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0920・小さな依頼をコツコツと




 Side:アレッサ



 わたし達は普通の依頼の1つ目を終わらせ、現在はハンター協会の中でゆっくりしている。理由は青銅ランクに上がったんだけど、そのハンター証がまだ手元にないからよ。次の依頼を請けようにも、ハンター証がないとハンターだと証明出来ないからね。待つしかない。


 椅子に座ってダラダラしていると、ハンター協会に誰かが入ってきた。ゾロゾロと入ってきたのでそちらを見ると、何やら大所帯の女性集団みたい。女性のみでチームを組んでいるのも見るのよねぇ、男に酷い目に遭わされたか、それとも身を守る為でしょうけど。


 それよりも受付へと進んだのはいいけど、わたし達のハンター証が遅れたりしないでしょうね? 幾らなんでも止めてよ、そういうの。



 「ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかい?」


 「はい、何でしょうか?」


 「私達は王都にとある貴族を護衛してきたんだけど……この依頼の事さ。で、それはいいとして、報酬はこっちで受け取れと言われて来たんだ。その報酬は本当に預けてあるのかい?」


 「少々お待ち下さい、今から調べます」



 貴族の護衛はいいんだけど、報酬って手渡しなの? それともハンター協会で受け取るの? どっちが正しいのかと言われたら確かに悩むでしょうね。でもハンター協会で請けた仕事なら、ハンター協会で受け取るのが当たり前じゃない? わざわざ聞く事?。



 「お待たせしました。こちらにも情報は届いています。正規の仕事であり、報酬は120ダルですね」


 「120ダルだって!? やっぱりか! あのクソ貴族。自分の護衛には多人数を用意しろと言って数を集めさせた癖に、報酬は最初の4人分にする為に逃げやがった!!」


 「貴女方が請けた依頼の貴族は………ああ、この貴族ですか。この貴族は平民を見下している癖に、こういうケチ臭い事をするので有名な貴族ですよ。特に先代が酷いと言われています。つまり皆さんが護衛してきた貴族ですね」


 「クッソ!! 全部で12人も集める羽目になったのに、どうするってんだ! 身銭を切るしかないのか!?」



 あらら、御愁傷様。お金を恵んであげてもいいけど、プライドが傷付きそうだし面倒ねえ。いちいち関わりたくないんだけど、受付の前で騒がれても面倒臭いし……って、受付嬢がこっち見てる? それに胸元でジェスチャー? ああ、ハンター証が出来たと。


 でも、あの女が騒いでる所為で迂闊に声を掛ける訳にはいかないって訳か。あの集団も怒ってるうえ、リーダーの女がどう見てもキレてるっぽいし、そこで声を掛けたら余計に爆発するよねえ。


 どうしようか迷ってるとミクがさっさと動いて、札束を女に叩きつけた。というか、札束で頬をはたいた後に渡した。



 「それで1000ダルある。くれてやるから、それを分けて五月蝿く言うのを終わらせろ。ああ、こっちにどうこうは言わなくてもいい。それは盗賊団を皆殺しにして奪った金であって、綺麗な金じゃないからね。それより私達のハンター証」


 「はい、こちらになります。4人分ありますので名前に注意して下さい。間違えて出すと奪ったと疑われる場合もありますので」


 「了解」



 ミクが4人分のハンター証を持ってさっさと協会の建物を出て行くので、わたし達も遅れないようについていく。正直に言って呆然としている間に逃げたと言う方が正しいんだけど、あんな連中に構ってられないからね。


 前で歩くミクが1人ずつに確認しながらハンター証を渡してきたので、受け取りながら自分でも確認する。確かに赤褐色の青銅ね。今までと色が違うから分かりやすいわ。ちょっとした違いだけど、少しは扱いがマシになるかしら。


 次の依頼は……確か運ぶ仕事だった筈。今回も肉体労働だけど、わたし達にはそういうものの方が合ってるのよね。決まっている仕事量を終わらせれば済むから。なんと言っても【身体強化】を使えば、こういうのは早く終わるのよ。


 平民街の中でも工房などがある区画へ来たけど、指定された場所は建築の仕事をしている会社で……って、あったわ。会社というか唯の倉庫にしか見えないけど、とりあえず入りましょうか。扉があるし。


 開けて中に入ると、ガタイのいい男達が居たのでミクが声を掛ける。



 「ここの会社の依頼を請けたハンターだけど、運搬の仕事を依頼したのはここで良いんだよね?」


 「おう! そうなんだが……嬢ちゃんらがか?」


 「わたし達だけど問題ある? 依頼の仕事はきっちり素早く熟すわよ。それより仕事内容を説明してくれない?」


 「………分かった。ここにある石材や、隣の倉庫にある砂なんかを運んで貰うんだが、荷車に詰め込んで一気に運んで貰う事になる。何往復もする事になるんだが、本当に大丈夫か?」


 「大丈夫よ、そのぐらいなら。それで指定の場所が分からないんだけど?」


 「ああ、ウチの若手に案内させる。ワシらも早めに仕事を終わらせなきゃならんので泣き言は言わせねえが、それでもいいな?」


 「問題ないわ。それより喋ってる時間が惜しいから、さっさと始めましょうか」



 カルティクのその一言で動き始めた建築集団。わたし達は荷車を外から倉庫内に入れて、石材をどんどんと積んでいく。荷車が壊れない程度に詰むと【身体強化】を微弱に使って牽いて行くんだけど、周りで驚いているわね。


 わたし達は周囲の驚いている男達を無視し、一気に指定された場所に運んで行く。運んだらすぐに下ろしていき、それが終わったらまた倉庫へと戻って荷車に積み込む。後はその繰り返しなんだけど、ミクは早々に砂の方に回った。


 どうも向こうも必要な材料らしく、石だけ運ばれても困る感じだったみたい。それ以外の材料もあるみたいなので運び、昼前には仕事が終わったので依頼達成の紙を貰う。



 「いやー、まさかこんな短時間で終わるとは思ってなかったぜ! 最初に疑って悪かった。2日か3日は掛かるんじゃねえかと思ったら、とんでもねえ速度で終わるとはな。良い意味で予想外だった。ありがとうよ!」



 そう言って上機嫌な依頼主に挨拶して、わたし達はハンター協会へと戻る。受付で依頼達成の報告をして報酬を貰ったら、食堂に行って昼食を注文。運ばれてくるまでゆっくり待つ。



 「ミクは意図的にさっさと終わる仕事ばかりを選んでたのね。正しくは私達なら素早く終わらせられる仕事だけど、短い期間に一気に仕事を終わらせてランクを上げる気かしら?」


 「そうだね。今日は町中だけど、明日からはダンジョンに行く仕事になると思う。複数の依頼を請けて一気に狩ってきて、それを一気に納品って感じかな? アイテムバッグを持つ私達ならではの方法だね」


 「確かにそれなら一気にランクが上がりそう。特に素早く仕事をするっていうのは評価の対象みたいだし、鉄ランクにまでなれば軽く見られる事も無いでしょ。6ランクの内の中間より上なんだし」


 「多分そうだと思うけど、平均が真鍮なら少し上って事になるわね。まあ、それならそれで良いんだけど、鉄のランクにまでは成れると最初の依頼でバレてるのよ。それ以上はともかく、そこまでは上げましょうか」


 「そうね。真鍮で止めるのもアレだし、鉄のランクの実力があるんだから上げろと五月蝿く言われても困る。とはいえ向こうも組織だから言ってくるのは仕方ないでしょうし、いちいち向こうから五月蝿く言われるよりは……」


 「こっちから上げておいた方が五月蝿くないだけマシね。バイクが出来上がるまでは王都に居る必要があるし、そこまでは五月蝿く言われないようにするしかないわ。居る必要が無くなったら、さっさと出て行くけど」



 そもそも善人化をしていかなくちゃいけないんだし、向こうが引き止めても出て行くけどね。


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