0938・夜番
Side:アレッサ
エルシアとブレンダは初めて食べたらしいけど、うどんは好評だった。パスタはあるのにうどんは無かったらしい。この太さまでと決まっていると、それ以上に太くしたりしないんだろうね。
今は既に夜なんだけど、ミクが怪物だと話せないので夜番を決める必要が出てきた。ただし一番疲れるところをミクにやってもらう事で決定。つまり深夜に起きてから朝までずっとだ。流石にわたし達がそこは厳しい。
いつもなら夜番なんてミクに全て丸投げするのに、二人が居るだけで面倒な事になったと思う。まあ、それぐらいなら仕方ないかと思ってやるけどね。ちなみにエルシアとブレンダはイリュとカルティクと組む事になった。
そもそも二人は気配察知系が使えないから、起きていても監視が出来ないのよ。だから一緒に誰かが起きてないといけないし、そうなるとイリュとカルティクが最適となった。わたしは早々に吸血鬼系だとバラいているから一人で問題ないし。
「吸血鬼系って元々の体力が多いですし、優秀な能力を持つと聞きますからね。生憎と彼らの興味の大半は血を摂取する事ですが……」
「まあ、無ければ乾涸びて滅んじまうんだから仕方ないだろ。吸血鬼やダンピールの連中だって死活問題なんだから、どうにもならないさ。かつて古い時代には人間を襲う吸血鬼やダンピールも居たそうだけどねえ」
「いつしか襲わなくなった?」
「らしいよ。それがいつからかは知らないけど、元々から吸血鬼やダンピールが襲うのは悪人だけだと言われてたとは聞くね。その吸血鬼やダンピールも悪人すら襲わなくなったみたいだ。正直に言って悪人なら襲ってくれて良いんだけど、何で止めたのやら」
「何らかの事情があったのは事実なのでしょうが、もはや吸血鬼やダンピールにも伝わっていないそうです。今の彼らは解体の仕事をしている方が殆どですからね。それもありがたい事ですけど」
「もしくは自分で獲物を獲ってくるかだね。吸血鬼やダンピールが獲ってきた獲物は本当に綺麗だから、一部の高位貴族なんかが買って食べるらしいよ。アタシの実家じゃたまに出てくるぐらいだったね」
「私の実家でも変わりませんよ。下位貴族である子爵家ではそんなものです。お金があっても高位貴族より上の生活なんて出来ませんしね。そんな事をすれば叩かれるのは確実ですし、どんな噂を流されるか……」
「貴族って本当に変わらない生き方しか出来ないのねえ。誰を蹴落とすか、誰を虐げるかばかり考えてるんでしょ? 呆れてものも言いたくなくなるわ。もうちょっとマシな生き方は出来ないのかしら」
「それが出来たら貴族じゃないよ。出来ないから貴族なのさ。アタシも実家を悪く言いたくはないけど、離れてみないとおかしさには気付けないんだよ。残念ながら、貴族家にある間は無理だね。あんな争いが常識なんだよ」
「当たり前すぎて疑問にも思わない。そう表現するのが一番分かりやすいと思います。そんな生活がまともな筈もなく、神経をすり減らすような生き方ですよ。家を出て本当に良かったと思える事の一つですね」
「本当にね」
そんな話をしてお腹がこなれた頃、わたしを残して全員が寝た。ミクは起きているけれど、夜番の最初はわたしなのよね。これはわたしだけの時間がそこまで長くないからと、吸血鬼系の体力を考えての事だ。
ただし夜番は暇でしょうがないのよね。これが一番辛い。起きている事よりも暇な事が本当にキツくて早々に飽きる。もちろん気配や魔力は監視しているから問題無いし、向こう岸まで十分に監視範囲に入っている。
流石にミクのようにおかしな範囲ではないものの、前方というか方向を絞れば距離は伸ばせる。今のわたしで大凡300メートルくらいかな? そこまでなら難なく把握できる。
わたし達は外れた所で監視してるし、焚き火なんかもしていない。モンスターが近くに来る事もないし、そもそもミクが監視してくれている。なので二重チェックが働いている状態なので漏れは無い。
適当にダラダラしつつ、時間までわたしはゆっくり待つ事にした。時間を計るのはエルシアが持っていた魔道具を借りている。何でも1時間を計れる道具らしい。そんな物も持っていないのかとビックリされたけど、わたし達は適当に濁しておいた。
そもそも時計を持ってるけど、この星の一日が24時間と決まってる訳じゃないしね。それにこの星に持ち運べる時計があるかどうかも不明だし、怪しまれるだけなので濁したんだけど、何で一時間なんていう物が魔道具としてあるのやら。
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Side:ミク
最後の夜番である私の番が回ってきた。そもそも寝てもいないし、今までの会話も全部聞いていた。まあ、聞いていただけで覚えておく価値も無いものばかりだったけどね。それはともかく今日は来ない可能性が高そうだ。
私の番は深夜からだけど、もし橋を通るのであれば深夜の時間になる前に通ってる筈だからね。流石に行軍として深夜に移動するのはあり得ない。そんな事をしていたら兵士の体力が幾らあっても足りない事になってしまう。
なので今日は無いだろうけど、モンスターが近くに来ないかは監視しておく必要がある。幾ら天然のモンスターは数が多くないとはいえ、決して居ない訳じゃないしね。私なら楽に勝てるけど、見張っていないと不意を打たれる可能性は否定出来ない。
まあ、それでも私の反応と行動の方が速いと思うけど、いちいち敵に隙を見せる必要も無いしね。このまま朝まで監視と警戒を続けよう。
…
……
………
朝になったものの、モンスターすら近付いてくる事は無かった。朝日が出てきたが、皆を無理に皆を起こす理由も無いので、寝たいだけ寝かせておこう。私は本体が暇潰しをしているので、特に問題なく過ごせているしね。
朝食は皆がいつ起きてくるか分からないので、起きてからでいいだろう。そう思い適当に過ごしている。皆が起きるまでには時間もあるし、今のところ私が動く用事も無い。実に平和な事だ。
…
……
………
そして完全に日が昇ってから一時間ほど経った頃。ようやく一人目であるアレッサが起きてきた。一番最初に夜番が終わったのに随分と寝てたね。まあ、今日も一日ここで待機だから良いんだけどさ。
「おはよう……」
「はい、おはよう。皆がまだ寝てるから朝食はまだ後だよ。今起きたばかりだし、ゆっくりしてるといい」
「うん……」
そこまで夜番が響くとは思えないけど、いつもとリズムが違うからかな? アレッサの意識が覚醒してないっぽい。皆もまだ眠ってるし、ゆっくりしていたら起きるでしょ。無理に起こす必要もないから、寝たいだけ寝かせておこう。
アレッサも未だウトウトしている感じだし、適当に温かい飲み物でも淹れるかな? そう思って鍋で湯を沸かし、紅茶を淹れた。茶葉に関しては麦茶や煎茶など色々と持ってるけど、ティーパックのヤツは出せないんだよねえ。
ガイアの日本で買ったけど、そもそもこの星じゃティーパックなんて無いんだよ。だから瓶に入ったヤツから直接茶葉をスプーンで掬って入れている。アレッサはコップに入れたけど、冷めるまで待ってるみたい。
私は「ふーふー」しながら飲んでるけれど、そもそも火傷もしないのでポーズだけだったりする。皆にはいちいち言わないけど、おそらくで理解しているだろう。
そうやってアレッサと一緒に紅茶を飲んでいると、イリュやカルティクが起きてきた。二人とも夜番が大変だったと思うけど、大丈夫?。




