0925・中央ガウトレア第2南西町
Side:アレッサ
中央ガウトレア第1西町で妙な商人と会ってから20日が経った。わたし達は今、中央ガウトレア第2南西町に居る。様々な場所を巡ってここまで来たんだけど、ここは辺境伯のお膝元であり、一番ダスガンド帝国が攻めて来る可能性の高い場所だ。
というより一番攻められている場所というのが正しい。何故なら昨日この町に着いたわたし達が、今日ハンター協会に来ると緊急の仕事が貼り出してあったからだ。それも出来得る限り参加を求める形で、声まで張り上げている。
「現在ダスガンド帝国が攻めて来るであろう事が確認されています! 軍の指揮下に入り、我こそはと思う方は名乗りを挙げて下さい!! 軍の指揮下に入り、我こそはと思う方は名乗りを挙げて下さい!!」
「よっしゃ!! オレ様が居れば百人力だ! 今すぐに応募するぜ! 軍の指揮下なのは気に入らないが、必ずダスガンドの奴等を叩き潰してやる! お前らはゆっくり休んでていいからよ、オレ様に後は任せとけ!!」
「はぁ? てめぇ如きが何だってんだ! オレが活躍してやるから、オッサンみてぇなロートルは引っ込んでろ!! もう出番なんかねえんだよ!!」
「あぁ? んだと、このクソガキィ!! 表ぇ出やがれ!! 決闘だ!!」
オッサンと若いガキが「オレこそ」と張り合ってるいるけど、あれどう見ても似た者同士よね? 呆れるほど低レベルなんだけど、あれで自分は強いと思い込んでるんだから困るわ。弱い口だけのヤツって。やーねー。本当。
「あいつらは横に置いておいて、オレ達の参加登録を頼みたい。ああ、チームメンバー全員だ」
「おっと、あんなアホは放っておいて、せっかくの宴だ。楽しまないとな。あんな浮かれたバカどもはお呼びじゃないってね」
「そうそう。浮かれるのはいいけど、目的を見失ってるバカは大成しないよ。どっちも恥ずかしくないのかねえ、本当」
受付嬢の前に並び始めたので、わたし達も適当なチームの後ろに並んで順番を待つ。色々なハンターのランクが聞こえてくるけど、やはり鉄ランクが多いみたいね。長く依頼を熟していると、誰だって鉄ランクまでは上がるらしい。
おそらくだけど、そんなものだと思ってた。だから鉄ランクでも強さがピンキリなのよ。冗談でも何でもなく、身のこなしが大した事の無いヤツから、それなりに出来るヤツまで幅広く居る。それでも近接戦はザコばっかりなのよね。
軍なら多少なりとも習ったりするんでしょうけど、ハンターが近接戦を習うなんて事は無いんでしょう。多分だけど自分で近接戦をやろうともしていない筈。近接戦闘の基礎なんて一朝一夕には身につかない。
それは訓練を繰り返した者にしか身につけられないもの何だから、そう簡単に手に入るものじゃないのよ。そしてこの星では既に銃がある。無理して近接戦闘の技術を身につけなくても、狩りでお金を稼げてしまう。だからこそ近接戦闘は磨かれない。
でもねえ、最後に自分の身を守れるのは自分だけ。だったら死に物狂いで身につけておいた方が良いんだけど、おそらく死の直前まで気付かないんでしょうね、こういう奴等は。どのみち気付かない程度なら何処かで死ぬだけだし。
「私達は4人チームだから、それで登録してくれる? 名前はミク、アレッサ、イリュディナ、カルティクの4名」
「………登録が終わりました。この町の辺境軍駐屯地へと行って下さい。そこで待機していると、そのうちに説明があると思います。以降はそれに従って下さい」
「了解」
そう言ってミクは離れ、わたし達もそれについていく。この町は西に長く作られた町で、そこには大きな宿舎が沢山並んでいた。どうやらアレが辺境軍の駐屯地なんだろう。この国では辺境伯しか独自の軍を持つ事が許されていない。
後は中央軍、もしくは王軍と呼ばれるものが在るだけだ。中王軍は東ガウトレア中央町などの一部に展開されており、何処かが攻められたら後詰として出される軍だと聞いている。この国はどうも防御に偏った国だと思うのよね。
最初から他国を攻める事を考えておらず、徹底的に攻めて来る敵を跳ね返す為の軍。そういう軍であり運用方法だと言える。まあ、それ自体は問題も無いし自国の事を考えていると思うんだけど、攻めないと守れない事もあるんだけどね。
最初から攻めの姿勢が見えない相手なんて、どれだけボコっても許される相手でしかない。そう見られない為には攻めないといけないんだけど、何故かこの国ではそれをする気が無いみたいなのよね。もしかして誘ってる?。
わたし達は歩きながら色々と話すものの、適当な事を話しているだけなので結論は出ない。そんな事を繰り返していると駐屯地に辿り着いたので、既に居る連中の近くに行き話を聞く。
「私達は戦争に参加するハンターとして来たんだけど、ここでいいの?」
「おう! ここで待たされるんだよ、いっつもな。で、お前らハンターは従えと言われるんだ。いつも通りだが、その後に名前を控えるんでな。ここに来てないと戦争に参加しても報酬はもらえないんだよ」
「つまり辺境伯軍とハンター協会で情報を突き合わせ、どちらもに登録がないと報酬は支払われないってわけね。まあ、辺境伯も無駄金は出したくないでしょうから、気持ちは分からなくもないかな」
「そうね。1人分でも多く削りたいでしょうし、ここに来る事も出来ないんじゃ逆に怪しまれるでしょ。何か疚しい事でもあるんじゃないかってね」
「まあ、そういうこった。どうせ後からまだまだ来るだろうから、ゆっくり待ってりゃいいと思うぜ? 全員集まらねえと話も始めねえだろうからさ。本当にいっつも待たされるんだよ」
話を聞いた男6人組の奴等もダラダラしてるみたいだし、どうも本当に始まるまでには暇があるようね。外からゾロゾロとやってくるし、わたし達の近くにも人が集まってきた。
どうやら面倒な話を一度で終わらせる為に、ワザと全員が集まるまで待っているんだろう。気持ちは分かるとはいえ、待たされる方は面倒なんだけど……。ま、ハンター如き待たせておけって事なんでしょうね。向こうは軍だし。
数も向こうの方が多いから、こっちは待たされるのも仕方ないのかしら。……面倒でも待つしかないか。
…
……
………
結構な時間を待たされたけど、ようやく軍人が来たって事は話が始まるわけね。随分と待たせてくれるじゃない。
「ここに来たハンターは、これからの軍事作戦に参加するものと見做す! 我々軍の命令に従って行動するように! 尚、勝手な行動をする者は敵方の者として射殺する場合がある! 己の行動を慎むようにせよ!!」
まあ、当然の事ね。戦場で怪しい行動をしているヤツなんて、当然だけど敵だと見做される。殺されても文句なんて一切言えないわ。
「それではこちらでも諸君等の名を控えるが、それが終わったら各自帰ってもらって構わない。急ではあるが、出発は明日だ! 今日中に食料などの必要な物は買い込んでおけ。以上だ!!」
食料は自分達で用意するの? これで報酬が安かったら詐欺ね。古い時代でだって、食料を用意するのは雇う側よ。まさか雇われる側に食料を持参しろと言うとは思わなかったわ。まあ、わたし達はミクが持ってるから心配は要らないんだけどね。
それにしても不思議なものねえ。それともガイアの日本みたいに、最初の3日分は各自で持ってくる……とか? 戦国時代とかいう時代はそうだったらしいし。
でもねえ。それってケチ臭いと言わざるを得ないのよ。ここまで発展した星で、本当にそんなケチ臭いと思われるような事を国がするのかしら? 些か以上に疑問があるわ。




