0910・雑談と考察
Side:カルティク
ミクが8人のチンピラを潰したけど、アレはミクにとって当たり前すぎる結果でしかない。私やイリュなら透過させ、アレッサなら喰らっても気にしない。そういう戦い方なら可能だけど、ミクの場合は後から動き出してもかわせる。
明らかに反則な動きなんだけど、最強の怪物にとってそれは容易い事でしかない。そんな化け物相手に普通の人間種が勝てるなんて事は絶対にあり得ないし、万が一の可能性すら存在しないのよ。したら最強の怪物じゃないからね。
そのミクは暢気に掲示板に貼り出されている依頼の内容を確認している。周りからは怖れるような視線を向けられているけど、本人は欠片も気にしていない。そもそも私達だってそういう目で見られても気にしないんだし。怪物はもっと気にしないでしょうね。
受付嬢も何があったかは察しているらしく、大人しくしているだけだ。そもそも決闘は向こうから売ってきた喧嘩だし、受付嬢は止めようともしなかった。ならハンター協会として問題は無いって事になるわ。後で口を出してきても遅い。
まあ、そもそも口なんて出して来ないでしょうけどね。それはそうと何か面白い依頼でもあったのかしら? ミクがジッと見ているけども。
「ミク、何か珍しい依頼でもあった? 何かをジッと見ているみたいだけど」
「ああ、依頼そのものじゃないんだけどね。中央ガウトレア第1北町の近くにあるダンジョンで、魔物を狩ってきてほしいっていう依頼があったんだよ。つまりそこにダンジョンがあるんだなと思ってね」
「ああ、成る程。そういう事ね。それはいいけど、どうするの? ダンジョンに行ってみるか、それともスルーするか」
「依頼自体はどうなの? 請けて面白そうなヤツ?」
「それなりに深いダンジョンなのかな? 5階と9階と11階の魔物素材が欲しいみたいだね。5階のマッドフロッグの皮、9階のゲイズの角膜、11階のソードタイガーの骨と牙が要るみたい」
「ふーん。まあ、今日は時間が時間だし、依頼を請けるのは明日じゃない? そろそろ夕方になりそうだし、食堂に行きましょうよ」
「そうだね。依頼を請けるのは明日にして、今日はもう食事に行こうか」
そう言ってミクは外に出るけど、あの依頼って銅ランクでも請けられるのかしらね? いや、そういえばランクで請けられる仕事が決まっていたっていう感じは無かったのか。そんな言葉も聞いた事は無いし、駄目なら明日何か言われるでしょ。
私達は食堂に移動し、少し早いけど夕食にする。適当に注文して待つと運ばれて来たので、エールを飲みながら食事を始めた。あのチンピラとの決闘、ミクは全弾回避したのよね?。
「そりゃね。そもそもあの程度の人数だと飽和攻撃も不可能だから、当たる筈もないんだよ。あり得ないと言ってもいいし、そもそも私の素の能力で動けば銃弾より速いんだしね。それでどうやって当たれというんだか……」
「ああ、うん。銃弾より速く動けるならそりゃ問題ないでしょうよ。それにしてはジックリ狙って撃ってたみたいだけど」
「あんまり人間種が理解できない行動をしてもね、怪しまれるだけだし信用されないでしょ? だから人間種程度でも理解できる動きにしただけだよ。やろうと思えば最初で8連射して終わらせる事も出来たからねえ」
「8連射で終了は流石に怪しまれるし、その方法を使わなかったのは正しいわ。あのチンピラどもなら絶対に認めなかったでしょうしね。ミクが何か卑怯な事をしたとか言い出した筈よ」
「そういう分かりやすい態度をとりそうな連中だったけど、あれだけ完璧に叩き潰されたらどうにもならないでしょ。どうせ今日の夜に善人にされるし、逆恨みしても届かないわ。恨みごと消えるから」
「それはそうでしょ。しっかし、荒れているだけあって何処に行っても決闘騒ぎが起きるわね。荒れている星だってのは分かってるけど、銃があるとこうなるのかしら? いわゆる西部劇みたいな感じよね、この星」
「そうね。その割には未だ王制みたいだし、不思議な状況ではあると思うわ。もちろん悪い事ではないけど、まだ民主主義にはなっていないみたい。まあ、あの制度は国民の一定数以上が教育されないと難しいから仕方ないけど」
「でも初期の方って、一部の頭の良いのだけで選んでなかった? そこから徐々にって感じだった気がするけど、全体化するのはまだ無理でしょうね。それに広域盗賊団の介入とか普通にありそうだし、そうなると盗賊が支配する国になりかねないわ」
「選挙で選ばれてしまったら、どうにもならないって部分はあるものねえ。そういう意味では融通が利かない訳で……。どんな物事にも一長一短あるし難しいところか。過渡期って感じもするし、簡単には判断出来ない情勢かな?」
「ミクは王城にも行きそうだけど、国の中も良くしないといけないから大変ねえ。こんな世の中なら腐った文官も多そうだし、盗賊と繋がってるのも居そうというか居るでしょ。特に国に対する忠誠とか無くなってそうな感じだもの」
「元々無いと言えばそれまでだと思うけど、ダンジョンがあって銃があるなら自分で稼げるもの。尚の事、国に対する忠誠なんて持てないでしょ。良い意味でも悪い意味でも、特権階級的なものがあったからの忠誠だしね」
「ガイアを考えると、発展すればする程に特権階級的なものの旨味って薄れていくわよね。むしろ狙われる元にもなりかねないし、それなら適度な立場で良いっていうヤツも出てくるのよ。気持ちはよく分かる」
「まあ、悪党から狙われたり、恨みで狙われるなんて御免でしょ。それなら適度に美味しい立場で命の危険を避けるのが正しいわよ。いわゆる悪の小粒化ね。それまでの時代なら巨悪とかが出てきたんでしょうけど、悪党ですら上を望まなくなる」
「それもそれだけど、でも世の中に巨悪が出てこなくなるだけマシなのかしら? もちろん絶対に出てこないなんて事は無いでしょうけど、それでも出てきにくくなるんだから良い事よね」
「代わりに地下に潜るから、完全に掃討するのは難しくならざるを得ないけどね。そういう意味では余計に面倒臭くなる感じ? そんな気もするわね」
「おっと、客も増えてきたし、そろそろこんな話は止めましょうか。どうせそろそろ食べ終わるし、後は宿に帰ってからね」
知らない星をウロウロとしていると、色々な事を知れて色々な考察が出来る。それはそれで楽しい事だと思うわ。こんな下らない話が出来るのも私達だけでしょうし、この星の人達が理解できるとは思えないもの。私達だけの楽しみね。
宿の部屋に戻った後は、適度に雑談をしつつダラダラと過ごし、眠たくなったのでエアーマットを敷いて寝る。
それじゃ、おやすみなさい。
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Side:ノノ
随分とこの星に関する考察をして遊んでいたが、この星がどうなるかなど誰にも分からんのだぞ。ま、だからこそ無責任にアレコレと言って楽しんでおったのだろうが、我らが善人化するという前提を忘れて話し合ってもな。
ミクも我も敢えてその事には触れなんだが、大前提を見落とした考察に意味があったのかと言えば……おそらくあるまいよ。楽しかったのならそれでいいとも思うが、せめてもう少し建設的な話をしてもらいたいものだ。
もしかしたら酔っ払っておった所為で、あんな話になっておったのかもしれん。酔っ払いの戯言とでも言えばよいのか……その割には会話にはなっておったが。
おっと、真面目に善人化をせねばな。ここは王都なのでどんどんと済ませていかねば、何時まで経っても終わらん。




