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0921・バイク受領




 Side:カルティク



 小さな依頼を請けるようになってから15日。私達はやっとバイクが出来上がる日を迎えた。依頼に関しては3日目で真鍮クラスになり、その5日後には鉄ランクまで上がった。最速で鉄ランクまで上がったらしいが、私達にはどうでもいい。


 ダンジョンから素材を獲ってくる依頼を熟したから早かったのだが、その後に指名依頼が入るようになってしまったのが何とも言えないところでもある。特に10階以降まで下りて素材を獲ってくる、それも1日でとなると他に居ないらしい。


 私達には【身体強化】での高速移動があるからだが、それが無い普通の者達は階段で寝泊りをしている。アルデムと同じく階段はセーフティゾーンになっているらしく、魔物には襲われないで休めるみたいなのよ。


 もちろん盗賊には襲われるので気を付ける必要があるが、そういう依頼を熟さなければ上には上がれないらしい。そして殆どの者が鉄で頭打ちなんだって。銀と金のランクに関しては、貴族や王族の推薦がないと成れないランクみたい。


 当然だけど私達がそんなランクを欲する筈もなく、むしろ絶対に銀とか金なんて要らないし受け取らないと決めた。特に推薦した貴族が後ろ盾になるとか言われたら、それは私達にとって後ろ盾じゃないと言いたい。むしろ邪魔なのよ、邪魔。


 という事で、鉄ランクになって以降は碌に仕事をしていないのよね。指名依頼は仕方なく請けているけど、それも今日まででしかないわ。今日はアーリーの所に行ってバイクを受け取り、その足で別の町へ行く。そして私達は既にアーリーの所に来てる。



 「よう! 待たせてすまねえな!! ようやっと完成したぜ。それにしてもコレで良かったのか? 祖先がスケッチで残してたのは、こんなフレームじゃなかったんだがなぁ」


 「コレの方が乗りやすいのよ。スケッチにあったっていう下に重心が寄ってるバイクは長距離に適してるんだけど、わたし達としては村とか町で寝泊りするから、そこまで長距離の事は考えなくてもいいの」



 アレッサも言ってるけど、私達が頼んだフレームは縦に細い感じの物よ。ガイアのレース用のバイクとでも言えば良いのかしら? ああいう感じであって、やたらに長いハンドルで重心の低い座席に座って長距離を走るバイクじゃないの。


 もちろんガイアの日本でヤンキーとかいう連中が乗っているようなバイクでもない。いたってシンプルなバイクよ。メーターとか何も付いてないけど、そもそもそういう物が必要でもないしね。


 ミクが跨ってハンドルを握ったけど、魔力を流した瞬間エンジンが始動した。ハンドルの他にはブレーキが付いているだけのシンプルな仕上がりだけど、これがこの星で初めてのバイクなんだから十分ね。タイヤはマッドフロッグの皮が巻いてあるわ。


 あの後も必要だからと多くの素材を獲りにダンジョンへ行ったし、あまりに頻繁にダンジョンに行くもんだからダンジョンマスターと会ったのよね。


 向こうから会いにきたけど、普通の女性だったので問題は無かった。まあ、向こうは怯えてたけど、事情を話すと納得して帰っていったわ。


 私達が大量に集めてきた素材で作られたバイクだから、待った甲斐があったというものよ。早速といきたいところだけど、アイテムバッグにバイクを仕舞った私達は、アーリーに残りの5000ダルを支払う。



 「いやー、ありがとうよ。ちゃんと完成した訳じゃないが、この星で初めて売れたバイクだ。もし何かあったらここに来てくれ。修理はきっちりとするぜ? 金は貰うけどな」


 「ま、何かあったら頼むよ。私達もある程度は乗ってみないと改善点とか分からないだろうしね。それじゃ、私達はこれで」


 「おう! ありがとうなー」



 アーリーの店を後にした私達は王都の門を出ようとしたところで呼び止められる。誰かと思ったらハンター協会の受付嬢じゃない。何だか嫌な予感がするわねえ。この子、私達を便利に使えるとか思ってる感じなのよ。結構な無茶振りもしてくるし。



 「すみません。ここで待っていれば、おそらく通られると思っていました。実は協会からの指名依頼で「断る」ダンジョンの……」


 「依頼を請けるのはハンターの自由と決まってる。私達は王都を出て行くから、どんな依頼だろうと断らせてもらう。指名依頼だろうとハンター側に決定権がある。そうだよね?」


 「………」


 「あそこまでやってやったんだから十分でしょ。これ以上、都合よく利用されるのもウンザリなのよ。今までは事情があって王都に留まらなきゃいけなかったけど、もう留まる用事も無いからね」


 「この指名依頼は王族の方からの指名依「断る」頼で……」


 「何を言おうが誰であろうが断る。他の誰かにやらせればいい。そもそも私達は鉄ランク以上に上げる気は無い。面倒な関わりなどゴメンだからね」


 「しかし! 王族の方からの「知らないね」依頼は……」


 「私達はハンター協会のルールに従って拒否している。私達の拒否はルール内において合法であり何も問題は無い。もし問題があるとすれば、それは協会の都合であってハンターには関わりのない事。つまり、そっちが何とかするべき事だ」


 「散々こっちを都合よく利用していたけど、それがこの先もずっと続くとでも思った? 悪いんだけど、そんな事はあり得ないのよ。他の奴等にやらせなさい、他の奴等に」


 「下らない事でいちいち引き止めないでもらいたいね。これがハンター証。私達は出させてもらうから」


 「あ、ああ……。それは構わないが、王族の方からの依頼は良いのか? 有名になるチャンスだぞ?」


 「有名になりたくないから受けないのよ。全員が全員、有名になりたい訳でも名を売りたい訳でもないわ。私達は適度でいい。どうせ有名になると有象無象が係わってきて面倒臭い事になるんだもの。そんなのはゴメンよ」


 「鬱陶しいのよね、アレ。いちいち騒がれるし、自分の居場所がバレるし、おまけにバカが突っ掛かってくるし。百害あって一利あるか無いかぐらいじゃない? 有名になるのって」


 「そ、そうか。有名な者というのも色々と大変なんだな」


 「そうよ? とんでもなく面倒臭いし、何かあった時に助けてやらないと五月蝿いの。自分達は大した実力もない分際で一人前の口を利いてくるうえ、そんなゴミみたいな有象無象が何処に行っても延々と湧いてくる。それが有名になるという事よ」


 「「………」」


 「わたし達は有名になった際の害悪をよく知ってるわけ。つまり有名にさせようとしても無駄って事よ。王族に都合よく使える奴が居るって売り込んだんでしょうけど、こっちが都合よく踊ってやる義理は無いわ」


 「そうだね。私達以外の都合よく踊るバカに言えばいい。今までの態度から警戒されていないと思ってたんだとしたら、随分と甘っちょろい頭をしてるね?」



 ミクが最後にそう言って私達は王都を出た。浅ましい欲が透けて見えていたのに、それが警戒されないと思うなんてね。ミクが言う通り、本当に甘っちょろい頭をしているわ。


 周りがバカばっかりだからといって、私達まで簡単に操れると思ったのかしら? それとも名声とかいう価値の無い物で騙せると思ったのかしらね。名声なんて何の価値も無いのよ? だって儲かる訳じゃないもの。


 名声から仕事に繋がって初めて儲けになるのよ。名声だけで儲かる訳じゃない。だから名声になるだろうなんていう仕事は、報酬を与えないと言ってるのと変わらないわけ。


 そしてそんな〝報酬〟を当たり前のように出してくるのが王族。人や国にもよるんでしょうけど、近付かないのが一番良い連中よ。


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