0946・大橋での戦闘
Side:ミク
大橋を巡っての今日の戦いが始まった。私達は初めてだが、兵士もハンターも三日目だからか慣れたもののようだ。しゃがんだ状態で足を動かし、兵士達が前の土嚢へと移動して行く。既に敵方からは銃弾が飛んで来ており、その危険な中を兵士は進んで行く。
流石に三日目ともなれば相手も分かっているのか、ハンターが潜んでいる林に対しても銃を撃ってきているようだ。特に当たった声もしないので、他のハンターも木を盾にして身を守っているらしい。
そんな中、兵士達が一番前の土嚢に近付く事に成功。土嚢で守りつつ、銃弾が途切れた際に顔を出して敵を撃つ。そして再び土嚢に隠れるという行動を繰り返す。銃が当たり前の戦場では、これが一番正しい戦い方だろう。
帝国軍も同じように土嚢を積んでいるし、この星の戦争の仕方が元々こうなのだろう。初めて体験しているが、想像していた通りのものなので特に驚きなども無い。やはりガイアと似たようなものになるのだろう。
私達は撃って良いという合図も出ないので、唯々ジッと合図が出るまで待機をし続ける。【空間魔法】は使わず触手を使って戦場を確認しているけど、王国も帝国も特に死者は出ていないようだ。
攻撃力は銃の登場で上がったものの、それならそれで身を守る術はあるのだろう。まるで予定調和のように銃を撃ち合っている。これでは銃弾が無くなったりしないと撤退しないだろうなと思う。被害が双方に出ていない。
私達が参戦していなかった二日の間に死者が出たのかは知らないが、銃があるものの、そこまで夥しい死者が出たりはしないようだ。ガイアでも近代最初の頃は、猛威を振るったのは近代兵器ではなく病気だったというしね。まだその辺りなんだろう、この星は。
未だに合図が出ないので撃つ事もなく暢気に見ているが、この戦闘に何の意味があるのか分からなくなってきたね。木を盾にしていれば死ななくて済むし、特に戦闘をしているという感覚も無い。ジッとしているだけだ。
こんな事の為にハンターを雇ったのだろうか? そう思っていた矢先、「ピーーーッ!」という笛の音が聞こえてきた。すると、待ってましたとばかりに林から銃声が聞こえてくる。成る程、笛の音が鳴ると撃って良いわけね。
私達もすぐに狙いを定め、引き鉄を引く。「ドンッ」という狙撃銃の音と共に敵の頭を撃ち抜き、私が放った弾は一撃で敵を殺した。アレッサも近くで「ドンッ」という音と共に撃ち込み、敵を一人減らしたようだ。
私はそこまで狙撃銃を使っていなかったので、アレッサに持っていた弾の半分を渡している。アレッサは撃ち尽くしていて弾がもう無かったのだが、狙撃銃を遊ばせておくのも勿体ない。なので半分を渡してある。代わりに盾で出た時に、ついてくるように言ってあるけどね。
そこも了承して受け取っているので、後で前に出てやろうと思ってる。少し離れたところでイリュとカルティクも小銃を撃って敵を倒していく。他のハンターも未だに撃っているので、私達も撃てるだけ撃っている。また撃てなくなりそうだし。
どんどんと撃って敵を倒していると、「ピーーーッ!」 という音が再び鳴ったので撃つのを止める。それで正解だったのか、こちら側の林から銃声は消えた。次に撃てるのがいつかは分からないけど、5人は倒せたんじゃないかな?。
「私は6人かな? 気配で何となく分かるし、その程度で十分当てられるわ。遠いけど狙撃銃だから狙いやすいし、そこまでメチャクチャ離れてる訳でもないしね。それより、敵がちょっと慌ててるみたいよ? 何か動きが激しい」
アレッサがそう言うので確認すると、確かに気配などの動きが激しい。なので触手を伸ばして調べると、私達が殺した死体を動かしているらしい。おそらく邪魔なのだろう、引き摺って運んでいる。
「邪魔な死体を片付てるみたいだね。そのまま置いていても仕方ないし、他のハンターの待機場所として使わなきゃいけないっていうのがあるんじゃない? 私じゃないけど土嚢の裏の兵士を殺したのは良かったみたいだよ」
「そうね。敵の最前列から弾が飛んでこなくなってる。おそらくは土嚢の裏の死体が邪魔になってるんでしょう、その所為で前にも出られない状態なのかも。土嚢の裏の死体を動かすのも大変でしょうね」
「まあね。一番前の土嚢に近付いて、死体にロープでも括り付けないと動かせないと思う。普通に人手で運んだら、流れ弾に当たって死ぬんじゃないかな? 流石にそんな事はさせられないでしょ」
「さて、どうなんだろうね? そういう戦場が当たり前なら何か対策は立ててると思うけど、対策もせずに同じ事を繰り返してそうでもある。まあ、私達は笛の音が聞こえたら撃ち込めばいいよ。やるべき事だけやればさ」
そんな話をしつつ笛が鳴るのを待ち、鳴ったら再び敵を撃ち殺していく。それを二度行い、三度目で変化が起きた。笛の音が「ピーーッ、ピピッ!!」と変化したのだ。私達は良く分からなかったが、ハンターが前に出たので理解した。
先程の笛の音は戦闘前に聞いていた、ハンターが前に出ても良い合図みたいで、早速とばかりに最前線の土嚢へ行こうとするハンター二人。よく見ると喧嘩をしていたオッサンと若者のコンビだった。
あの二人なので大丈夫かと思ったが、頭の位置が高かったんだろう、オッサンの方は最前列の土嚢に辿り着く前に死亡。若者の方は辿り着いたものの、数回の射撃後に出たタイミングを狙われて死亡した。今は死体として転がっている。
多くのハンターが名を上げようと戦争に出るのだが、大抵はああなって終わる。そもそもあの程度のが活躍できて有名になるなら、兵士達は全員が英雄になれるだろう。そんな兵士でも普通に死んでいくのが戦場だ。甘いものではない。
私達は前にも出ずに撃っているが、あのオッサンと若者に続けと言わんばかりに出て行くハンター達。多少は最前線の土嚢で戦う事が出来たが、多くの者は撃たれて死亡していく。当然の結果だね。
エルシアやブレンダは当然あんな危険な場所には出ないし、私達はここから当てられるので出る必要が無い。なので地味ながらも着実に敵兵を殺していく。それが一番王国軍にとっても役に立つ筈だしね。
再び最前列に出た兵士が、邪魔な死体を土嚢でカバーされていない横に出していく。帝国も同じ事をしているので、戦場での死体の扱いなどそんなものでしかない。むしろ新たな土嚢と言わんばかりにしている。
戦場ではそうやってでも身を守らないと死ぬという事だろう。別に大した事でもなければ騒ぐ事でもない。自分の命を最大限に守ろうとしているに過ぎないし、こんな事は戦場ではよくある事だ。銃が有ろうが無かろうが変わらない。
再び笛の音が鳴ったので攻撃を開始するも、帝国兵が怖がってるいるのか、かなり散開してしまっている。土嚢の2列目にも居ないし、帝国側のハンターも随分と減ってしまった。おかげで敵をある程度殺すと、私達は笛も鳴っていないのに射撃を止める。
「敵の数が減ったっていうか、奥から出てこなくなったわね。私達に殺されすぎて出さなくなったんだろうけど……どうする? 前に出る?」
「どうだろうね。そろそろ出ても良いとは思うんだけど、帝国側を結構殺したからさ。もう前に出ても良いって笛は鳴らないかもしれないね」
「王国側も帝国兵が相当死んでるのは把握してるだろうし、今日はこのまま押し切って終了って感じはするわね。目立たなくていいなら、それに越した事は無いんじゃない?」
「まあ、そうなんだけど……今度鳴ったら行ってもいいとは思ってたんだよね。鳴ったら」
ま、アレッサの言う通り、目立たなくていいならそれに越した事はないか。




