0929・北西の橋に到着
Side:カルティク
いちいち面倒な隊長の率いる小隊についていく事になったけど、今は夜になったので休む事になった。アルデムであれば魔物の危険があるので野営などは滅多にしない。だいたい一日で行ける範囲に村や町があるので、必ずそこで寝泊りする。
この星は銃があるからか、天然の魔物というかモンスターはあまり多くない。そういう意味では野営をしていても問題無いのだろう。私達は小隊が休んでいる場所から少し離れ、そこで休む事にした。流石にあの小隊を信用する訳にはいかない。
男10人だからね。何を考えているか分からないし、襲われても不思議じゃない。そもそもアルデムの兵士や騎士でさえ危険なのに、この荒れた星の兵士なんて何をされても不思議じゃないもの。警戒するのは当たり前の事よ。
そもそもミクが居るから私達が警戒しなくても問題は無いんだけど、心構えだけは正しく持っておかないと危ない。幾らミクが居るからといって、私達が緩んでいて良い訳じゃないわ。ちゃんと危険に対処しないとね。
「ま、私が起きておくから皆は寝てていいよ。あの小隊からは離れてるからね、誰が起きてるかなんて向こうには分からないでしょ。なら私がずっと起きていても問題ないよ。善人にしても良いんだけど、ちょっと引っ掛かるから無しね」
「引っ掛かる?」
「何というか、悪意はあるんだけど………それが私達以外にも向かってるんだよね。あの小隊の兵士達にも悪意が向いてる。これって明らかにおかしいじゃない? 私達に対してなら分からなくも無いけど、何故兵士達にも向くのかを考えたら……」
「アッーーーー」
「「ブッ!」」
「いや、それじゃないと思うけど……そうなのかな? お尻〝も〟狙ってる?」
「絶対に違うわよ。もう、止めなさいよね、アレッサ。こんなところで笑わせないでちょうだい。兵士達にまで悪意が向いているって事は、おそらくだけど裏切りでしょ? ミクもそう思ったんでしょうし、私もその可能性が高いと思うわ」
「となると、北西の小さな橋から帝国の別働隊を通そうとしてそうね。仮に小隊の者達を殺したとしても9人よ? そんな程度の被害を与えたところで、王国に然したる痛痒も与えられないわ」
「王国側に勝つには別働隊を知られないように通すのが一番良いでしょうね。で、前から来る帝国軍に対して本隊が意識を集中している間に、横っ腹に攻撃を加える。そうなれば大混乱するでしょうから、そこを一気に殲滅」
「それで橋を確保して更に進軍って形か、それとも何処かに罠を仕掛けるかね。その後に派遣されてくるであろう王軍に勝つ為には、何処かに罠を仕掛けて待ち伏せするのが一番よ。正面からぶつかったところで敵国内なんだから不利に決まってるしね」
「ま、あくまでも予想だからどうなるか分からないけど、出来るなら小隊長は生け捕りにしたいわね。どうせ自決用の毒なんて持ってないでしょうし、捕まえて連れて帰って吐かせましょうよ。わたし達の手柄になるわ」
「そうね。手柄があって損は無いし、そういうヤツが入り込んでいるとなれば警戒するでしょう。身内の中に帝国軍のヤツが居るかもしれないんだし。ただし疑心暗鬼にさせる為にワザと一人だけ入れるっていう可能性もあるけど」
「とりあえず考えてないで、寝てくれない? 次の日の体調が悪くても困るからさ。何なら快眠の香りを使おうか?」
「それは勘弁して。危険を無視してグースカ寝るのも困るから。それじゃ、おやすみ」
「「おやすみ」」
話していても仕方ないし、確かにミクの言う通りにさっさと寝るべきね。エアーマットも出せない状況だけど、それでもダンジョン内の階段で寝るよりマシ。ゆっくりと眠らせてもらおうかな。
…
……
………
朝になってミクに起こされたというか、鍋の匂いで起こされたわ。今日の朝食はドラゴンの干し肉と野菜を使った味噌スープと、一夜干しの魚を焼いたものと、既にフィルムを剥がしてあるおにぎりね。
出しても大丈夫なのかと思うけど、ミクは小隊に背を向けて剥がしたらしいから大丈夫みたい。そもそも向こうはこっちを見ていないでしょうし、食べる物など気にしてもいないでしょう。ミクが下手な失敗をするとは思えないしね。
味噌のスープはアレよ、沢山の種類の野菜が入ってるから豚汁っぽくなってるわ。ドラゴンの干し肉だからドラゴン汁だけど、そこはどうでもいいか。唯の料理名だし。
匂いでアレッサとイリュも起きたので、ミクが【清潔】と【聖清】を使って綺麗にする。アレッサとイリュはボーッとしてるけど、すぐに食事を始めた。あまり料理を出しっぱなしにしてるとバレる可能性があるからね。
さっさと食事にして食べていくと、アレッサとイリュも覚醒してきたのか食事の速度が上がってきた。兵士達の誰かが来たりする前に食べ終わった私達は、少し離れた所にある林に入って行きトイレを済ませる。
穴を掘ってしてるし、綺麗にしてから埋めたから大丈夫。終わって戻ったら、小隊の隊長が仁王立ちでこちらを睨んでいた。勝手に先に行くと思ってたんだけど、それはなかったみたいね?。
「勝手な行動をするとはな。貴様らはこちらの命令も聞かん、ろくでなしだったと報告してやろう」
「なら私達は、トイレに行く事すら許さない頭のおかしい奴だったと報告しよう。トイレに行くなど当たり前の事なのだがな? そんな事すら想像出来ないのか?」
「………」
向こうが睨んでくるけど私達には全く通用しない。意図的にこちらは威圧をしていないんだけど、それはコイツの行動を邪魔しない為だ。裏切る可能性が高いので、裏切らせてから捕縛しないといけない。その為には裏切ってもらわないと困る。
必ず裏切るとは限っていないけど、どのみちコイツが行動するのを妨げる理由は無いのよね。そんな事を考えていると、「チッ」と舌打ちをして去っていく。アレで本当に威圧しているつもりだったのかしら? だとしたら話にならないんだけど。
小隊に対して声を張り上げた後、さっさと進んで行く男。私達も後ろをついていくけど、昨日よりも速いペースで歩いているわね。とはいえ私達には遅い速度でしかないけど。
そのまま後ろをついていき昼過ぎ、ようやく北西の橋に到着した。ここに敵が来るかどうかを調べるのと、小隊長が裏切るかどうかの判断ね。まあ、アレだけこっちを敵視しているなら、十中八九は裏切るでしょうけど。
それはともかく、私達は小隊よりも離れた場所で野営地を作る。もちろん橋に近付いたりせず、むしろ橋からは離れた場所だ。橋に近い場所など、向こうから狙撃してくれと言わんばかりのポジションでしかない。
橋は幅5メートルほどしかない石製。しっかりしていて馬車が通っても問題なさそうだけど、幅が狭くて大軍が通れる場所じゃない。橋の上なんて逃げられないし、単なる的にしかならないわね。だからこそ使わないんでしょう。
私達は橋から50メートルほど離れた林の近くに野営地を設けていて、橋から北東側に位置している。橋は真っ直ぐ北と南を繋ぐように架かっていて、ちょうど橋が架かっている所だけ川が真っ直ぐみたい。だから橋を架けたんでしょうけどね。
未だ敵は近くに居ないけど、何時かは確実にやってくるでしょう。問題はそれが何時なのかという事なんだけど、そこまで遠い未来じゃないわね。あの小隊長の敵意が強くなってるもの。
理由はおそらく、私達が橋から遠い場所に野営地を設けたからでしょうけど。




