないでしょ。宿の部屋のランクなんて、少なくとも貴族の従者にはバレるからね。そこでボッタクリをしようものなら、貴族から貴族への噂に上るし」
「この宿への愚痴はここまでにして、カジノはどうする? まだ昼前だから、食事をしてから行ってみても良いと思うよ」
「とりあえずマグヴェルの食事を終えてから、私達の食事を済ませましょうか」
ミクが部屋で食事を作り始めると、マグヴェルが騒ぎ始めた。泣いている訳じゃなくて、どうやら匂いで何となく食事だと分かったみたい。特に変わらず煮込んでいくミクだけど、マグヴェルは段々とご機嫌になってきたようね。
「あ、あ、うーあ、あぶ、うーう」
「何が言いたいのか分からないけど、多分早く食べたいってところでしょうね。思っている以上に食べる子だけど、元々?」
「いえ、元々そこまでは食事を食べてくれない事もあって困っていたのですが、何故かミクさんの作るものは喜んで食べているみたいです。いったい何故でしょうか?」
「わたし達に分かる訳が無いんだけど、何故かしらね? 押し麦が入っているからなのか、【浄化魔法】を使っているからか、それとも近くで料理をしているから? 色々と考えられるわね」
「環境が違うから、しっかり煮込まれているから、とかもありそうじゃない? ミクはグズグズになるまで煮込んでるし、案外と芯が残っていて嫌とかあったんじゃないの」
「料理人達が作っているので私には分かりませんが、もしかしたらそういう部分もあったのかもしれません。色々と考えてみないといけませんが、まずは帰ってからですね」
ご機嫌なマグヴェルを待たせつつ、出来上がったらミクが魔法で冷まし、今回はカルティクが食べさせて行く。今までと変わらずご機嫌な顔でモグモグしたりアムアムしたりしながら食べていくマグヴェル。
それを見てホッコリしつつ、食事が終わったらマグヴェルを連れて食堂へ。適当に注文して料理を待ち、食事が終わったらカジノへと行ってみる事に決まった。今のウェルディはドレスじゃないので大丈夫でしょう。
流石に皮のジャケットや皮のズボンを履いた人物を、伯爵夫人だとは思わないでしょうからね。カジノは繁華街の中心にあるので、繁華街を見て回りながら向かう。ウェルディはドレスや宝石などを見ているが、あまり欲しそうには見えない。
「ここに飾られている物は、品質的には二流の物ですね。一流の物は宝石店が手放さないでしょうから当然ですけれど、庶民と言えば聞こえは悪いかもしれませんが、その辺りの方に手が届く物です」
「まあ、貴族がカジノに来たりはしないでしょうし、仮に来たとしても身代を崩すほどに散財はしないわよ。流石にそれは恥だしね。となると庶民が傾くぐらいの物を見せて、カジノに誘導するんじゃない?」
「そうね。こういう所に飾ってある高級品は、基本的にカジノに誘導する為の物でしょう。貴族相手をあまり考えていないならターゲットは庶民だし、事前の情報を考えるに庶民を相手にやってるわよね?」
「借金奴隷の事とか、犯罪者の事を考えるとそうでしょうね。返せない借金を背負わせて犯罪をさせている可能性もあるし、色々と見る必要があるわ。ウェルディも注意して」
「はい。色々な噂は私も聞いた事がありますし、危険な事が多いとも聞きます。ですが一つ訂正を。貴族もお忍びでカジノに行く者は多いそうですよ。散財し過ぎたと、夫に借金の申し込みに来た方が居ましたので」
「まあ、何となく想像はついたけど、想像通りの事をしてるのねえ。貴族らしいと言うべきか、それでこそ貴族と言うべきか……。もちろん悪い意味でだけど、期待を裏切らない連中ねえ」
「繁華街で堂々と話す事でもないし、そろそろそっち系の話題は止めましょうか? それよりもカジノはもう目の前だし、中がどうなってるのか知らないけど、きちんと警戒してよ」
「分かってるわよ。隙なんてみせる訳が無いでしょう」
それが本当なら良いんだけど、怪しいから念を押したのよ。分かってない訳じゃないんでしょうけど、本当に大丈夫なのか疑問があるわね。カルティクがついてくれるだろうし、大丈夫だとは思うけど……。
ま、何かあっても自分で何とかするでしょ。こっちにまで迷惑を掛けなきゃ何でもいいか。




