0916・ダンジョン3階の戦い
Side:カルティク
私が解体を終わらせた後は王都へと帰る事になった。ミクとしては喧嘩を売ってこないならば何でもよく、ここのダンジョンマスターは喧嘩を売ってきていないので問題無しとの事。私達もいちいち争う気も無いので、走って戻る事にした。
【身体強化】を使って一気に走り、私達は1階を目指して移動を続ける。多少のハンターに見られはするものの、たとえ見られたとしても大丈夫だろう。これだけ速く走っている者に絡んだりなど普通はしない。
外でもそうだが、おかしな奴等に絡まれるのが面倒という意味しかないので、私達が駆け抜けてもそこまで大きな揉め事に巻き込まれはしない筈だ。そもそもそれが面倒臭いからこそ、人前で走るという事をあまりしてこなかっただけだし。
バイクがあれば言い訳になるので楽になるのだが、どのみちダンジョン内では使えないだろう。悪路も多いうえタイヤ部分を破損する可能性も高い。アレは舗装された道の上か、土の上を走るものであって、ダンジョン内を走るものじゃない。
そういう意味では【身体強化】を行っての高速移動はやはり重要になってくる。今の私達がしている事だけど、どこでも素早く移動でき、うん? 3階にまで戻ってきたけど、何か揉め事が起きてる。
私達は立ち止まると、顔を見合わせて頷きあい【念話】を使う事にした。何処で聞かれるか分からないから、声に出すのは危険でもある。
『さっきからこの階で「バンバン」銃を撃つ音が聞こえるわね。それにこの怒号、どう考えても争い事でしょ。問題は何と何が争ってるのかという事だけど、わたしには分からないんだから確認してくれる?』
『既にやってるけど、どうも一部のハンターを大人数が攻撃してるわね。平原だから隠れるところが無くて困ってるみたい。数の少ない方がどんどん追い込まれてるわ。人数の多い方が、その数で押しているわね』
『押しているというか、下手な鉄砲を撃ちまくって命中率を上げている感じ? 数だけ多い方が何とか当てていて、数の少ない方は狙って当てているかな? とはいえ数が少ないから押し潰されて終わりでしょうね』
『そうだね。流石に数の少ない方は厳しいと思う。何となくだけど、ノルトスに教えて貰った<スコーピオン>の気がしてきた。皆はどう思う?』
『<スコーピオン>って確か広域盗賊団の中でも、ダンジョン内とかで盗賊行為をする奴等よね。一番盗賊っぽい奴等というべきか。残りは脅迫と盗賊経営だからさ』
『盗賊経営って……まあ、間違ってないけどね。<ゴート>は荒野の○○っていう盗賊団を傘下に持ってるから』
『あれだけ大人数だと、確かにミクの言う通り<スコーピオン>で間違いなさそうよ? 今まで会った事も無かったけど、それは私達が田舎の方に居たからでしょうね。流石に王都近くのダンジョンは都会だし、連中にとってのカモが居るみたい』
『カモっていうよりは、襲っても幾らでも湧いてくるって感じじゃない? 奪える相手が居なくならないっていうのは重要だと思うわよ。私達だって盗賊を襲うんだし、盗賊の少ない所より多い所の方が稼ぎになるもの』
『それはそうなんだけど、私達の場合は居なくても構わないわよ? 一応そこは違うんだから同じにされても困るわ。まあ、敵が居たら喜んで攻撃して奪うんだけど……。ところで音がしなくなったわね?』
『どうやら少人数の方が全員死んだみたい。そろそろ私達の出番かしら? 3階に歩いて出て行って大人数に出くわしたって感じに装えばいいわ。その程度でこっちを襲ってくるでしょうし』
『それじゃ、始めようか』
ミクが立ち上がって歩き始め、それに合わせて私達もついていく。すぐに味方して少人数の方を助けても良かったんだけど、仲間が既に死んでいるって事は難癖をつけてくる可能性があるのよ。「何故もっと早く助けなかった?」っていう風にね。
実際アルデムで長い間、闇ギルドの連中を監視したり殺したりしてきたけど、その間には何度も似たような事があった。そんな事を繰り返すと、そういう連中を助ける気も無くなるのよね。助けるんじゃなかったって何度も思ったし。
そういう意味では、中途半端に仲間が死んでいる連中は助ける気にならないっていうのが正直なところなのよ。こっちに難癖つけてきても恨みに思われても面倒だし。こっちからすれば、「だったら自分達の力だけで何とかしろ」としか思わないのよねえ。当たり前だけど。
何で助けてやったのに鬱陶しい思いをしなくちゃならないのか意味が分からない。助けるだけ無駄というか、助けてやる意味が無いのよね。だからこそ闇ギルドを潰す方にシフトしていったんだけどさ。私も。
「あれ? もしかして盗賊? ……お前達、そこで何をしている!」
「あんた達、もしかして人を殺して物を奪ってるんじゃないでしょうね!?」
あからさま過ぎて逆に怪しいわよ。2人も分かってるんでしょうけど、完全に棒読みの科白じゃない。それでも相手は動揺してるからいいけど、冷静な奴が相手なら怪しまれるだけじゃ済まないでしょ。もうちょっと演技しなさいよ。
「チッ! おい、お前ら!! 新たな客が来た。だが女どもだ、出来るだけ殺すんじゃねえぞ!」
「よっしゃ! 女なんてついてるぜ!! ダンジョンに潜る奴で女は多くねえからな。オレ達が襲ってるってバレてるからだろうけどよ!!」
「いちいち余計な事を言うんじゃねえ! さっさと手足撃ち抜いて黙らせるぞ!!」
盗賊団のような奴等は次々に私達に発砲してくるけど、私達はそれを回避しつつ撃ちこんでいく。ミクはタワーシールドを出して弾いており、私とイリュは相手の銃弾を透過している。アレッサはミクの後ろに居て当たらないようにしているわね。
常に足を動かし続け当たらないフリをしているけど、実際には敵の攻撃を透過しているので当たらない。銃弾はすり抜けて私とイリュの後ろに飛んでいってる。そんな争いの中、私達は的確に敵の頭を撃ち抜いていく。
実は争いの最後はリーダーっぽい奴をノノが魅了する手筈になっている。そいつさえ生きていれば情報は得られるだろうからだ。無理して生かす価値も無いし、50人ぐらい居る連中の大半は殺して問題無い。
それよりもチラッと見えたミクは反則じゃない? タワーシールドで相手には見えてないからって、触手でリボルバーに弾込めしてるんだけど……。あれ見てると反則という言葉しか頭に浮かんでこないわ。
私達もリボルバーを使って相手の頭を撃っている。6発のうち1発は外しているけれど、残りの5発は頭に命中しているので、そこまで命中率が低い訳ではないと思う。その辺りはちょっと分からないのよね。平均とか知らないし。
流石に5分ほど戦ってたら大半を殺し終わったわね。そろそろノノが敵のリーダーっぽい奴に魅了の香りを注入するでしょ。私達はそれっぽい奴を避けて撃ち殺しますか。それより弾込めが先ね。
私は走りながら弾込めをし、敵にリボルバーを向けると既に終わっていた。おそらく1人は倒れているだけで生きているだろう。そいつがリーダー格だと思うんだけど……。
「ニャー!」
どうやらあそこに居るみたいね。それにしても盗賊からの剥ぎ取りもしなきゃいけないし、尋問しながらになるかしら? 話に集中できればいいけど、できなければ後でミクに聞き直しましょうか。
リボルバーも大量にあるし、私もミクが持ってる8発装填のヤツが欲しいのよね。誰か持ってないかしら? 買っても良いんだけど、タダで手に入るならそれに越した事は無いし。




