0924・悪意の商人の背後には?
Side:ノノ
ミク達を追いかけてきた商人どもの部屋に居るが、呆れるしかないな。野蛮な者は何処にでも居るし、そんな事は分かりきった事なのだが……。それでも人間種というものは愚かとしか思えん。
「それで、いつも通りの方法でいくのか? ならオレはあの一番綺麗な女な」
「おい、ふざけるな! ありゃオレのだ。お前はその横に居た女で我慢しとけ」
「はぁ? 薬を用意してるのはオレなんだぞ。ならオレが一番いい女に決まってるだろうが!」
「何言ってやがる! 毎回毎回お膳立てして、薬を飲ませてるのはオレ達じゃねえか! お前は薬を用意したからって毎回ふんぞり返って何もしねえだろうが!」
「そうだ! お前は毎回毎回、盛り上げようともしねえし適当に待ってるだけじゃねえか! 文句を言うならテメェはガキの相手でもしてろ!」
「ふざけんじゃねえぞ! 誰の御蔭で<ヴェノム>から薬が買えると思ってやがんだ!! オレの御蔭だろうが!!」
ほう、薬の出所は<ヴェノム>か。これは話を聞いておいた方が良いな。さっさと善人化しようと思ったが、その前に魅了の香りを注入して聞き出しておかねば。そうと決まったら愚か者どもが揉めている間に突き刺すか。
触手を透明化している事もあるが、揉めて喧嘩をしているようなヤツは簡単で助かる。そういう意味でも正しく愚か者だな。それでは話を聞いていくか。
「お前達は特殊な薬を持っているらしいが、その薬はいったい何だ? どんな効果がある?」
「オレが持っている薬は強力な幻覚効果のある麻薬だ。一度何かに混ぜて飲ませれば薬に依存し、この薬を定期的に摂取しないと生きていけなくなる。<ヴェノム>では<奴隷薬>と呼ばれてる薬だ」
「成る程。確かに依存症にしてしまえば、薬の奴隷と言えるだろうな。そういう薬を<ヴェノム>が作っているとして、お前はその<ヴェノム>から仕入れる事が出来るという事か?」
「そうだ。オレの商売は普通の商売だが、その裏で麻薬関係も売っている。その売り上げの7割を<ヴェノム>に上納しているから薬を売る事も出来るし、仕入れる事も出来る」
「7割か……。それでは完全に<ヴェノム>の資金源ではないか。連中は金持ちを脅迫したりしているだけだと思っていたが、やはり地下では碌でもない事をしていたようだな」
「<スコーピオン>も<ゴート>も薬物関係の仕入れ元は<ヴェノム>だと聞いている。幾つもの国の田舎で薬の材料を作らせているらしく、細々とさせているだけなんで気付かれないそうだ。何より作っている田舎者も何を作っているのかは知らされていないらしい」
「小さくとも掻き集めれば大量になり、分散しているから幾つかが駄目になっても薬の原料は無くならない訳か。厄介な事をしてくれるものだ。村々を巡って潰していくしかないのであろうな」
それ以外に目ぼしい情報は無かったので危ない薬は全て我が貰い受け、その後は善人化して放置した。気を取り戻せば善人になっているので問題あるまい。薬は適当に町の外で処分するとして、成分は把握しておくべきだな。
村々で同じ成分を大量に含んでいる物があれば全て燃やさねばならん。作っている者が何を作らされているか知らんのならば、善人にしても栽培を続けてしまうだろう。それでは困るからな、確実に破壊しておかねばならん。
種も何も無ければ育てる事も出来まい。そこまでしておかねば、この系統の物は阿呆が蔓延させる。ガイアでも合法化しておる所や、合法化しろと喚くトチ狂った連中が居るからな。
アレらだけが破滅するなら好きにすればいいが、ああいうのは周りを汚染して拡大しようとする。己らが汚らしい汚物であるという自覚も無いからか、穢れている事さえ理解できておらん。真に醜い汚物どもだが、それでも善人化すれば綺麗になろう。
その後に薬の後遺症に苦しむだろうが、善人になっている以上は手を出したりは絶対にせん。ならば放っておくだけで済む。やはり何処を向いても善人化が先だな。それさえしていれば大半の物事は解決するだろう。
ただな……この問題の根源には悪徳の神が居る可能性が高い。それが居る限り終わらんような気がするのだが、悪徳の神に関する情報は全く無い。まずは情報を手に入れる事から始めるしかないのだが……難しいと言わざるを得ん。
とりあえずは善人化を進めるか。ミク達は部屋に居るし、今の内に村々を回って日中にも善人化を進めよう。ファーダも既に畑などを見回ってくれているようで、在れば纏めて本体空間に入れているらしい。【空間魔法】で根ごと全て移動させたようだが、それが一番いいか。
夜になったら適当な場所に纏めて、一気に燃やし尽くせば済むだろう。そう決まれば頑張って探さねばな。
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Side:ミク
「という事で、ファーダとノノは村々を回って麻薬関係を潰すってさ。だから夕方くらいまで帰ってこないんじゃないかな?」
「さっきの商人がそんな奴等だったとはねえ。色々な所に広域盗賊団が絡んでいるみたいじゃないの。まあ、だからこそ広域なんだけど」
「これぐらいの文明なんだから、それをしている奴等も居るとは思っていたけどねえ。当たり前のように危険な薬物をバラ撒いているとは……社会を破壊するつもりなのかしら?」
「そんな事すら考えてないんじゃない? 自分達が儲かればいいを突き詰めればこうなるでしょうよ。薬で他人が狂っても気にしないし、自分さえ良ければ他人がどうなろうと興味なし。そういうのは闇ギルドに共通した考えでしょ」
「そうなんだけど、何処も変わらないと改めて思うわね。そしてこういう奴等が一度根を張ると、もはや根絶する事は不可能になる。ガイアの一件は神様が絡んだから成立した訳で、普通は無理よ」
「でしょうね。あそこまで完全に一掃するには、惑星全体に蔓延するくらいの病気が必要よ。でないと惑星上から滅するなんて誰も出来ないわ」
「私達にそこまでしろとも仰らないでしょうし、そこまで期待もされていないでしょ。現に私達じゃ無理なんだし、出来ない事をやれとは言われない筈よ。だからそいつらが動き難いというか、ちゃんと取り締まられる形になれば良いんだと思うわ」
「それが今までやってきた事だし、これから先もやる事だよ。まずは善人化、次に悪徳な神の情報集め。ただし神の方は難しいと思う。むしろばったり出くわす可能性の方が高いんじゃないかな?」
「なんで?」
「この星の悪人を善人に変えていってるんだし、そうなると混乱しないじゃない? そうなれば当然その原因を探る筈だし、探れば私に行き着くのは確実。そうなると混乱を鎮めている原因を排除しようとするでしょ」
「成る程ね。だから突然神様が目の前に現れる可能性が高いって訳か。それも厄介な事ねえ。いきなり先制で攻撃をされると、絶対に間に合わないじゃない」
「神様相手なら仕方ないけど、ある程度は警戒しておくしかないわね。常に気を張っておくなんて出来ないけど、何かあってもいいように心の準備はしておくべきかな? それでもいきなりだと多分動けないだろうけど」
「それらも含めて、その時にならないと分からないわよ。今言っても仕方ないし、あんまり考えだけ先行しても仕方なくない?」
「そうだね。その時が来たら、その時が来た時だよ。私が何らかの対処をしてるだろうから、気にしなくてもいいと思う」
おそらくでしかないけど、不意を突いてきても私なら間に合う筈。流石に神と正対して戦った事は無いからね。今までは不意打ちに近い形で勝ってきたけど、悪徳な神に不意打ちは難しいだろう。
その時になったら全力で戦うかな?。




