0927・最前線に到着
皆様、明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いしたします。
本日は元日ですので6話更新としました。
Side:ミク
行進して進むものの、流石の軍人達もお昼の休憩には止まって休むらしい。そこまで速い速度の行軍ではなかったものの、やはりハンターは体力が足りない。とはいえ毎日訓練があって鍛えている訳ではない以上、仕方がない面もある。
職業軍人でもない限り、毎日体を酷使して虐めて強化するなんて事は無い。そもそもハンターはモンスターを狩ったり依頼を請けるのが仕事だ。町に近付くモンスターは少ないと言ってもゼロじゃないし、それは村も変わらない。
私達は途中の村で依頼を請けているハンターと出くわした事もある。当然だけど向こうに協力もしなかったし接触もしなかった。私達がモンスターの居場所を教えてやる義理は無いし、彼等が何をしていようが興味も無いからだ。
そんな村で活動していた彼らでさえ体力がある感じではなかった。武器が遠距離で強力な物に変わっているのだから、せめて体力ぐらい付ければいいものを。そう思ったのは一度や二度じゃない。
鍛えなくてもいいとなれば、どんどんと衰えていくのだろう。なまじ武器の威力が高くなってしまった弊害と言えるのかもしれない。そんな事を考えているとスープが出来たので、皆と一緒に食事にする。
周りの連中は適当な保存食やパンを齧っているだけだが、私達が遠慮をしてやる必要は無い。そもそも私が【火魔法】でスープを作っているのを見ていた連中は、誰もこちらに声を掛けてこない。ここでも魔法は怖いらしいね。
「かなり周りから浮いているけど、私達がそれを斟酌してやる必要はどこにも無いのよねえ。それにしても美味しいわ。パンは温めただけだけど、それでも香ばしさが出てるから悪くはないし」
「野外で温かい物が食べられるだけ十分でしょ。まだお昼だからそこまで温かい物が欲しくなる訳じゃないけど、それでも有るのと無いのじゃ大違いよ」
「そうだね。それよりここまで時間を掛けてるのに、まだ歩いてくる奴等が遠くに見えるのは何なんだろう。あいつら食事の時間があるのかな? もしかしたら出発ギリギリになって到着するんじゃ……」
「その可能性も無きにしも非ずね。前の軍人達は食事を終え始めてるわ。私達も急いで食べましょう。時間が無いかもしれない」
イリュが言った一言を聞いていた周囲の者達も急いで食べ始める。確かに前の軍人達は食べ終わって片付けをし始めた。私達の片付けはすぐに終わるから良いんだけど、後ろから歩いて来ている連中は多分だけど間に合わない。
食事は自分達で持っているんだし、おそらく歩きながら食べる事になるだろう。私達もさっさと食べて片付けなきゃいけないので、素早く食べて終わらせた私は後片付けを始めた。それを見て3人も食事の速度を速める。
「ニャー」
ノノに関しては適当なモンスターの肉を切ってそのまま出しているが、猫の食べ物なんてこのような物で問題ない。一応だが綺麗にして凍らせた肝臓や心臓も出しているので、栄養面でもそこまで問題は無い筈である。
当然のように野菜なども出しているし、それもノノは食べている。怪しまれないように食べさせているのだが、普通に羨ましそうにしているのが何人か居るのには呆れた。パンだけを出して齧っていた奴等だが、食事ぐらい自分達で何とかしてもらいたい。
後片付けを終えてアイテムバッグに仕舞うと、前の軍人達が立ち上がり整列を始めた。それを見て私達も整列していると、後ろから来た者達が最後尾について地面に倒れこむ。
そんな遅れた奴等を一瞥する事も無く、私達は出発した軍人達の後を追って出発した。最後尾で倒れた連中は疲れきって起き上がれないらしいが、食事をとっていた者達は無視して歩いていく。
本当に体力の無い奴等だが、何故あれ程の体力で応募したのか意味が分からない。参加しただけで報酬が貰えるのだろうか? 考えても分からないので、とりあえずは歩く事を優先するか。
…
……
………
歩き続けて夕方前。ようやく最前線へとやってきた。どうやら今日中に辿り着く為に急がなくちゃいけなかったらしく、慌ただしく最前線の砦に居る兵士達と軍が話しているようだ。私達には聞かされない事なので、ゆっくりと休憩しておく。
私達ハンターは砦に入れないが、そもそも砦そのものが大きくないので兵士も大半が入れない。なのでハンター側から文句も出なかった。そもそも最前線なのだから不便なのが普通でもある。
夕方前なので料理をしつつ、私達は暢気に料理が出来るまでゆっくりとする。今日の夕食は面倒だったので麦粥にした。これならこの星でも食べられているので何ら不思議ではない。
ただし使っている麦は押し麦なので、普通の麦粥に入れられる麦ではないけど気にしたら負けだ。誰も私達の食べている物に興味などあるまい。麦を入れているのは分かった筈だしね。麦粥があまり好かれていないのは知っているから、興味はあってもすぐに失せただろう。
それが出来たので椀に入れつつ、炊事をしている軍を見る。向こうも同じように何かを煮込んでいるようだが、これだけの兵数の食事を賄う水をよく汲んで来たね。たとえ近くに川があるといっても大変だったろう。
ウェルキスカ王国とダスガンド帝国の間には川が流れている。両国を隔てる川には幾つも橋が掛かっているのだが、毎回この大橋で戦闘が起きるそうだ。だからこそ争う場所が分かりやすいとも言える。
大軍が通れる橋はここだけらしいので仕方ないのだろうが、ここの領有を巡ってぶつかり続けているのが両国となる。ウェルキスカ王国は帝国に持たせたくない、ダスガンド帝国は王国に攻め入る為に確保しなければいけない。
お互いのぶつかり合う場所が、この大橋を境にした領域だ。今までにも何度か大橋を奪われた事はあるらしいが、敗走した後で王軍と合流し取り戻している。なので私達先行組が奪われたとしても問題は無い。
後で王軍と協力して取り戻す事も考えている為、そもそも初戦で勝たなくとも良いのだ。ただし勝てなくても敵の数を十分に削っておく必要がある為、早めに着陣しておく必要があった。それが急いでいた事の理由の一つ。
もう一つは、少ない数しか居なければ力尽くで帝国が突破してしまうからなんだそうだ。何度か帝国に大橋を奪われた事があるのだが、それらは全て電撃戦。つまり速攻で奪われてしまっている。
だからこそ辺境伯は奪われない為、軍を素早く派遣して現地入りさせた。兵が沢山見えれば、帝国側もそう簡単には力押しをしようとはしない。それを狙ってのものだったようだ。
「昔から変わらない小競り合いだよ。何もかも変わらないけれど、それでもアタシ達は国を守るだけだ。これからもずっと変わりゃしないさ」
そう言って、残り物の麦粥を食べて去っていった女ハンター。一人分以上はあったから満足はしただろうと思うけど、御礼のように戦争に纏わる話をしてくれた。
名前はエルシア・ラウムハーン。そんな名前を名乗っていた女だ。装備が結構汚れているので、それなりのベテランなんだとは思う。もうすぐ30歳だと言っていたから長いんだろう。実際に過去の戦争の話をしてくれたぐらいだしね。
それにアレッサが全く合図を出さなかった以上、語った事は全て事実だという事になる。本当の話をしてくれたのは助かるんだけど、明日はもう一人の分も欲しいとか言い出していた。意外に図々しいけど、ベテランなんてあんなものか。
「そうじゃない? それに相棒らしいブレンダ・カルマインっていうのの名前も事実だね。嘘はついていなかったよ」
成る程。なら本当に厚かましいだけだね。とはいえ情報は貴重だし、相手もそれを分かってこっちに対価として渡してるんだから、別に良いんだけど。




