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0963・南ガウトレア第1西町に到着




 Side:イリュディナ



 ウェルディが子供をあやしている。周りには人が居ないから良いけど、なかなか難儀な事になりそうだわ。それはともかくとして着替えさせなきゃいけないし、これから先を考えると頭が痛くなってくるわねえ。


 それでもここで捨てていくという選択肢は無いし、これを見捨てると私達までクズの仲間入りをしてしまうわ。だからこそ母子共に助けるんだけど、どうして一歳にも満たない子供を連れて長距離移動なんてしたのかしら?。



 「夫にも随分と反対されたし、私もまだ小さいからと言ったのだけれど、父がどうしても孫に会いたいとしつこくてね。私や夫が折れた形よ。まさかこんな事になるなんて思ってもみなかったわ。父も母も孫に会えてデレデレだったけど」


 「ああ、何かの策略じゃなくて、唯の孫バカか。それに関してはどうしようもないし、何を言ったところで付ける薬なんて無いでしょうね。治るとは思えないし、放っておくしかないんじゃない?」


 「そうね。そういうのは聞くわ。私には分からないけれど、それなりに聞く話である以上は多いのかしらね? 自分の子供は育てなければいけないから大変だけど、孫は甘やかしても良いから愛でるらしいわね。子供夫婦は迷惑するらしいけど」


 「そんなの聞くわね。それよりミクは固まってるけど、どうかした?」


 「おむつと抱っこ紐なんかをファーダが調達中。ガイアには色々とあるから買って来てもらってる。子供は流石に緊急事態と言っていいし、向こうのを持ってくるのは已むを得ない。だからこその買出し」


 「まあ、仕方ないかな? 流石に何かあったら寝覚めが悪いし、目を逸らせばセーフでしょ。何より子供の命を救う為だもの、あまり文句を言っても仕方がないわ。言われる可能性はあるけど、止められてないのよね?」


 「そうだね。文句を言われる事も無いから、特に問題ないのかもしれない。まあ、緊急避難的にセーフなんだとは思うけどね。文句を言われていない以上は、確実にセーフでしょ」



 子供をあやして落ち着かせたウェルディからマグヴェルを受け取り、代わりに服を渡して着替えさせる。流石に自分一人で着替えが出来ないとかいう、深窓の箱入り御嬢様じゃなかったので助かったよ。面倒臭いのはゴメンだからね。


 ウェルディが着替えている間に、ファーダが買って来てくれたおむつや抱っこ紐などをミクがアイテムバッグに仕舞い、マグヴェルの服を脱がせておむつを履かせる。商品に図解で解説が入ってるから分かりやすいわね。


 それと私以外の二人が妙に興味津々で見てるのが気になるけど……。



 「いやぁ、こんな状況でもなければ子どもにおむつを履かせるところなんて見れないじゃない? あのガイアのおむつがどんなのかと思ったら、やっぱり私達が想像する物とは違うわねえ。妙に簡単な感じ」


 「そうねお尻の下? に敷いて前を持って来て左右からテープみたいなので止める? 感じかしら。布のおむつとも違うから何か新鮮ね。っと、ウェルディが着替え終わったようだわ」


 「申し訳ありません、私のドレスを……って、マグヴェルに履かせているソレは何ですか?」


 「これはおむつだよ。漏れるのを防止してくれるっていうヤツ。なかなか優秀だと思うけど、本当に漏れないのかは実際にマグヴェルがしないと分からないね。それより、子どもを背負う抱っこ紐がコレね」



 ミクは何だか大きめのよく分からない物を取り出したわ。抱っこ紐とか言ってたけど、妙な器具じゃない。なんであんなのを紐と呼んでるのかしら、意味が分からないわね。



 「これはベビーキャリアとか言うらしいよ。私もイマイチよく分からないけど、こうやって装着して、ココに子どもを乗せるんだって。そうすると安全に子どもを連れて歩けるみたい。腕を使わなくていいから便利みたいだね」


 「へー、これ凄い。子どもをココに乗せて、両腕が空くから確かに便利ね。必ず腕を使って子供を抱いてなくちゃいけない訳じゃないし、子どもが落ちそうになったりしないみたいだし」


 「バイクに乗る時はおんぶする形で使えばいいよ。このベビーキャリアっていうのは、縦抱き、横抱き、前抱き、腰抱き、おんぶと五つの抱き方に対応してるんだってさ。でも縦と横以外は生まれてからの日数で出来ないみたい。マグヴェルって生まれて何ヶ月?」


 「今は……7ヶ月くらいかしら? 出来ないっていうのが分からないけど」


 「おんぶは生まれて3~4ヶ月からで、首がすわってないと危ないの。前抱きと腰抱きは5~7ヶ月からで、腰がすわってないと危険だからだね。7ヶ月なら腰もすわってるだろうし、どの抱き方でも問題ないんじゃないかな」


 「バイクに乗せるんだから、おんぶ一択だけどね。それでもベビーキャリア? っていうのがあるだけマシっていうか、安全だから色々な意味で助かるわ。とにかくそろそろ出発しましょう。このまま喋っていても時間が過ぎるだけよ」



 私達はアイテムバッグからバイクを取り出して乗り、ミクの後ろにマグヴェルをおんぶしたウェルディを乗せる。あのベビーキャリアっていうの目立つけど、今は仕方ないわよね。子どもの安全には代えられないわ。


 それとウェルディが着ているのはドラゴン皮の服だから、色々と勘違いされる元かもしれないわね。まあ、私達が守ってあげれば済む事ではあるか……。子どもや母親が傷つくというのも業腹だし、貴族かどうかは別にして助けてあげましょう。


 私達は子供が危険でない速度で走り、南ガウトレアの第1西町に辿り着いた。やはりある程度の距離を進んでいたわけね。その御蔭で楽に着いたけれども、ウェルディは未だにバイクに驚いているみたい。



 「バイクに驚いているみたいだけど、そこまで驚く事かしら? マグヴェルは風を浴びて何だか喜んでるみたいだったわよ?」


 「えっ? そうなんですか。それならば良かったのですが……あんな速さで動く物が在るとは思いませんでしたので、驚きでした。マグヴェルの事が心配ですし、それに速いので落ちたらと思うと……」


 「ああ、そこは気にしなくても大丈夫よ。少なくともミクの後ろに乗るのが一番安全だし、そこなら落ちる事はまず無いわ。だからノノだって乗ってるでしょう?」


 「ニャー」


 「あ、はい。むしろ寝そべってましたけど、よく落ちませんね? むしろそれが不思議です」


 「ま、気にしたら負けよ。それより町の者にバイクを見られると鬱陶しいから、外で下りてさっさと町に入りましょう。面倒臭い絡みとかゴメンだからね」


 「分かりました」



 ウェルディがミクの後ろから降りたので、その後にミクも下りてバイクをアイテムバッグに仕舞う。私達もアイテムバッグにバイクを仕舞い、何食わぬ顔で第1西町に徒歩で入った。


 すぐに宿を探して入り、五人部屋を一日分とる。夕方前なので食堂に行くんだけど、まずはマグヴェルの食事が先ね。既に7ヶ月である以上、離乳食なんだけど……どうしようかな?。


 茹でた野菜とかで良い筈だけど、何だったらグズグズにした押し麦でも良い気はする。野菜と押し麦でなんとかなるかな? とりあえずウェルディに聞いてみましょう。



 「我が家でも野菜ですし、それで特に問題ないと思います。押し麦がちょっと分かりませんけど……」


 「押し麦は大麦の中の部分を取り出して、蒸して潰した後に乾燥させた物よ。つまり大麦ね」


 「でしたら大丈夫なのでは? グズグズになるまで煮込めば食べられないって事は無いでしょうし」



 どうやら大丈夫そうな感じね。


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