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0087・第5エリアの探索者




 「驚くほどに違ってるのさ。最初は力の篭め方とかそういう違いを考えてたんだけど、視覚や聴覚まで違うんだから驚くしかない。まず見えてるものや聞こえる音から慣らさないと駄目だ。特に戦闘中に沢山の情報が入りすぎる。これが思ってるよりも厳しい」


 「ふーん。要らないものは無視すればいいんだけど、今までとは違うから簡単には無視できないのかな? それに戦闘中の集中状態と普段じゃ違うからね」


 「そう、そうなんだよ! 実際に戦闘に入ると、ここまで感覚が違うのかと驚くしかないのさ。自分の能力が高いって事を、改めて理解したよ。むしろ子供とかの方が簡単に慣れるんじゃないかね?」


 「永く生きてきたから簡単には慣れないんだろうね。今までの400年間とは違う感覚だけど、脳は今までの感覚で動こうとする。確かにそこの違いを埋めるのは大変か……とはいえ、不老だからゆっくりやればいいよ」


 「ああ、うん。不老なんだった。言われないと自分が不老になったんだと思えないというか、納得しない感じだよ。今まで自分の寿命の事で色々と考えていただけにねぇ」


 「違う者になったんだという自覚も、元の自分だっていう自覚も同居してるだろうけど、それを全て纏めて、ヴェスでシャルだと思える日が来るんじゃないかな? おそらくだけど」


 「まあ、そういうものだと思っておくよ。色々な思いはあるけど、今は整理しない方が良いと思ってる。こういう時は強引に納得しようとしても碌な事が無いからさ」


 「なら、それでいいじゃない。自分の事は自分で決めればいいよ。それはそうと話は変わるんだけど、メイスはどうだった?」


 「このメイス、相当エゲつないよ。メチャクチャ過ぎて呆れるしかない。フランジがワイバーンの牙で出来ているのは聞いたけど、この体のパワーと相まって敵が潰れるんだよ。で、【身体強化】をすると弾け飛ぶんだ。敵も強くないと使えないなんて思わなかった」


 「なら短剣で戦ってたの?」


 「仕方ないからね。短剣で切ったり突いたりする方が、まだ戦いやすいくらいなんだ。ボスだってゴブリンとかだし、アレに使っても簡単に弾け飛んじまうよ」


 「第2エリアのボスはオークだから、メイスを使えるのは第3エリアからかな? そっちはボスがトレントだから使えるでしょ。思いっきり叩きつけるといいよ。壊れるかどうかの実験も必要だし」


 「ああ、成る程ね。確かに通常の全力と、【身体強化】を使ってのフルパワーの実験は必要か。でないと肝心な時に武器を壊しちまうかもしれない。流石にそれはあたしも困るからね、ちゃんと調べておくよ」


 「私はフルパワーなんて無理だから調べるだけ無駄だけど、シャルの体はそこまで逸脱してないから調べる意味はあるよ。私の場合、ウォーハンマーを使っても3割強ぐらいしか出せないから」


 「あの柄がとんでもなく太いウォーハンマーで4割いかないのかい……。どんなパワーだと言いたくなるけど、そこはもう言っても無駄だね。……もしかしてなんだけど、【身体強化】せず?」


 「うん? ………うん。【身体強化】をしない3割強までしか保たないね。それでもワイバーン素材でそこまで上がったんだから、まだマシだよ。今までもっと手加減してたんだしさ。ちなみに触手なら手加減しなくて済むんだけど、今度は攻撃相手が耐えられないんだよねー」


 「そりゃ、そうだろうさ……」



 シャルが呆れながらミクの話を聞いていると、食堂にカルティクが現れた。どうやら昼まで寝ていたらしく、眠たそうな顔で昼食を注文している。そんなカルティクに対し、ミクは完成していた槍を渡した。



 「はい、コレ。カルティクが頼んでた物。合口の方はまだちょっと無理だけど、こっちは練って焼いて削れば終わるからね。そこまで時間は掛からないんだ。正直に言って、金属の方が時間が掛かるんだよ。私にとっては」


 「あー、うー……ん!? もう出来たの!? ……早いわねえ、朝言って昼に完成してるって尋常じゃないけど。……この穂先の恐ろしさったらないわ。コレが自分に向けられたら恐怖しか無いけど、私は向ける側だからねー」


 「奪われたりしないように気をつけな? 手放して短剣を抜いている間に奪われるとか、槍に拘り過ぎて不覚をとるとか無いようにね」


 「それは幾らなんでも私をバカにし過ぎでしょう。手放したのが盗まれる可能性は無いわけじゃないけど、槍に拘り過ぎる事は無いわ。私が最も得意なのは短剣だしね」


 「槍は叩いたり薙いだり、回転させて石突で殴打してもいいけど、シンプルに突くのが一番強いから。そこだけは忘れないようにね。引き戻す際が狙われやすいけど、そこは実戦で練習するしかないから」


 「槍の相手と戦ってきた事もあるし、弱点も分かってるわ。とはいえ、相手にしてきた奴等の槍はもっと長かったけど」


 「長い槍はね、使い勝手が悪いの。短槍ぐらいが一番使い勝手が良いし、引き戻しも速く隙が少ない。槍は上手くなればなる程に、リーチは相手より上なら良いとなる。無意味に長いのは不利でしかないから」


 「ふーん……」


 「穂先を合わせて2メートル。これじゃ短槍に分類されるけど、剣と比べれば十分に長い。それでも短めに持ったり、長めに持ったりと色々工夫は出来るのさ。槍って思っているよりテクニックが要求されるからねえ」


 「そうなんだ……面白そうね」


 「まあ、頑張りなよ」



 ミクもシャルも食事を終えたので宿を出ると、再びダンジョンに行く。シャルは第2エリアへ、ミクは第5エリアへと進み、それぞれの攻略を開始した。



 『午後から第5エリアですか? 犯罪者どもは食べれましたけど、あの程度で終わらせるとは思いませんでした』


 「何と言うか、あれ以上先に進んでも犯罪者どもは居なさそうだったんだよね。やっぱり第2エリアは見通しが良いし、犯罪はし辛いんだろうと思う。犯罪者どもが一番活動しやすいのは、やっぱり第3エリアだよ」


 『それはそうでしょう。あの森の中では姿を隠しやすいですし、第2エリアに増えたとはいえ、第3エリアがそこまで減ったかと言うと……』


 「また新しいのが出てきてるんじゃないかと思うんだけど、私が思ってるより動きが鈍い感じかな? 盗賊になるような食い詰め者なんて沢山居る筈なのにねー……」



 話をしながらも右回りに進んで行き、ミクは2階へと下りる。ここからは未知の領域である為、ミクも下への階段を知らない。今は本体が地図を描いているので、後でラーディオンに提出しようと思うミクであった。


 2階も同じく右へと歩いて行き、邪魔な魔物は右手の槍と、左手のバルディッシュで潰していく。なるべく傷付けずに倒していき、アイアンアントの甲殻だけは回収する。オークはレティーの食事だ。


 乾涸びていく死体を無視し、周囲の警戒を怠らないミクは、再び出てきたオークの首を刎ねる。右手の槍を回転させながら喉に突きこむと、首から上がポーンと飛んでいく。凄まじいパワーで抉られた証であろう。


 そんな倒し方をしていると、遠くから笑いながらミクに近付く者が居た。



 「おいおい、さっきの見たか? とんでもねえ事をやってのけてたぞ! ありゃオレでも出来ねえぜ!!」


 「あんたは無駄な事をしないんだから、あんなメチャクチャな攻撃なんてしないでしょうが」


 「そう。あれほどのパワーなくても、オーク、たおせる」


 「相変わらず片言だなぁ、もうちょっと喋ればいいのに。喋れない訳じゃないんだしさ」


 「おまえ、おしゃべり。むだ、やらない」


 「そうそう。貴方は無駄にお喋りなんですよ。その所為で敵の音が聞こえなかったりするんですから、邪魔しないでもらえます?」


 「あたーっ。これは思ってもいない一撃だ! オレの心がとんでもないダメージを受けたよ? お詫びに今日の夜付き合ってよ」


 「とりあえず、ここで死んでいいですよ」


 「うわっ!? あぶな!!」


 「お前ら何を遊んでんだ。あの女が固まってるじゃねえか」



 何だか妙に濃い連中だなーと、ミクは適当に聞き流していた。


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