0942・本隊に戻る
Side:アレッサ
わたし達が追いかけた敵兵が、まさか帝国獅子隊とかいうエリート部隊だとは思わなかった。それというのも、見た目には他の兵士というか騎士と変わらないからだ。そんな奴等を見た目だけでエリート部隊だと見破れと言われても困る。
そもそもだけど、わたし達はエルシアとブレンダに聞くまで、帝国に秘匿されたエリート部隊が在る事すら知らなかったのよ? どう考えても無理に決まってる。ましてや王国軍の者が同じ状態で、帝国獅子隊の者だと気付く事が出来た? そう言えば大丈夫でしょ。
「………うん。まあ、それで大丈夫だと思う。そもそもアタシ達だって知らないし、帝国でも一部の者しか隊員の顔を知らないっていうんだから、アタシ達にはどう考えたって無理さ」
「私も証言させてもらいますが、流石にどう考えても無理でしょう。敵を捕縛するという事そのものが難しいですからね。皆さんは一度目に上手くされたみたいですけど、アレは相手の指揮官を捕縛する必要性があったからです。ですけど、今回は……」
「そもそも帝国獅子隊だなんて知らなかったんだしね。普通に敵兵だとしか思ってないんだから、無理に決まってる。それにアタシ達も敵を見たけど、当然ながら帝国獅子隊とそれ以外を区別するなんて不可能だよ。同じような装備をしてるんだし」
「違うのは銃に付いている刻印とか、僅かに長い銃身とかですよ? それを見て理解しろなんて無理に決まってます。銃弾が飛び交う戦場でどうやって確認しろと? そう言えば誰もが黙るしかないでしょう。そんな事は不可能です」
「仮に百歩譲って確認したとして、どうやって捕縛するんだって話さ。今回だって帝国獅子隊の奴等は発覚を恐れて逃亡してる。言葉は悪いけど、全力で逃げ出す奴等を追っかけて捕縛って、アンタ達じゃないと無理だよ」
「ですね。そもそも追いかけて全て殺すという事自体が、とんでもない難易度です。むしろよく出来ましたね? それだけでも凄いのがよく分かりますよ。普通は30人も逃げたら取り逃がして当然ですからね」
わたし達は雑談をしつつも手を動かし、兵士か騎士か分からない奴等から装備を剥ぎ取っていく。エルシアとブレンダも手伝ってくれているが、やはり橋の近くで始末した奴等と逃げた奴等では装備が違う。
橋の近くで倒した250人ほどは刻印がされていない銃しか持っていない。という事は、二回目の別働隊は全部で280人ほど居たんだね。今回も多かった。もう狙撃銃の弾が無いし、途中から小銃で戦ってたくらいだし。
そのうえ追いかける際に使ってたのはリボルバーだもん、帰ったらすぐに弾を補充しなきゃいけないね。辺境伯のお膝元で補充させてくれるかな? 駄目なら帝国に入って補充か、東ガウトレアに戻って補充だね。王都は面倒だから行きたくないし。
とりあえず敵が持っていた小銃から弾を抜いたりしつつ、全員で弾を分けておく。銃はそれなりに優秀な武器ではあるけど、弾が無ければ唯の鉄の塊みたいな物だからねえ。しっかりと弾は確保しておかないと。
「アタシ達は小銃を貰ったぐらいだから、そこまで弾は多くなくてもいいよ?」
「駄目よ。こういうのは不満が少しでも溜まらないように、公平に分けるのが一番良いの。だから受け取っておきなさい。これは公平に分ける代わりに、後で文句を言うなという事よ」
「成る程、それなら受け取らせていただきましょう。私達も小銃を使うとなると弾代は馬鹿になりませんので、ここで貰えるのは助かります。特に連発できる小銃というのはありがたいですからね」
「王国軍も持ってるけど、戦場で亡くなった兵のを手に入れるのはねえ……。あんまり良い事とは言えないから何とも言えないわ。一応戦場を漁って手に入れている連中が居るのは知ってるけどね」
「まあ、あれもあんまり褒められたものじゃないんだよね。帝国の小銃なら敵から奪った物だからいいけど、味方の物は死んだ仲間の物だからさ。それを奪ったみたいになるから、どうしても良く思われないんだよ」
「当たり前と言えば、当たり前ですけどね。それよりも、あんな時間から攻められましたし、この後はどうしますか? お昼すら食べていないのですが、今から帰れば間に合うのなら仕方ありませんし……」
「戦闘はそこまで時間が掛かった訳じゃないけど、剥ぎ取りには結構な時間が掛かってるのよねえ。今からバイクで急いでギリギリって感じかな? どうする?」
「私はどっちでもいいよ。今から帰ってギリギリか、それともここで一泊して明日戻るか。一応ギリギリであっても、戻ると夜はゆっくり寝られると思う。ここみたいに皆で夜番をしなきゃいけない訳じゃないし」
「なら戻りましょう。夜番を三日もするなんて面倒よ。疲れたし、ゆっくり眠りたいわ。どのみち何かがあれば起きるけど、夜番で起きておくのは面倒臭いのよね。敵襲で起こされるなら仕方ないけど、見張りで起きておかなきゃいけないのはイヤ」
「なら、バイクを出してさっさと戻ろう。帝国獅子隊まで出してきたんだから、これ以上は流石に別働隊を送ってきたりはしないでしょ」
わたし達はバイクをアイテムバッグから出して跨る。ミクの後ろにエルシア、カルティクの後ろにブレンダが乗ると一気に走り出す。急がないと間に合わないというのもあるけど、それ以上に早く戻って食事がしたい。
正直にいって昼食を食べ損なってるのが今になって響いてる。戦闘が終わったからか無性にお腹が空いてきたのよね。いえ、気になるようになったと言うべきかしら。それがあるからこそ、早く帰って食事にしたい。
わたし達は行きよりも速度を出して戻るものの、なるべく転倒しないように道を選んで走っている。土の地面だから凹んだ部分なんかがあると跳ねてしまうし、そこから事故になったりするかもしれない。
急ぐとはいえ怪我がしたい訳ではないので、なるべく安全運転を心がけて急いでいる。道に関してはミクの後ろについていれば安全なので、自然とミクが一番前を走る形になった。同じ場所を走れば問題ないって楽よね。
そんなこんなで本隊近くまで戻ってきたわたし達は、バイクを降りて、そこから徒歩で本隊の場所まで戻る。バイクをあまり見せたくないのは、速度の出る乗り物を持ってるなら偵察してこいとか面倒を言われない為ね。
歩哨に立っている兵士に挨拶し、わたし達は本隊に戻って依頼してきた軍人を探す。兵士などに聞いてウロウロとしていると見つけたので、報告をしようと思ったら「ついてこい」と言われたのでついていく。
何処に行くのかと思ったらテントに連れてこられ、再び一番上の指揮官に会わされた。何か理由でもあるのかしらね?。
「北西の橋を見に行かせたハンターが戻りましたので御報告に参りました」
「うむ。君達、御苦労だった。敵が来たかどうかは分からないが、まずは報告してもらおう。それで、敵は来たかね?」
「新たに組織された別働隊が今日の昼近くにやってきた。アタシ達は隠れて待ち、敵が橋を半分以上越えた辺りで戦闘を開始。ここに居るミクが大きな盾を構えて前に出て囮になり、他の皆が隠れた位置から攻撃。それで敵を倒していった」
「皆さんの銃の腕前は素晴らしく、どんどんと敵は倒れていきました。まあ、言い訳をさせてもらえるならば、私達の居た場所は一番遠かったので命中率は悪かったですね」
「その後、30人ほどの敵が逃亡。彼女達はそれを追っていき殲滅。そこまでは良かったんだけど……」
「どうしたのかね? 急に歯切れが悪くなったが」
「アタシも確認したんだけど、逃げた奴等の銃には「獅子」という文字が刻印されていた。それを見たアタシ達は、帝国獅子隊の者だったんじゃないかと思っている」
「何だと! 帝国獅子隊!?」
突然、椅子から立ち上がったけど、それほどに驚く事だったみたいね。




