0950・中央ガウトレア終了
Side:イリュディナ
私達は中央ガウトレア第2南西町での帝国との戦争というか小競り合いを終え、あれから10日ほど過ぎた。今は中央ガウトレア第2北西町に来ている。ここが最後の町なので、さっさと善人化を終わらせたら再び移動だ。
中央ガウトレアはこれで完了となるので、次は予定していた帝国となる。ミクは東ガウトレアを置いておくと言っていたので、先に帝国に行くのは決定事項だろう。そもそも野心家の皇帝を何とかしないとけないし。
もちろん皇帝自身をどうにかする訳にはいかないので、周囲の者を善人に変えてしまうのだが、それでも普通の人は変えられないから……果たして皇帝を止められるのかしらね? 駄目なら今までと変わり無しって事になるけど。
「それは仕方なくない? そこまでわたし達が責任を持つような事じゃないし、何より野心家の皇帝がそもそも悪いんだしね。今以上に悪くなったりしないんだから、それで良いでしょ」
「そうなるかは分からないわね。今まで悪人だから使っていたのなら、善人になったら遠ざけそうよ? それぞれの役職を他の者に回されたら、結局良くならないんじゃない? 皇帝自身がそういうヤツなんだから」
「でも皇帝自身は変えられないんだし、どうしようも無くない? 皇帝というか、トップを変えたら国が破綻する恐れも出てくるんでしょ? だから変えられない訳だし」
「悪人だろうから、善人に変えるのは問題ないんだけどねえ。善人に変えたら融通が利かなくなる恐れがあるんだよ。国なんて善だけで差配するのは無理だし、そんな事をすれば破綻の方向に向いてしまう」
「それがあるから変えられないのよね。仕方ないにしても、国の運営なんて汚い事だらけだし、そもそも政治というもの自体が汚い事だらけだもの。そこに善を入れても極端な方向に向くだけ」
「綺麗と汚いの両方が必要というか、どっちもに振れながら運営していくのが本来の国家のあり方よね。野心家の皇帝がどのように統治しているのかは知らないけど」
「野心家なのに国の統治はしっかりしている可能性もあるしね。そうなると本気で変えられないから、周りを変えるしかないってわけか。色々な事を考えて決めなきゃいけないけど、家臣が善人多めになったら身動きはとりにくくなるかしら?」
「なるでしょうね。皇帝といえど圧倒的な権力を持つ訳じゃないし、下で支えてくれる者達が居なければどうにもならないわ。だからこそ、そこに善人が増えれば汚い方向には動き難くなる。それで牽制といった形かしら」
「問題は帝国と<栄光の大帝国>だね。この両者がどう絡んでるかにもよるよ。皇帝の欲を擽ってるらしいけど、果たして皇帝とやらがそんなに頭が悪いのか? 私はそこに疑問を持ってる」
「<栄光の大帝国>なんて連中に踊らされるほど甘くない? 仮にそうだとすれば、何故そんな奴等が関わってくるのを許しているのかしら? 宰相を含めて、他の者が止めるでしょうに」
「よくある、お金を引き出すってヤツじゃないの? <栄光の大帝国>の言う事を聞いてやってるフリをしつつ、王国を攻める為の金銭を要求しているとか、もしくは支援をさせてる」
「<栄光の大帝国>って奴等も、そもそも欲で動いているような連中だものね。それに何百年とある組織らしいし、頭は悪くてもお金は溜めこんでいるのかも」
「そうなると厄介よねえ。王国では大した事は無かったけど、帝国では結構暗躍しているのかもしれないし、あんまり舐めない方が良いかしら。でも、侯爵家の姉妹を襲わせて拉致させたり、色々とやってはいるのよ。私達が居たから成功しなかっただけで」
「半分以上は成功していたものね。私達が助けたから良かったものの、実際に半ばまでは成功していたのは事実だし、侮るのは確かに良くないかな。そうしていると、何処かで失敗するかもしれないし」
「敵を過剰に評価する必要はないけど、見縊るのも良くないからね。とりあえず善人化していけば良いだけだし、分からなかった連中も勝手に変わってるでしょ。そいつが悪人であれば」
「そこが問題というか、そこが厄介なところなのよね。ミクは悪人じゃないと変えられないから、私達が居なくなった後で悪人になったヤツに暗躍される恐れがある。もちろん可能性は低いんだけど、無い訳じゃないのがねえ」
「確かにそうね。わたし達が居なくなった後に悪人になると対処不能だわ。でも、わたし達だってそこまで責任持てないでしょ。不可能よ、そんなの。むしろ将来悪人になる可能性があるから先に善人にしておく、ってぐらいしか方法が無いじゃない?」
「それをやったら最高位の神様から怒られるし、何をされるか分からないから出来ないんでしょ?」
「そうだね。何より、私達がそこまで責任を持ってやる意味も無ければ理由も無い。今まで悪人だったヤツを善人に変えるだけで十分だよ。そもそもこの惑星の連中が何とかしなきゃいけない事であって、私達が東奔西走する事じゃないからね」
「まあ、出来るだけ綺麗にする手伝いをするって事で、それ以上はアルデムの者である私達が深入りする事じゃないか。アルデムは神様の病気で、私達の出る幕なんて無いし」
「悪人が死ぬ病だものねえ……わたし達が何かする必要がこれっぽっちも無いし、正に神様の所業よ。有無を言わせず抹殺というのは」
「神様の怒りと考えれば自然な事だし、容赦の無さも神様だもの。私達が忘れていただけで、本来神様という存在は容赦の欠片も無い筈なのよね。そういう意味では、今の状況はまだマシと言えなくもないわ」
「ミクが善人化するだけで済んでるものねえ。神様の無慈悲が落ちてきている訳じゃないわ。まあ、その無慈悲な神罰が落ちない理由は、いちいち小さい事に関わっている暇が無いってだけなんだけど」
「まあ、ねえ……。この話題は止めましょう。考えれば考えるほど空しくなるだけよ」
「ここは中央ガウトレア最後の町だけど、今までの町で何かあった? 広域盗賊団のような悪人が大量に居たとか」
「森の中で商売をしている奴等は居たね。おそらく<スコーピオン>だとは思うけど、そいつらはそんなに大きくない地元の店でしかなかったよ。つまり<スコーピオン>の大元を辿れるようなヤツじゃなかった」
「そういえば<スコーピオン>って外で商売してるんだったわね。つまり盗賊と<スコーピオン>の商売が行われていたけど、売る側も小物で大した情報を持っていなかったと」
「っていうより、小さい店の側は紹介を受けただけみたい。そして盗賊だと分かっているけど、店の存続の為に商売をしていた感じ。もしかしたら店とか銃火器メーカーじゃなく、そういうのを繋ぐ連中が<スコーピオン>なのかも」
「盗賊と売り上げの乏しい店などを繋いで、盗賊に物資を供給させる組織って事? だとしたら<スコーピオン>の儲けは何処かしら? 少なくとも<ヴェノム>は危険な薬物で儲けているのは分かってる。他の二つの組織にも何かはある筈」
「多分あるんでしょうけど、今の情報じゃ分からないわよ。帝国でも暗躍してるでしょうし、そのうちに明らかになるでしょ。まだまだこれからよ」
「そうそう。それに悪徳の神とかダンジョンマスターが後ろに居る可能性もあるしね。そいつらが裏についていたら簡単じゃないよ」
「そっちもあったのを忘れてたわ。今のところ悪徳の神様には遭ってないのよね? ファーダも」
「そうだね。ファーダも会ってないよ。ダンジョンマスターは二人善人にしたけど、今はそれだけ。この惑星にダンジョンが幾つあるかも知らないし、神を舐めてるダンジョンマスターがどれだけ居るかも不明だし」
色々なものが蠢いていて、今のところは解決まで行きそうにない、か。




