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0961・女性とメイド




 Side:ミク



 盗賊に襲われた馬車の中に居たメイドに助けてくれと言われ、その襲われていた馬車に入ったけど、中は血の臭いで充満していた。馬車の座席に座って前に背を向けている女性は虫の息であり、必死になって抱いている子供を守ろうとしていたのが分かる。


 他にも執事のような男が居るが、その男は女性を庇っていたのか床に倒れて死んでいる。どうやらこの血の臭いの多くは男の物らしい。あのメイドは運良く助かっていたみたいだ。どうやったのかは知らないが。


 馬車の中にメイドが入ってきたけれど、私は有無を言わせずに行動した。



 「「バン!」「ギャァッ!」。そして、よっと……。デリンジャーも奪ったし、これで下らない事は出来ないだろう。お前には聞きたい事があるからね、殺しはしないよ」


 「な、何をするのですか!? 何故「お前が悪人だからだ」私が足を撃たれて……」


 「私は魂の色を見て、善人か悪人かが分かるんだよ。お前は最初から悪人だった、盗賊どもと同じくね。だからお前を信用する事など無い。カルティク、こいつを外に引きずり出して見張っておいて」


 「了解。さぁ、来なさい!!」


 「痛ッ! 止めろ、離せ!!」



 どうやら撃たれた事で私達には通用しないと判断したんだろう。あの口調が素なんだろうけど、隠す気は無くなったらしい。私は虫の息の女性に対し眠りの香りを注入すると、女性から赤ん坊を取り上げ、触手を使って弾を摘出していく。


 素早くやらないと間に合わない恐れが高いので、出来得る限り最速で、かつ女性の体になるべく負担を掛けないようにしていく。全部の弾を摘出し終わったので、女性に【聖清】と【浄滅】を使って綺麗にし、最後に生命の神の権能で治療する。


 傷口はすぐに回復し、女性の状態は安定した。私は女性を右手で担ぎ上げて再度【浄滅】を使うと、馬車の外に出る。メイドはどうなったのかと思ったら、裸に剥かれて両方のアキレス腱を既に切られていた。



 「必死になって逃げようとするから鬱陶しくなってね、それでアキレス腱を切っておいたのよ。勘違いだったらミクが戻せるでしょ? 勘違いの可能性は低いけどさ」


 「まあね。女性は助けたし、子供は元々無事だった。ただし女性を庇ったであろう執事は死んでいたよ。馬車の壁を弾が貫通してたからね。問題はコイツが何故無傷だったのかだ。女性の背にも撃たれた傷があったのに、何故かメイドが無傷なんだよねえ」


 「……執事が庇ってたのよね? 何でそれで女性に弾が当たってるの? 流石に執事で止まるでしょ。……ミク、執事は女性を庇ったままだった?」



 私が右手で担いでいる女性をカルティクに渡していると、イリュがそんな事を言い出した。やっぱりそこに疑問を持つよねえ。



 「執事の男は床に倒れて死んでた。覆いかぶさったままなら女性にまでは到達してなかっただろうね。そしてもう1つ、デリンジャーの薬莢が馬車の床に落ちていた。その数は五個で、女性の背中の傷も五ヶ所だったよ」


 「「「………」」」


 「………」



 メイドの女はそっぽを向き、何も話そうとはしない。しかしそんな事は何の問題も無い。何故なら地獄に落とすからだ。それより、そろそろ女性には起きてもらわなきゃけないね。権能を使ってさっさと起こすか。



 「……う、あ………ここ、は?」


 「ここは事件現場だよ。貴女が乗ってた馬車が盗賊に襲われてね、私達が助けた時には死に掛けだったよ。まあ助けたから既に無事だけどさ、それにしてもギリギリだったね。少しでも遅れてたら死んでたよ?」


 「死んで………あ、マグヴェル! 私のマグヴェルは!?」


 「赤ん坊の事? だったらここに居るよ。命に別状は無し。何故か寝てるけど、そのうち起きるんじゃない? それより聞きたい事があるんだけどいい?」


 「……何かしら?」


 「いや、私達は盗賊でも何でも無いし、ついでに命を助けたんだから感謝ぐらいしなさいよ。貴女、背中を五ヶ所も撃たれて死に掛けてたのよ?」


 「…………確かに、あの時背中に衝撃があって、背中が熱くなってきて……うっ」



 女性は立ち上がると近くの茂みに行こうとし、盗賊どもの死体を見たからか、その場で吐き出してしまった。私達は少し離れて飛んでこない所まで退避し、子供も吐瀉物から離す。だって汚いからね。



 「うぉぇ、ごほっ、おげぇ………。はぁ、はぁ、はぁ。私は背中を撃たれて死に掛けていた。確かにそれは覚えているわ。にも関わらず、何故?」


 「そこは考えなくても良いんじゃない? 助けてあげたのは事実だけど、助けた方法まで話す気は無いよ。それが納得できないのであれば、貴女と子供はここに置いていくし」


 「嫌な言い方かもしれないけど、助けた相手が善良とは限らないからね? 特に貴族は」


 「………」


 「ハハハハハハハ……。助けてもらって態度がソレ? やっぱり貴族ってヤツはクソね! あんた達も何でこんなのを助けたの? 無駄な行動としか思えないわよ? こいつらがまともな謝礼を払う筈が無いし、タダ働きで終わりよ!」


 「そういえば、間違いなく盗賊の味方なんだろうけど、何故お前はわざわざそんな事を? 貴族家のメイドなら、それなりの給料を約束されている筈でしょ」


 「そんなのはどうでもいいわよ。だって私は貴族に対する恨みと憎しみでやったんだし、お金の事なんて二の次なのよ。こいつらが苦しむのなら何でもいい」


 「な、何ですって……。リリベル! 貴女なんて事を!!」


 「ハハハハハハハ! そうそう、私はリリベルっていうの! 正しくはリリアベルナ・フィルデスタって名前なのよ! 本当はね!!!」


 「えっ………?」


 「フィルデスタ侯爵家に庶子は要らないらしいわ。だから幼い頃に母と共に捨てられたのよ! お前の父親から!!」


 「!?」


 「復讐して何が悪い! 捨てられた者が怨みを持って何が悪い! お前ら貴族こそ盗賊以下のゴミじゃないか! 貴族こそ地獄に落ちろ!!」


 「………」



 女性の方は呆然としてるね。父親の隠し子だったとなれば、自分とは母違いの姉か妹となる。それが怨みと憎しみから裏切って犯行を行ったっていうんだから、衝撃を受けても仕方ないかな。



 「それはともかく、そうやって犯行を行ってたところを見るに、お前は<ヴェノム>か」


 「なっ!?」


 「あらら、本当に<ヴェノム>だったとはね。妙に怨みや憎しみを持ってるからミクは多分って思ったんだろうけど、そこまで綺麗に反応したら誤魔化せないわねえ。御愁傷様」


 「あの<ヴェノム>……。いったい何故そんなものに?」


 「はぁ? お前達のような者に捨てられた者が行きつく先が<ヴェノム>なのよ! <ヴェノム>の指し示す本当の毒は、お前達のような奴等が作り出す毒。つまり私達のような者が持つ怨みと憎しみ。それが<ヴェノム>の本当の毒であり、永遠不滅の毒よ!」


 「………」


 「グロッグもそうだけど、結局は怨み「グロッグですって!?」と憎しみを利用され」


 「あの人に何をした!! 事と次第によっては今すぐお前達の首を噛み千切ってやる!!!」


 「何をって、私が焼いたんだよ。生きたまま焼き殺してやったんだけど……それがどうかした?」


 「おまえぇぇぇぇぇぇっ!!!!」



 アキレス腱を切られているとはいえ、両腕と膝を使って私に襲い掛かってこようとするメイド。とはいえ裸で何も持っていない以上は私に勝てる筈もなく……面倒なので顔に蹴りを入れてやった。


 もちろん足の裏で、漫画みたいに綺麗に真っ直ぐ直撃させてやったよ。


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