0923・中央ガウトレア第1西町
Side:ミク
アレッサの思いつきで悪の神の権能を使って悪人を調べてみたら、これが驚くほど簡単に判明した。腐っても神の権能と言うべきか、私の持つ能力よりも遥かに微細に詳細に分かるのが腹立たしい。ただし利用できる物は何でも利用するけどね。
そういう意味では、今まで悪人にするか悪人の思考を読むぐらいしか価値が無いと思ってたんだけど、まさか悪人かどうかを調べる事が出来るとは考えていなかった。出来るのは知っていたけど、それを利用しようという発想にならなかったと言うべきか。
我ながら何故思いつかなかったんだと思うけど、こういうのが1人だけだと発展しない理由なんだろうね。人間種だって同じで、発想だけで進歩するのに数千年間も進歩しなかった期間があったりする。その僅かの発想が生まれずに数千年だからねえ。考えさせられるよ。
悪の神の権能で調べ上げ、善の神の権能で書き換える。何故か非常にやりやすいけど、相性が良いのかな? 神の権能に相性なんて無いような気もするけど……気にしなくてもいいか。やりやすいならそれで良いし、ついでにさっきの馬車の御者とかも後で善人にしておこう。
流石に移動中にやると気を失うし、確定で御者台から落ちて轢かれるだろうしね。事故を起こしたい訳でもないから、流石に移動中の連中は無しだ。日中の村も危険がある可能性はあるけど、お昼でもない限り火なんて使ってないだろうから大丈夫だと思う。
それに倒れたのは悪人だけだしね。死亡事故も流石に無いと思うし、あったら御愁傷様って言うぐらいかな? 所詮は悪人だから気にしなくていいだろう。それはそうと、休みを終えたからバイクで移動しようか。
「それはいいけど、村はこうやって変えていくの? 毎回止まらなきゃいけないんだけど、それもまたストレスになりそうね」
「いや、そんな事は無いよ。町で毎回1泊する事になるけど、悪の神の権能を使えば一気に進める事が可能だからね。町以外はどんどんと善人化をしていくし、余ほどの事が無ければ町で1泊だけかな?」
「町はいきなり善人化したりしないのよね? 盗賊なんかが分からないから」
「そうだね。いきなり善人化して解決って訳にはいかないって部分はあるからなんだけど、ある程度動いてくれないと判別できないから仕方ない。それに町の者を一斉に善人にすると、何処の誰が悪党だったかも不明だし何も解決しないからさ」
「解決しないっていうのが大きいわよね。悪党の証拠が白日の元に晒されるのなら良いけど、それが全て出るとは限ってないし……。善人が自分で解決しようとして、悪人が全て闇に葬るって事も考えられるもの」
「善人になってもどう転ぶかが分からない以上はね、私達が把握できなくなる可能性がある。その状態でテロとか起きても解決不能だし、どうしようもないわ。それに広域盗賊団と<栄光の大帝国>もあるし……」
「他にも中小の盗賊団もあるみたいだし、簡単に終わりそうもないわよね。まあ、まだ1つ目の国だし、それに厄介な帝国とかもある。今は移動しつつ善人を増やしていくぐらい? 東ガウトレアにも戻らなくちゃいけないしさ」
「あっちも善人化をしていかなきゃいけないのよねえ。中央町にすら行ってないし、一部の場所を移動してきただけだもの。まだまだこれからも移動を続けるしかないか。善人化はミク達に任せるしかないからね」
「そうそう。じゃあ、そろそろ行きましょう。それとミク、第1北東町はどうするの? ノルトスの所」
「あそこは……今日の夜かな? 権能を使って一気に終わらせておくよ。それで大丈夫なんじゃないかな。近付いてないから第1北東町がどうなってるかは分からない。多分ファーダが暗示を掛けた通り強盗の所為になってると思うけど……」
「記憶を貪り喰って存在しない強盗の所為にしたんだっけ? まあ、少年が善人に書き換えられてるから問題ないとは思うけど、一応気をつけておいた方がいいかしらね。もしかしたら<ファイアスター>に対する嫌がらせか何かがされているかもしれないし」
「会長夫婦が死んでるんだもの、それはあると思う。実際には被害者と加害者でしかないんだけどさ。まあ、悪女を殺したのは少年だけど、少年は善人化の刑を受けたようなものだし」
「そうね。ある意味で刑はきっちり受けたと言えるでしょう。あの少年が果たして経営者になれるのかは謎だけど。だって経営の責任者って奇麗事が言えない立場だし、善人が出来るのかちょっと疑問があるのよね」
「まあ、何とかなるんじゃない? そこまで私達が考える事じゃないわ。それよりそろそろ行きましょう」
イリュの声に応える形で皆もバイクに跨り出発する。ノノは私が乗せてるから問題は無く、更には触手でバイクにくっ付いているから落ちる事も無い。私が座っている座席の前に乗っているんだけど、バイクにしがみ付いていると言った方が正しいかな?。
座席の前にはエンジン部分を含めた場所を保護するカバーが付いてるんだけど、そこにお腹をくっ付けて乗っている。そのお腹から触手を出して吸盤みたいにくっ付けているので落ちたりはしないんだけど、誰かに見せたりは出来ない姿だね。
もちろん吸盤も含めて人間種には見えないんだけど、そういうものであるという事は覚えておかないといけない。ま、バイクに乗ってる間だから大丈夫だし、止まったら普通の猫のフリをしているからバレる心配は無い。
途中の村などを無視して走って行き、長閑な風景の中をバイクで走る。なかなか良い風を感じながらも、速度は出ているからか町に着いてしまった。中央ガウトレア第1西町だ。
私達は町の前でバイクから降り、アイテムバッグに仕舞ってから町に入った。まだお昼ぐらいなのに着いてしまったが、これに関しては当然だとも言える。今までのような自分の足で走っていた時よりも早いものの、それは村を無視するように進んできたからだ。
今までは村の善人化の事も含めて、ゆっくりと進まざるを得なかった。だからこそ移動の速度も抑えられていたんだけど、一気に善人化する方法が出来た為、いちいち速度を抑える必要がなくなったからね。それが一番大きな理由だろう。
私達は町の中に入り、宿へと行って部屋をとる。この町にも悪人が居るが、善人化するのは夜になってからだ。わざわざ昼間の明るい時間に善人にする必要は無い。宿の部屋がとれた私達は食堂に行き、適当に昼食を頼む。
運ばれるまで待っていると、商人っぽい連中が複数入ってきてテーブルに着いた。それは普通の光景なのだが、何故か私達に大して悪意を向けてきている。見た目は普通の服なので一見すると分からないが、商人特有の鞄を持つ為に分かりやすい。
大きな口の鞄であり、厚めの革で作ってある鞄なのだが、それを肩ベルトを斜めにして提げている。腰の部分から物を取り出しやすい形になっており、お金を支払ったり受け取ったりしやすいようになっている鞄だ。
典型的な商人の鞄であり、商人であれば誰でも似たような形の鞄を提げている。そんな鞄を提げた4人がジッとこちらを見ているのだが、その視線に乗っているのは完全な悪意だ。
『こっちに悪意を向けてくる商人が4人居るけど、いったい何の用だろうね? 王都から来た訳でもないだろうし、わざわざ私達を追いかけて来たとは思えない。そんなヤツが居れば私が気付かない筈がないし』
『そうね。ミクが気付かないなんて余ほどの事でしかないわ。となると下らない事なんじゃないの? こっちが女4人だからって軽く見てるんでしょうよ』
『そういう感じの下卑た視線にも見えるわね。ま、私達はバイクで移動したんだし、そんな私達に商人が追いつける筈もないから、その4人の商人は別でしょ。この町に居たか、それとも王都以外の方面から来たか』
『それしか考えられないわよね。少なくともお昼には次の町に着いているんだし。商人だって半日で町まで移動したりなんてしないわよ。幾らなんでも早すぎるしさ』
料理が運ばれてきたので食事にし、適当な雑談に切り替える。その間も商人達はこちらに悪意を向けて来ているので、イリュの言った事が正しいのだろう。私達は無視して食事を終えると、さっさと宿へと戻る。
しかし帰り道でも商人は後ろから尾行してきたうえ、私達が宿に入り部屋へと戻ると、受付に言って部屋をとり始めた。
いったい何を考えているのやら?。




