0957・ダンジョン3階にて
Side:アレッサ
ダンジョンでトイレとお昼を済ませたわたし達は、9階の砂漠地帯を進んで行く。ラクダに見つかると確実に突進をしてくるでしょうけど、それを迎撃する形でしか倒せないでしょうね。しかし体高3メートルのラクダを倒すのは簡単じゃないわよ。
傍目からでも大きいのがよく分かる。そんなのがこちらを見つけると一気に走ってきた。どう考えても私達に突っ込んで来る気だろう。ここのモンスターはこればかりな気がする。とはいえ重量を活かした攻撃って、単純だけど強力なのよねえ。
わたし達はラクダの突撃に対し、昼食時に考えていた方法をとる事にした。それは突進を回避する前に足を撃つ事だ。撃ってから回避するんだけど、足を傷つけて暴れるのを止めさせようという形になる。
これで上手くいってくれると後が楽になるんだけど……。そう思いながらも撃ってから素早く離脱する。ラクダはわたし達を通り過ぎて行き、そして反転してきた。傷つけた事は傷つけた筈だが、然したるダメージは与えられなかったらしい。
再び帰ってくるラクダに対し、ミクが小銃に切り替えて発砲。見事に足に直撃してバランスを崩し倒れる。そこに素早く近寄ったイリュとカルティクが、頭に対して小銃を発砲。その二撃で倒す事が出来た。
「なんかラクダから急に強くなってない? 運が悪かったのかもしれないけど、ショットガンでどうにもならなかった足が、小銃の弾なら何とかなるのね。貫通力の違いかしら?」
「それよりも、ラクダの耐久力というか骨の強さよ。予想以上だし、ショットガンじゃ駄目? もしくはもっと引き付けるべきなのかしら。ちょっと遠間で撃ちすぎたかもしれないわね。それでもアレが突っ込んで来るのを待つのは大変だけど」
「頭も大きいから、ショットガンで攻撃した方が良いかもね。この階のラクダは刃物の方が倒しやすそうな気がするけど、見せる訳にもいかないし面倒な事ね。更に進む? それとも帰る?」
「ここまで来たけど、もういいんじゃない? 大きなモンスターが居るダンジョンだって分かったし、帰りにショットガンの弾を使い切って帰りましょう。それぐらいのモンスターを狩る余裕はあるでしょう」
「そうね。小銃の弾の追加分を買える程度のお金は稼ぎましょうか。無理してショットガンを使う意味もないし、このダンジョンでも無理に使う意味はあんまり無かったわね。浅い階層ならショットガンの方が楽だとは思うけど」
「そうね。っと、アレッサの血抜きも終わったし、さっさと収納して戻りましょう。ここに長居する意味も無いし、無駄な時間を使う意味も無いわ。中央町に帰ってゆっくりしたいしね」
「それじゃ、一気に走って戻りましょうか。上も亀だし逃げるのは苦労しないし」
わたし達は戻る事を決めて一気に階段へと走った。しかし、突如として周囲にラクダが現れ、わたし達の行く手を阻む。とはいえ素早く回避してしまえば、わたし達の進路を妨げる事なんて出来やしない。
モンスターを銃で倒すのは面倒だけど、逃げるのなら簡単なのよ。それにラクダは大きいから足下がお留守なのよね。わたし達はラクダの突進をかわしつつ、さっさと階段へと滑り込んだ。うしろでラクダ同士がぶつかる音がする。
「いきなり周囲にラクダが現れたけど、アレって間違いなくダンジョンマスターの攻撃よね? ここから生かして帰さないという意思表示かしら? なかなかやってくれると言いたいところだけど、わたし達相手には足りないわね」
「それもあるけど、私達をターゲットにした意味は何かしら? 何かしらの意味はあると思うんだけど、もしかして最後の階層だった? 自分の命の危険を感じて抹殺しようとしたなら、あんな事をしたのも分からなくはないわね」
「とはいえ、あそこまで明らかな殺意を持ってモンスターを嗾けてくるなんて思わなかったわ。それに私達が帰り出してからよ、モンスターを出してきたのは」
「確かにね。八頭も周囲に出てきたら、流石にダンジョンマスターがやった事だとしか思えないわね。それより亀の階層は一気に越えてしまいましょう。あそこは湿地帯なだけで、わたし達には難しくない地形だし」
「そうだね。さっさと走って越えてしまおう。ここから上はそこまで面倒なモンスターも居ないし、避ける事と走る事を優先すれば簡単だからさ。そこまで時間も掛からず脱出できるよ」
そこで会話を終え、わたし達は8階に飛び出した。湿地帯は足がとられるが、わたし達は【身体強化】を使って走っているので水の抵抗などものともしない。亀がわたし達の周りに出てくるが、わたし達の移動の方が速い。
亀の速度では置いてけぼりになる為、出してきたところで然したる意味は無かった。目の前を塞ぐように出てきたものの、ジャンプして跳び越えれば済むのでバカバカしいくらいでしかなく、あっさりと6階前まで辿り着く。
ここからは鹿のモンスターであり、地形は平原なので逃げやすい。わたし達は階段で少し休んだ後、一気に走り出す。鹿のモンスターは足が速いうえに【風魔法】で追風を吹かせ、更に加速してくる。
とはいえ、わたし達に追いつけるほど速い訳でもなく、目の前に出してきたものの、それに怯むわたし達じゃない。そもそも回避するだけなら難しくもなく、ささっと大回りをするか、下を向いている鹿のモンスターを跳び越えればいい。
鹿のモンスター如きでわたし達を止められる筈も無く、わたし達は4階まで上がってきた。今度は荒地と猪のモンスターだけど、こいつは鹿のように跳んだりしないので簡単だ。先ほどよりも余裕のある回避でさっさと3階へ。
しかし3階にて面倒な事が起きる。それは、猪のモンスターと同時に盗賊が襲ってきた事だ。明らかに多人数で徒党を組んでいるうえ、モンスターはそいつらを襲わない。どうやらダンンジョンマスターと盗賊は組んでいるらしい。
すぐさまミクがタワーシールドを持って前に出ると、盗賊どもの銃弾を防ぐ。わたしはミクの後ろに滑り込み、イリュとカルティクは素早く散開して走り回る。これでダンジョンマスターにも見られないでしょう。
「おら、ここでブッ殺しちまうぞ! 女どもとはいえ、オレ達のシマを荒らす奴等を許すんじゃねえ!」
「撃て撃て撃て撃て撃てーっ!! さっさとブチ殺せー!!」
「おらおら、さっさと死ねや! 今すぐ死んじまえ!!」
盗賊どもが撃ってくるけど、こいつらは<スコーピオン>かしら? それとも関係の無いダンジョンマスターの下っ端? モンスターがこいつらを攻撃しない時点で、明らかに繋がってるわよねえ。間違いなく。
わたしはミクの後ろから横に出ると小銃を撃ち、素早くミクの後ろへと戻る。そして排莢して弾を送り、薬室を閉鎖してタイミングを計る。そして途切れたら横から出て、敵を狙い撃ったら素早く下がる。
盗賊どもの数は多くないとはいえ、こんな所で足止めを喰うとは思わなかったわね。ここのダンジョンマスターはわたし達が脱出した後でファーダの報復を受けるか、もしかしたら既に向かっているのかもしれない。
既にファーダが向かっているのなら御愁傷様ね。多分だけど、接近に気付かず善人にされるんじゃないかしら。ダンジョンマスターに関してミクが言ってた事の一つに、侵入者は分かるらしいんだけど、入られて以降は目視っぽいという事がある。
ダンジョンマスターは離れてても分かるから、おそらくモニターか何かで確認してるんだろうって言ってたわ。そうなると全てを完璧に把握している訳でもなく、ましてやダンジョン内に新たに出てきた者を認識するのは無理でしょう。多分。
ファーダはミクの居る近くに出現する。これはミクが居る場所は、ミクというマーカーが居るからだと言っていた。なのでミクの側に出現する事はいつでも出来る。そのうえ透明トカゲの能力で出てきたら見えない。
そのファーダから逃れるのは不可能でしょう。




