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0088・探索者チーム・竜の牙




 「おっと自己紹介が遅れたな。オレの名前はガルツォ。探索者チーム<竜の牙>のリーダーをしてる。弟にガッツォが居るが、オレはガルツォなんで間違えないでくれ」


 「ガッツォ? 今日第2エリアで、仲間の女性に愛想を尽かされてたけど?」


 「は? ……どういうこった!?」


 「第2エリアに犯罪者が増えてるって聞いたから見回りに行ったら、4階で犯罪者どもに喧嘩を売ったらしく、13人相手に苦戦してたの。私が割って入って助けたけど、我慢の限界だったのか愛想を尽かされたってわけ。私達を危険に巻き込むなって、物凄く怒ってたから、相当の鬱憤が溜まってたんじゃない?」


 「あいつ……! バカな事は止めろ、お前の実力じゃ無理だって、散々忠告してやったっていうのに! それもこれも、オレより10年も後に産まれたからって、甘やかした親父とお袋の所為じゃねえか! 他人に迷惑掛けやがって!」


 「あーあー、遂にあのバカ弟君は愛想を尽かされたかー。まあ、いずれそうなると思ってたけど。あ、オレはジュードっていうんだ。宜しく! 美人とお近づきになれるなんて、今日はラッキーな日だぜ!」


 「何を言ってんだか……顔を見て出直せ、まったく。私はオルディアーラ。見ての通り獅子獣人だけど、父はラーディオンね。これ言っとかないと、たまに父の悪口を私の前で言う奴がいるのよ」


 「ギルドマスターには全然似てないけどね。私はエリュスター。ブラウンエルフだけど、この見た目じゃ分かり難くくてゴメンね」


 「エリュはカルティクさんに憧れてるから、何故か顔を布で隠すよね。まあ、ジャンダルコでも顔を隠す人は多いけどさ」


 「あれは顔を隠してるんじゃなくて、陽射しをなるべく受けないようにしてるだけでしょうが。分かっててバカにするんじゃない!」


 「あいてっ!?」


 「おれ、バッズ。よろしく」


 「宜しく?」


 「バッズは面倒なのか、いつも片言しか喋らねえんだ。喋る必要がある時は、むしろ饒舌に喋るんだがなぁ……。っと、こんなトコで話してても仕方ねえ。ちょっと退いてくんねえか?」


 「??? ……どういう事?」


 「ああ、第5エリアは初めてか、もしくは他の人に会った事がないのね。第5エリアでは、何も持ってない方が道を譲る決まりになってるのよ。私達は荷車を牽いてるでしょう?」


 「ああ、そういう事。確かに前に一度来てから、一ヶ月ぐらい来てなかったし、前は誰にも会わなかったよ。ところで退くのは良いけど、代わりに階段の場所を教えてくれない?」


 「階段はこのまま真っ直ぐ進めばあるわよ。5階までは同じ場所に何故か階段があるの。それ以降は場所がバラバラで、分かってないんだけどね」


 「ありがとう。今退くよ」



 そう言って、ミクは下の方へと下りていく。上に上がると襲いかかる可能性がある為に警戒されるだろう。そう思い下へと下りたのだ。


 実は探索者チーム<竜の牙>は、誰一人として気を抜いていなかった。小さくではあるが、ミクに悟られないようにしながら警戒していたのだ。とはいえ肉塊相手では無駄な努力でしかないが。


 ミクが下に行った事により、明らかにホッとした空気を出した<竜の牙>の面々。その中でバッズという男だけが警戒を解いていないのをミクは感じ取っていたが、無視した。理由はどうでもいいからだ。


 彼等が通って行った後、再び元の道まで上り前へと歩いていく。先ほどの連中がどんなスキルを持っているか分からない為、ミクは警戒して普通の速度で移動している。



 『本当なら聞いた通りの所に階段があるか調べに走りたいんだけど、それをすると速すぎて怪しまれるかもしれないし……困ったもんだよ、本当。気配を調べる系のスキル持ちだとバレるからねえ』


 『仕方ありません。この第5エリアは全く人が居ない訳ではありませんので。それに、5階以降の階段が分かっていないというのも厄介ですね。ここは角度がありますから、上から確認しただけでは分からない可能性があります』


 『確かに。角度によっては見えない可能性があるし、トンネル探しの時のように魔力を放出して調べた方が良いかな? 思いっきり放出すれば見つかると思うんだよね。ただ、それだけの魔力量がバレるとヤバいけど』


 『なら、出来ない方法なのでは?』


 『深夜なら大丈夫でしょ。流石に第5エリアを泊まりで攻略してる奴等はいないだろうし、最悪はオークになって動き回るかな? そうすれば見られても大丈夫だよ』


 『そんな莫大な魔力を放出するオークなんて、存在しないと思いますが……』


 『あー………確かにそうだね。んー……ピーバードになって空を飛びながら探した方がマシかな?』


 『でしょうね。スライムである私でも、オークになる方法は駄目だと分かります』


 『仕方ない。それでも空から調べられるだけ、他の探索者よりマシか。大人しい方法で階段を探そう』



 そんな会話をしつつ下っていくミク。遂に5階に到達したものの、ようやく魔物が変わった。通りで先ほどの<竜の牙>は荷車を牽いて戻ってきた筈である。


 ミクの目には熊の魔物と鹿の魔物が見えていた。つまりマッスルベアーとスチールディアーである。まさかの55階以降に出現する魔物だとは思わなかった。今の今まで見ないのは当然であったのだ。


 とりあえず右手にウォーハンマーを持ち、左手に石を持って投げつける。見事に頭に当たり、怒ったマッスルベアーは突撃してきた。


 頭からの体当たりをしてきたが、ミクは上りである右に回避し、左の後ろ足にウォーハンマーを振り下ろす。ワイバーン素材のウォーハンマーは、マッスルベアーの毛皮にも筋肉にも骨にも負けず、左後ろ足を粉砕。



 「Gaaaaaaaa!!!」



 マッスルベアーの激痛の声が轟くも、ミクは無視して左肩も潰した。これで左半身の腕と足が使用不能。既に戦闘能力という意味では瀕死に近く、残っている強力な武器は噛みつきぐらいである。


 しかし体を動かせず、その場で噛みつくしか出来ない熊など怖くも何とも無い。ミクは冷静に背後からウォーハンマーを振り下ろし、後頭部に直撃させた。当たり前だが血を噴出して倒れるマッスルベアー。


 ミクはバックステップで距離をとり、後をレティーに任せる。それなりの血を噴出しているものの、未だに死んではいない。ただし後頭部への一撃で完全に気を失っており、レティーが一気に血を吸い上げた事で死亡。


 ミクは警戒を解くと同時に【清潔】や【聖潔】などを使い、綺麗にしたら武器を交換する。ここからはバルディッシュでいくのだが、次の狙いはスチールディアーだ。


 角が鋼の如き硬さと鋭利さをしており、突撃を受けると非常に危険だと言われている。鹿系の魔物も突進の速度は速く危険である為、気をつけなければ簡単に殺されかねない魔物だ。


 そんな鹿系の魔物でも上位のスチールディアーに対し、石を投げるミク。ぶつかったスチールディアーは、先ほどのマッスルベアーと同じく突撃してきた。同じパターンで倒せるかもと思い右に回避するミク。


 ところがスチールディアーはあっさりと止まり、角を振って攻撃してきた。慌ててバルディッシュで受けるも、その隙間から枝分かれした角がミクに突き刺さる。


 予想外の行動に腹を立てたミクは、スチールディアーの胴体に前蹴りを行い、下へと叩き落したのだった。ちなみに傷は一切無く、服が少々切られただけであり、ワイバーン皮の物は傷さえ付いていない。


 蹴り落とされたスチールディアーが怒りの形相で立ち上がるも、それ以上に怒っている肉塊。「畜生如きが調子に乗りおって……!」といったところであろうか。


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