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0932・帝国別働隊との戦闘 その2




 Side:カルティク



 私達はミクから戦闘の指示を【念話】で受けている。最初の方はミクと共に北西で戦っていたけど、ミクがこちら側に敵を引き寄せると言いだした時には理解できなかった。どうやってそんな事を? と思ったし、そんなことは無理だろうとも思った。



 『そこまで難しい事じゃないよ。どんどんと味方が死んだら、破れかぶれで突っ込んで来るヤツは出る。そいつは無視して遠い敵だけ狙うんだよ。そうすれば相手に近付いた方が死ななくて済むと思い込むわけ』


 『そんな単純に行く?』


 『普段ならあり得ないよ? 敵に近付くんだから、むしろ危険に決まってる。でも自分の命が懸かっている事と、真っ暗な事が影響して正常な判断は出来ない。それに前に出たヤツがずっと生き残ってたら、それを信じるのが人間種ってもんだよ』


 『まあ、目の前で生き残れるのが証明されてるんだものね。言葉より明確な答えでしょうよ。作られた嘘の答えだけどさ。ワザと生かされているだけだし』


 『たとえそうだったとしても、目の前で死んでいないヤツが居たら群がるよ。人間種は誰だって死にたくないんだしね。そして敵が全てこちらに来たら、私が合図を出すからイリュとカルティクは橋の向こうに能力で移動してほしい』


 『向こう側から撃てって事ね。了解』


 『わざわざ向こうに行く必要があるの? こっちから撃ってれば良くない?』


 『向こうとこっちで挟み撃ちにする為だよ。そしてそれは敵が全てこっちに渡り終えた後だ。私達も追いかけるけど先に向こう側に居てくれる方が助かるし、全ての敵の死体は銃で撃たれている必要がある』


 『………もしかして死体を全て捨てていくの?』


 『カルティク、正解。死体を見分した敵は別働隊が全滅したと理解する筈。後続が居た場合は早く理解出来るだろうし、遅くとも商人か何かが発見する。そうすれば帝国は別働隊が来れなかった理由を理解する筈だよ』


 『帝国に負けた理由を与える? ……わたし達が目立つ可能性はあるけど、それはいいの?』


 『帝国が負けた理由に納得すれば特に問題は無いかな? 重要なのは私達の能力がバレない事だしね。別働隊が失敗した所為で負けた。野心家の皇帝は相手と自国の者達、どっちに対して怒りを向けるのかな?』


 『ああ、そういう事ね。っと、こっち側にどんどんと集まってきたわよ。そろそろ私達も移動を開始した方が良いんじゃないの?』


 『まだ、ちょっと早いかな? 対岸の奥に居るリーダーっぽいヤツがまだ動いてない。今の時点で向こうに行くとバレる』



 ミクがそう言うので調べてみると、確かに対岸の奥の方に固まっている奴等が居るわね。そいつを引きずり出すのは殺す為かしら? それとも活かして捕縛する為? ……まあ、どっちでもいいか。ミクには考えがあるみたいだし。



 「くそっ! 仕方がない! 走るぞ、急げ!!」



 私が闇影で監視していると、向こうのリーダーも決死の覚悟でこちらに向かい始めた。命の危険を感じると、ここまで愚かな事も平然と始めるみたい。ミクの予想した通りに推移してるじゃないの。完全に遊ばれているわね。


 そのリーダー格がこちらに来たので、私とイリュはすぐに対岸に移動した。イリュは空間を転移して、私は闇と影の空間を直接移動して一瞬で到着。それぞれ身を隠しながら狙いやすい位置へと移動し、ミクから合図があるまで待機。


 すると、向こう岸でミクがタワーシールドを片手にゆっくりと出て行く。わざわざ自分を晒すのは引き付ける為かしら? そう思うものの、敵が気付いていないので撃たれないという滑稽な状況になっていた。


 気付かない敵に痺れを切らしたのか、ミクは右手に持ったリボルバーを発砲し敵を射殺。ようやく帝国側はミクの存在を理解したらしく、リーダー格の男が声を上げた後で光の玉を出した。おそらく【生活魔法】の【灯り】だろうけど、この星の魔法を知らないのよねえ。


 そんな事を考えていたら始まった、ミクと帝国兵の撃ち合い。しかしミクには全く効いていない一方で、帝国兵はどんどんと死んでいく。私達も途中から撃ち込んでいき、次々と頭を撃たれた死体が量産されていった。


 その状況になってようやく嵌められた事に気付いた相手のリーダーは、大きな声で「逃げろ」と言い出した。しかしそれは遅すぎる指示でしかない。私とイリュは逃げてくる奴等の頭に次々と撃ち込んでいき殺していく。


 とはいえ1発ごとに再装填せねばならないので相手が逃げる方が速い。その為、私達はリボルバーに切り替えて撃ち始めた。ここまで混乱していたら、まともにこちらと戦おうという意思のある者など居ない。唯々逃げる事に全力な者ばかりだ。


 だからこそ私達はリボルバーで十分撃ち殺せている。こちらの方が装填数が多く使い勝手がいいのと、今は威力や安定性よりも多くの敵を倒す事が必要なので、小銃ではなくリボルバーを使っている。適材適所で使っているものの、アサルトライフルとやらならもっと簡単なんだけどね。


 そういった愚痴が出てくるものの、素早くリボルバーで仕留めていきながら追いかける。既に現状は掃討戦であり、敵は逃亡するだけの案山子でしかない。私とイリュはそれを追いかけつつ、次々と射殺していく。


 後ろから聞こえてくる音もあるので、どうやらミクとアレッサも追いかけてきたらしい。という事はリーダー格はノノが確保したのでしょうね。そいつさえ居れば後は必要ないので、他は皆殺しにすれば済む。



 「いやだー!! 死にたくな「バン!」ッ!?」


 「くそぉっ! 何でこんなところで「バン!」ッ!?!」


 「何がどうなってんだよ! チクショ「バン!」ウ……」


 「オレだけ! オレだけ「バン!」は!」


 「…………「バン!」ッ!?!!?」


 「王国に潜り込んでるヤツが居るから、簡単じゃな「バン!」かっ!?!?!」


 「なんでこんな事になってんだ! オレは死にたく「バン!」な!!」



 次々と逃げる奴等を射殺しつつ、私達は敵を追いかけ続ける。どのみち走り回るにしても限度というものがあるし、いずれは足も止まる。そうすれば後は私達に殺されるしかない。時間は掛かるだろうけど、最後には壊滅で終わるのよね。


 私達だって流石に眠らないとマズいけど、それでも敵を全滅させれば安心して休む事が出来る。それを早くする為にも、出来るだ早く敵を殺さなきゃいけない。あんまり疲れを残したくないのよ、次の日が大変だから。


 最後の一人を殺した後でミクに【念話】で連絡を入れると、一旦橋を挟んだ王国側にまで帰ってくるようにと指示があった。私は能力を使ってある程度までは一気に戻り、そこからは走って戻る。


 既にイリュも帰って来ており、どうやら私が最後だったようだ。



 「カルティクもお疲れ様。バカどもは転がしておいて強制的に眠らせてる。敵のリーダーもそうだし小隊長の男もそう、それに数人生き残っていた小隊の若者も眠らせた。ただし運ぶのが難しいんだよね。仕方なく担架を作る事にしたよ」


 「担架って、あの棒が2本と布で作れる奴ね。明日はそれを持って走るのかぁ……」


 「早く戻らないと面倒な事になるかもしれないし、私達が捕まえても意味が無くなるかもしれないしね。それにしても銃で敵を倒すって面倒臭い。長巻なら撫で斬りに出来るのにさ」



 あんまり撫で斬りって言うのもどうかと思うけど、確かに近接だったり魔法の方が手っ取り早いわね。無駄に時間が掛かる感じかしら。とはいえ、それがこの星のスタンダードなんだから仕方がないんだけど。


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