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0905・改変された結末と遣る瀬ない話




 Side:ファーダ



 流石にこんな事になるとは予想外だったし、これはもう仕方がないから改変するしかないな。


 本質を出して気を失わせたが、それだけじゃ何の解決にもならん。まずは魅了の香りの中でも暗示に使えるヤツを使って、無理矢理に記憶を改竄しよう。


 まずは3人の言い争いの部分の記憶を喰らう。これで思い出す事すら出来なくなる筈だが、初めてなので失敗しているかもしれん。余分に記憶が削れていたらすまんな。


 記憶を喰うのが終わったら、次は魅了の香りを注入してから起こす。……よし、これから暗示を掛けるんだが上手くいってくれよ。そう願いつつ、俺は虚ろな顔をした3人を前にしてストーリーを語っていく。



 「お前達も災難だったな。いきなり強盗が入ってきて、こんな事になるなんて。強盗は逃げちまったが、お前さん達が無事で良かった。会長夫婦はこんな事になっちまったが……」


 「そう……だったか? 強盗が、そう強盗が入ってきて父さんと母さんを……」


 「お義父さんとお義母さんが、まさかこんな事に……。強盗なんかが入ってこなければ……」


 「強盗……地獄に落とさなきゃ、許しちゃいけない……」



 やっぱりこの少年だけが色々と変だな? ミクを見て捻じ曲がったとは思えん。なぜなら11歳なんだ、流石に物事の分別はつく筈だからな。そう考えると、この少年を歪ませていた何かがあるのだと思う。それが何かは分からんがな。


 俺は何度も何度も3人に強盗に殺された事を刷り込み続け、最後に少年を善人化したらその場で眠らせて立ち去る。そして透明ムカデの姿で外に出たら、生命の神の権能を利用して起こす。



 「う、ああ………いったい何が……。と、父さん! 母さん! そうだ、強盗が入ってきて……くそう!!」


 「あ、貴方……、貴方! お義父さんとお義母さんが!!」


 「う、ん………ハッ! ……お爺ちゃん! お爺ちゃん!!」



 あの少年はノルトスにすがりついて泣いているものの、あの悪女の方には行こうともしないな? 善人にしたとはいえ何か理由がありそうだが……。ま、その事を考えている暇は無いな。さっさとこの町の善人化を始めよう。


 それにしても、俺だけこの町に来ていて良かった。本当にノルトス達は大丈夫なのかと思って見に来たらコレだ。危なく少年を犯罪者にするところだったぞ。いや、犯罪者ではあるんだがな。しかしノルトスもあんな事は望んでいないだろう。


 全てはあの悪女の所為だが、アレは孫に殺されるという自業自得で終わった。ある意味で相応しい地獄に落ちたと言えるだろう。しかし孫に罪を背負わせるのは、どうにも納得がいかないのでな。この結果で良いだろう。


 文句があるならこの星の神が介入してくるだろうし、それが無いという事は問題ないという事だ。単に俺達が怖くて介入してこない可能性もあるが、それならそれで構わんし好きにするだけでしかない。そもそもここまで惑星が荒れているのは、この惑星の神が不甲斐ない所為だしな。


 俺達は根源の神の命令通りに掃除していくだけだ。人間種も神も何もかもをな。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 まさかあんな結末になるとは思ってもみなかった。完全に予想外だし、何を考えていたのやら。あの悪女が全ての原因だし、その血は孫にまで受け継がれてたって事だろうね。だから歪んだんだろうさ。


 結局はその程度のヤツが、犯罪でも何でも犯して自分の思い通りにしようとした結果だ。ノルトスと違って何の才能も能力も無かったヤツが、何故ノルトスを見下していたのか理解できないね。少なくともノルトスは回転弾倉という結果を出してるっていうのに。


 おっと、そんな事を考えていたら皆が起きてきたか。昨日言ってた通り、朝早く出て行く為にも【念話】で話そう。その間に皆には準備をしてもらうかな。



 「おはよう。昨日言っていた通り、面倒に巻き込まれる前に出発するから、準備を手早くお願い」


 「了解。面倒なんて御免だし、貴族は何をしてくるか分からないからね。さっさと遠ざかるに限るよ」


 『ここからは【念話】で話す。昨夜、ノルトスとアレンが帰った中央ガウトレア第1北東町にファーダを行かせたんだけど、そこでちょっと色々と起きた。それをこれから話す』


 『わざわざ【念話】で話すって、嫌な予感しかしないんだけど……? 心して聞きましょうか』


 『昨日、ファーダが確認しに行くと、ノルトスと妻が口論していた場面に遭遇したの。言い争いの中で妻の方は、金や生活の為に最初の妻と息子を追い出した事を認めた』


 『やっぱり予想した通りだったのね。碌でもない女に引っ掛かったものよ、ノルトスも』



 準備が終わったので私達は宿を出た。そのまま食堂に移動して朝食を注文し、落ち着いたところで話を再開する。



 『妻の方は認めたうえで「何が悪い?」と開き直ってたね。それどころかノルトスとの間の息子は、ノルトスの子じゃなかった。ノルトスの本当の子供は、あの盗賊だったグロッグだけだったよ』


 『うわぁ……最悪。碌でもない悪女じゃないの』


 『そうだね。ノルトスも「お前は悪女だ」と言っていたよ。そして部屋の外に待機させていた息子夫婦を部屋の中に入れた。それには激しく動揺してたね』


 『ああ。ノルトスにバレるのは良いけど、息子夫婦にはバレたくなかった訳ね。ところがノルトスは真実を聞かせたかったと、そう思って扉の前で待機させてたわけか。実に痛快なことねえ』


 『そしてその後も口論になったけど、檄昂した妻にノルトスは撃たれた。デリンジャーだったよ。弾数は1発しか入らない護身用だったけど、胸を1発で撃たれてね。血が流れすぎて死んだ。最後にあのグロッグと、1人目の妻だと思うエヴィリアに謝罪しながら息を引き取った』


 『……そう。真面目に生きても誠実に生きても。食い物にしようとうごめく奴等が居るのよね。本当に碌でもないわ』



 料理が運ばれてきたけど、皆が憤慨しながら受け取ったので店員が困ってたね。流石にそれは駄目なので注意すると、皆も怒りを引っ込めた。



 『ごめん、ごめん。とはいえ遣る瀬ない話よ。何で悪人の方が得をして、善人が苦しまなきゃいけないんだか。神様達が愛想を尽かすのもよく分かるわよ、ここまで酷いとね』


 『本当の問題はこの後なんだけどね』


 『『『えっ?』』』


 『実はこの後、隠し持っていたデリンジャーでノルトスの妻を撃ってるのよ、アレンが』


 『は? ……え? なんで?』


 『悪い事をした奴等は地獄に落ちなきゃいけないって。それでノルトスの妻を撃ったんだよ。腹に1発、足に1発、腕に2発、最後に頭でとどめ。悪人は苦しめてから殺さなきゃいけない。あの子はその通りにしたみたいだね』


 『『『………』』』


 『ちなみに言っておくと私の所為じゃないよ。あの子は少々歪んでいたみたいだからね。その後に気絶させて、ファーダが魅了の香りを使いつつ暗示を掛けていたんだけど、その時にも悪人は地獄に落とすって言ってたぐらいなんだ』


 『となると、元々アレン少年の中に悪人を許せない何かがあった。それがミクの断罪を見た事でハッキリと目覚めたんでしょうね。悪女の血は孫をも歪ませたって事かしら』


 『そう思うと、やっぱり悪人の血は滅ぶべきよねえ。もちろん子供時代の環境にもよるんでしょうけど、血筋としか思えない事もあるもの。善人化しても取り除けないのかも』


 『まあ、神どもが文句を言わないから、今は善人化でいいんだけどね。とはいえそういう事だから、あの町は善人化も終えてるし、なるべく近付かないようにする。何処かでボロが出ても困るしね』


 『了解。私だって必要が無いなら行く気は無いわよ。気分が悪くなりそうだし』



 アレッサが怒りながら最後の一口を食べたので、私達は食堂を後にした。本当に碌でもない結果にしかならなかったね。私達が関わらなかった方がマシだったかな?。


 ま、今さら何を言っても意味は無いんだけど。


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