0956・ダンジョン9階まで
Side:ミク
鹿のモンスターが下を見ながら突進してくる。とはいえ別に大した事ではなく、私は盾で角を突き立てる突進を完全に防ぐ。つまり突進を微動だにせず受け止めた。その瞬間、横から出たアレッサがショットガンで鹿のモンスターの頭に目掛けて発砲。
当然のようにその一撃で死亡した鹿のモンスターは倒れ、アレッサは早速血抜きを始める。タワーシールドで受け止めれば然したる強さでもないし、簡単に倒せるね。盾で受け止めた後、素早く前に出なきゃけないけど、その程度で大丈夫だ。
「大して強い魔物でもないね。二頭や三頭同時に出てくると違うのかもしれないけど、一頭だと盾で受け止めてショットガンを撃てば、それで終わるみたいじゃない。むしろ私達もカイトシールドかラウンドシールドでも持つべき?」
「別に無くて良いでしょう。そもそも突進に合わせてこっちも撃てば倒せる筈よ。別に無理して受け止める必要が無いわ。撃ってからすぐに退避しなきゃいけないかもしれないけど、それで済むんだから回避主体の方が良いでしょ」
「まあ、ねえ。ショットガンをちょっと遠目で撃ったとしても、それなりにはダメージを与えられる筈。それだけで相手が弱るんだから、後は他の誰かに止めを刺してもらえば良いだけ。無理に一人で倒す意味も無いし、無理する必要も無い」
「ショットシェルは余ってるし、少々無駄使いしても構わないしね。ここで使わなきゃ使い道が無いくらいだし、ちょうど良いから使い切ってしまいましょう。別に無理してショットガンを使わなきゃいけないって訳でもないみたいだしね」
「威力も然る事ながら、ピンポイントで狙えないからショットガンを使ってるんじゃないの? モンスターが大きいって事もあるんでしょうけど、それ以上に下手な事が原因な気がしてきたわね」
「でしょうね。今は使わないけど、普通に小銃で勝てる気がするもの。別に無理にショットガンに拘る必要は無いわね。それでもここで使わなければ他に使う所も無いから、頑張って使うけど」
「気楽な事は気楽よ? 割と簡単に当たるし、その辺って感じで撃てるし困らない。下手であれば下手であるほど、ショットガンの方が使い勝手は良いでしょうね。その代わりに腕は上がらないと思うけど」
「確かにショットガンを使うから腕が上がらないって事はあると思う。だからこそ余計にショットガンを使うんでしょうね。ここのモンスターは大きいし、肉としては量が多いから高く売れそうだし」
「そうなるとお金は儲かりそうね。まあ、だからこそショットガンが売れてハンターが沢山集まってるんでしょうけど」
話をしつつも次に出てきた鹿のモンスターに対し、イリュが前に出てショットガンを構える。鹿は下を向いて突進してきたものの、ある程度の距離で撃ったショットガンを受けて転ぶ。イリュはすぐに左に跳んでいた為、巻き込まれずに済んでいる。
そしてアルティクがすぐに追撃。起き上がろうとしていた鹿のモンスターの頭を撃ち抜いて倒した。二人掛かりであればそこまで苦労もしないらしいし、狙えるなら最初の一人はリボルバーでも良い気はする。
荒地でファーダが喰った盗賊団もそうだが、またもやリボルバーの弾だけが余っているんだよね。何処の盗賊もリボルバーを持っているからだけど、戦争の時に主に使うのは小銃か狙撃銃だし、あんまり減ってない。
実際、帝国に来てから補充しなきゃいけなかった程度には、小銃の弾も不足してたしね。もちろん無くなってた訳じゃないけど、580人から奪えた小銃の弾もそこまで多くはなかった。何より兵士や騎士は撃っていたので、手持ちは然程に多くなかったんだよ。
逆に言えば、あれだけしかない弾数で横撃をしようと思っていたんだろうか? だとしたら大した攻撃なんて出来ない筈だけど……。それとも後で補給を受けるつもりだった?。
既に終わっているから真相は明らかにならないけど、別働隊を二度も組織するって変だよね。でもそれをやってきたのは事実だし、本当に何の意味があったのか疑問でしかない。分からなくてモヤモヤするから余計にだろうか?。
鹿のモンスターの出る5階も進み、6階へと下りたものの、やはり鹿のモンスターが居た。面倒なので走り抜けて7階へ。今度は大きな亀のモンスターが居た。地形は波打ち際だ。
海の部分もあるものの、そこまで深くはないらしい。そんな事を確認しながら亀のモンスターに近付く。おそらくある程度の距離まで近付くと、首を伸ばして噛みついてくる筈。というより、それしか攻撃方法は無いだろう。
「亀に近付くの? それは良いけど噛みつきに注意しなさいよ。亀の攻撃なんて大凡そんなものしかないけど、代わりにその噛みつきが強力なんだからさ。食い千切られたりするんだし」
「まあ、ミクならかわせるとは思うけどね。亀の噛みつきってビックリするほど速いけど、ミクはそれより速く動きそうじゃない? だから余裕だと思うわよ。後、ミクが最初だと安心して見ていられるし」
「それはあるわね。ミクなら絶対に酷い事にならないし、それは確信を持って言えるもの。どこまで近づけるかの把握なんでしょうけど、ショットガンで倒せるのかしら?」
「甲羅は無理だけど、後ろに回って頭を撃てば良いんじゃない? 甲羅の上に乗って頭を狙えば簡単に倒せる気がするけど、どうなのかな?」
「頭を出してくれればいいけど、引っ込んだままになったら倒せなさそうよ。とはいえ後ろに回るのは良いと思うわ。そうすれば噛みつかれないだろうし、その状態なら一方的に戦えそうだしね」
「動きは鈍重だけど、本当に鈍重なままなのかは謎ね。命の危機ともなれば素早く動きそうだけど、それでも限度がありそうだし……。結局、甲羅の上の安全地帯で戦う事が一番かな」
「そこからなら簡単でしょうしね。ただ、遠くから小銃で狙うのが一番簡単だと思う。無理にショットガンを使わなくても良いとは思うわね。まだ弾が余ってるから使うけど」
三人がウダウダと話しているけども、私は少しずつ近付いていき、どの距離で噛みつきに来るのかを調べる。その結果1メートル以内に入ると噛みついてくると判明。ただし、これはあくまでも数回の実験結果なだけだ。個体の大きさによっても変わると思われる。
それでも1メートルちょっと離れれば平気だと分かっただけで十分であり、その距離でショットガンを撃てば普通に頭が潰せた。アレッサに血抜きをしてもらったら収納し、再び先へと進む。
亀のモンスターも既に戦う必要はなく、7階から8階、そして8階から9階へと下りた。今度は何だろうと思っていると、砂漠の地形にラクダのモンスターだった。あれも大きいな。
「砂漠とラクダという組み合わせは分からなくもないけど、そのラクダが大きいわねえ。アレを倒すのには骨が折れそうよ」
「ラクダって走る速度も結構速いって聞くしね。あの大きさで突進してくると考えたら侮れないわ。気をつけて戦いましょう、下は砂で走り辛いし」
「それよりも昼食とトイレが先ね。ここは砂漠だから隠せるし、都合が良いかな?」
「穴を掘って埋めれば済むし、調理は階段ですれば襲われないわね。まだお昼には少し早い気もするけど、休憩にしましょうか」
という事で、私達は休憩に入る事にした。何処かでダンジョンマスターが見ているかもしれないが今さらであり、更に言えば皆も分かっているが気にしていない。そもそもダンジョンマスターってそういう者だしね。
女性ハンター達もそれを理解して入って来ているので、この星でのダンジョンとは〝そういうもの〟だと考えられている。それが駄目ならダンジョンには入れない。




