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0090・ドンナ




 ミクが威圧を止めた後、すぐに2階からラーディオンが下りてきて怒られた。しかしガルツォやオドーなどが説明した事によりラーディオンは納得、ミクへの説教は終了。


 一番効果があったのがオルディアーラの説明であった事は、言うまでもない事であろう。



 「しっかし、こいつは前もそうだったが碌な事をしねえな。ガルツォの弟だからと周りからの目こぼしはあったみてえだが、それに胡坐掻きやがって。……ガルツォ! 悪いがこいつは犯罪者だ。兵士に突き出すぞ」


 「ええ。流石のオレも庇えませんし、こいつには愛想も尽きました。10も年下だからって優しくしたのが間違いだったんです。実家でも親父やお袋に甘やかされてましたし」


 「とはいえ、お前の所為でも無いだろ。確かに甘やかしたお前の両親には一定の責任もあろうが、お前までが責任を感じる必要はねえ。所詮その程度だと自覚しなかったこいつが悪い。そもそもこの程度の腕の奴なんぞ、掃いて捨てる程いるのがゴールダームだ」


 「それ以前に【身体強化】も出来ないみたいだから、ゴールダームだと並み以下にしかならないんじゃないかい?」


 「うん? ……初めて見る顔だな。新人か?」


 「まあ、そうだねえ。今日登録したばかりだから新人ではあるよ。今までに色々な経験はしてきてるけど、探索者としては新人で間違いない」


 「……元傭兵か? 何かそんな感じがするが、揉め事は起こすなよ。傭兵ギルドともな。後は好きにすりゃいい」


 「それは助かるけど、あたしは傭兵じゃないよ。それに近い者ではあったけどさ」


 「??? ……まあいい。それよりも怒るのは分かるが、そろそろ無茶苦茶な【身体強化】を威圧に使うのは止めろ。お前の場合は余波だけでとんでもないんだ。むしろ殴ってしまえ、その方が被害は少ない」


 「分かった。次からは腹を突き上げて済ませる。内臓にダメージがいかなければ、苦しめても構わないだろうしね」


 「分かってるじゃねえか。だったら最初からそうしろってんだ」



 そう言ってギルドマスターのラーディオンはガッツォを起こし、数人の探索者と共に兵士の詰め所へと連れて行った。ちなみに連行していく中にはオドーも含まれている。


 手続きを終えたシャルと共に宿へと戻り、ミクは大銅貨1枚を払って大麦粥を注文。シャルは適当に注文したらしく、大銅貨4枚を支払っていた。



 「それにしても第2エリアっていうのは儲からないねえ。あそこまでシケてたなら、持って帰って来るんじゃなかったよ。ブラッドスライムは買ったけど、血抜きと言うよりはこの子の食事だったね」



 そう言ってシャルが取り出したのは、腰に下げていた袋に入っていた小さなブラッドスライムだった。それを見たミクは自らの左腕を引き千切り、血肉を食わせる。再びの実験を行うようだ。


 不思議と喜んで喰らうブラッドスライムと、唖然としているシャルが対照的であった。



 「いやいやいやいや、何をやってるのさ、ミク! あんた……何て事を!」


 「そもそも私の一部でしかないから引き千切っても問題ない。私が人間種じゃない事を忘れた?」


 「いや、そうだけど……それでも………はぁ、心臓に悪いから止めてくれると助かる。いきなり目の前で左腕を引き千切るとか、意味が分からないし頭がおかしくなりそうだよ」


 「そうかな? シャルしか見てないだろうから問題ないと思ったんだけど、まあいいや。それよりレティー、この子の自我はどんな感じ? 目覚めてない?」


 『そうですね。自我は目覚めていると思うのですが……。私が語りかける事で【念送】の使い方も分かるかと思います。何度か送っていますし、そろそろ使い方も分かったのではありませんか?』


 『……聞こえてる』


 「え、それだけ? ……シャルが買ってきたブラッドスライムは何か変わってるね? これはあれかな、<鮮烈の色>と同じく、やる気の無い感じのブラッドスライムかな?」


 「どうやらそうみたいだけど、かくもあっさりと自我を持ったね? 色々な意味でミクが規格外だと分かるけど、尋常じゃないよ。場合によったら、スライムがとんでもない魔物に変わるかもしれないじゃないか」


 「別にレティーと、シャルの持ってるブラッドスライムだけなんだから良くない? 仮に分裂したとしても、同じように自我が芽生えるかといったら、そんな事は無い訳だしさ。おそらく分裂した側は自我が無いと思う」


 『それ以前に、分裂なんて面倒な事しない……』


 『そうですね。栄養も減りますし、体の体積も減ります。本能だけならするのかもしれませんが、自我を持った以上は分裂なんていちいちしません、無駄ですしね』


 「だってさ」


 「………スライムは増える為に分裂するもんだと思ってたよ。まさか面倒臭い事だったとはねえ。それはともかく、あたしもブラッドスライムに名前を付けないといけないか。そうしておいた方が認識しやすいし」



 そんな話をしていると、食事が運ばれてきたので食べ始める2人。すると、シャルのブラッドスライムが食事を食べ始めた。



 「あ、おい。それはあたしの食事だよ。お前が食べるのは血だろうに、何で料理を食べてるんだい?」


 『美味しそうだったから。そして美味しい……』


 『あれ? 味覚を獲得したんですか? それは羨ましい。私は視覚と聴覚だけですよ。触覚は元々ありますけど、新たに味覚を手に入れるとは……』


 「っていうか、そっちのレティーは味覚を持ってないのに、何でウチのが手に入れたんだろうね?」


 「神どもも言ってたけど、スライムは<可能性の宝庫>。それぞれのスライムで進化や発展の方向性は変わる。レティーは見て聞きたかった、その子は味わってみたかった。獲得した理由は、単にそれだけかもしれない」


 「<可能性の宝庫>ねえ……。よし、お前の名前はドンナだ。昔のあたしの知り合いに、その名前のヤツが居たのさ。とにかく食う事が好きな奴で、食うか寝てるかのイメージしかないヤツだったんだよ」


 「へー、そんな人間種がねぇ。で、そいつはどうなったの?」


 「知らない。確かカムラの地方貴族に嫁入りしてった筈だけど、もう300年ぐらい前の話だから、とっくに死んでるだろう。ドンナは普通の狸獣人だったし、寿命は80年ぐらいしかない」


 「それはとっくに寿命で死んでるでしょ。長生きできる種族じゃないし。故人の名前なら使っても問題ないんじゃない? ヴェスに辿り着く事も無いだろうしね」


 「あ、そうか。そういうトコを考えなきゃいけないんだったね。ま、ドンナの名前からあたしを辿るのは殆ど不可能だ。まだあたしが貴族になる前の繋がりだし、あの頃の男爵家の娘だからさ」


 『美味しかった。寝る……』


 「本当にドンナそっくりなヤツだねえ……。呆れてくるも、懐かしい感じもするしで、どう言ったらいいのやら」


 「私の肉を食った以上は、スライムとは比較にならない程の頑丈さは手に入れてる。だから魔物の攻撃を喰らった程度じゃビクともしない。更にはどうも消化液が強化されてるっぽいんだよね。だから気をつけて」


 「スライムの消化液って……おっそろしいものが強化されてるじゃないか。何でも溶かすんじゃないかって言われてるのがスライムの消化液なのに、それが強化かい……」


 「最近は脳を喰うのも早くなってきたから、溶かし続けてると鍛えられてくるのかな? ドンナには味覚もあるんだし、せっかくだから沢山食べさせてみたら? 持って帰らない魔物とか盗賊の死体とか」


 「流石に盗賊の死体はどうなんだい? 確かにブラッドスライムだけどさあ……」


 「燃やす前に死体から血を吸わせてるって言えば、周りに人が居ても納得すると思うけど? 今日だってレティーは乾涸びるまで血を吸い取ってたし、その後は簡単に死体は燃えるよ。殆ど血が残ってないから」


 「まあ、燃え難い原因の血が無くなれば、よく燃えるだろうさ」



 食堂でこんな話をしていて大丈夫だろうか? そんな心配をするレティーであった。


 尚、ドンナは既に眠っていて、聞いていない。


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