0902・中央ガウトレア第1東町に到着
Side:イリュディナ
朝になって起きた私達は宿を出て食堂に行き、朝食を食べたら乗合馬車へ。更に西に行く乗合馬車に乗ったら、そのまま揺られて進む。それにしても自分の足ならもっと速いのに、いちいち時間の掛かる方法で進まなきゃいけないとは……。
昔はこれが普通だったというのに、随分と我慢が効かなくなったものよ、私も。ここまで我慢がストレスになっているのは、間違いなくガイアの所為でしょうね。あそこ早く移動する方法がいっぱいあるし、実際に乗った事もあるし。
ゆっくりと移動する景色を見ていても楽しくもなければ暇でしかない。まあ、そんな事は口が裂けても言えないし、子供達ですら我慢しているんだから耐えるしかないんだけどね。色々な意味で我慢が効かなくなってるわ。
自分を見つめ直す良い機会のような気もするけど、このイライラ状態では意味も無さそう。もうちょっと落ち着いている時にするべきでしょうし、落ち着いていたら忘れそうな気もする。おそらくはその程度の事なんでしょうね。
ノノを撫でて精神を落ち着ける。うん、今はアレッサが抱いているから横で触れるのよ。それにしても手触りが非常に良い毛だし、撫でていると落ち着くというか、癒しのパワーでも持ってるのかしら? 本当に不思議ねえ。
とはいえ落ち着いてきたから大丈夫みたい。やれやれ、自分の事ながら何故あそこまでイライラしていたか不思議で仕方がないわ。何かしらの移動手段を手に入れるか、それとも走れる理由を作るべきかしら? ……どのみち子供達やノルトスが居る間は無理か。
素直に諦めるしかないわね。この子達を送り届けるまでの辛抱だし、それが終わったらゆっくり出来るでしょう。侯爵家に絡まれなければ。
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Side:カルティク
私達は東ガウトレア第2西町を越えて、中央ガウトレア第3東町へと到着した。ちなみにノルトスとアレンの帰る町は中央ガウトレア第1北東町だから、第2東町から北に行く必要があるみたい。
ま、そこまで行けば自力で帰れるみたいだから、私達がついて行く必要は無いみたいだけどね。流石に姉妹の、つまり侯爵家の方を優先してくれと言われているわ。姉妹に寄り道させたと知られれば何を言われるか分からないもの。当然でしょうけど。
私達はいつも通りに宿をとり、食堂へと移動して夕食をとる。中央ガウトレアに来たものの、ミクは武具屋には行かないみたいね。話を聞いたら、王都で見た方が品揃えが良いだろうとの事。まあ、そうでしょうけどね。
宿へと戻った私達は、後をミクに任せて眠る。それじゃあ、おやすみなさい。
…
……
………
次の日になったのでミクに聞くも、善人化はいつも通り終了したみたい。悪人の数は中央ガウトレアに来たものの、そこまで増えていないとの事。元々が多いから何とも言い辛いけど、程々に悪人が居るという事かしら? それもいやねぇ。
食堂に移動して朝食をとり、今日も乗合馬車で西へと行く。特に何も無いとは思うけど、<ヴェノム>の構成員もまだまだ居るだろうし、そいつらが白昼堂々と襲ってくる恐れも無い訳じゃない。一応は気をつけておかないとね。
ガタガタ揺れる馬車に揺られつつ、今日も暇な時間が過ぎていく。私達だけなら走るんだけど子供達やノルトスが居る以上はそれも無理だし、早くこの状況が改善してくれる事を願うわ。
中央ガウトレア第2東町に着いた。いつも通りに私達は宿をとり、食堂へと移動する。夕食をとって宿の部屋へと戻ると、後は雑談でもして寝るだけ。移動で時間が潰されるうえ、その移動時間が暇で仕方がない。何とかならないかな、本当。
そんな事を心の中で愚痴りながら、私はエアーマットに横になる。それじゃ、おやすみ。
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Side:イリュディナ
起きたら宿を出て食堂に行き、朝食を食べる。最近お決まりのパターンのように同じ行動しかしていないから、メリハリが無い無駄な時間を過ごしているようにしか感じない。まあ、それもそろそろ終わるけれども。
私達は乗合馬車が集まっている区画で、ノルトスとアレンと別れの挨拶をする。
「本当にありがとう。お主らがが居らねばワシの命も孫の命もどうなっておったか分からん。感謝してもしきれん。もし第1北東町に来る事があったら訪ねてきてくれ。良い銃を安く提供できるじゃろう」
「ありがとうございました!」
「まあ、乗りかかった船というか、偶然同じ馬車に乗ってたからね。一緒に助けただけだよ。それに盗賊どもが持っていた物は貰ってるし、それで十分儲かってるからね。私達に損は無いから気にしなくてもいいよ」
「そうそう。特に気にする事なんて無いわ。ラッキーだった、ぐらいに考えればいい事よ」
「まあ、実際に私達が乗ってた訳だから、ラッキーで間違い無いんだけどね」
「とはいえ私達が乗り込んだ以上は、助かる見込みしかなかったんだけど。……それはともかく、死なないようにしなさいよ。思い詰めてるみたいだからね」
「大丈夫じゃよ。そう簡単に死んでたまるものか、真相を知るまでは死ねんよ」
そう言うノルトスと手を振るアレンと別れ、私達は西に行く馬車に乗る。これが最後の乗合馬車かと思うと清々するわね。さっさと乗って終わらせましょ。そう思って乗り込む。
…
……
………
やっと中央ガウトレア第1東町に着いたわ。本っ当に疲れたわねえ。歩いてないけれど、歩く以上に疲れた気がするわ。姉妹はお膝元の町だからか随分と機嫌が良いし、走り出しそうになってるわね。いや、本当に長かった。
とりあえず、ここで何かあったら連れて来た意味が無いので、一応最後まで護衛をする事にして姉妹を囲む。いきなりでビックリしたみたいだけど、私達が説明すると2人も納得したようだ。そう、この町にこそ<栄光の大帝国>の奴等が居る可能性がある。
この子達を人質にとるなら、ここが最後のチャンスだもの。もしかしたら混乱を起こす為に殺しに来るかもしれない。まあ、ミクが言うには人数が少ない連中だから、そこまで無理押しはしてこないだろうって言ってたけど。
でも無理矢理に事を運ぼうとする可能性がある以上は、私達が警戒するに越した事は無い。なので4人でフォーメーションを組んで、姉妹を中心に置いて歩く。
私が先頭で左にカル、右にアレッサで殿はミク。銃で狙ってくる事を考えると右のアレッサがスカスカ過ぎるけど、これはもう仕方がない。身長が低いからどうにもならないのよね。
どんどんと前に歩いて行き、ついに貴族っぽい屋敷の前まで来た。一応門番というか、守衛のような者が居るので話し掛ける。話しておかないと間違いなく不審者扱いだからね。
「ちょっといいかしら? 私達は侯爵様の娘さんを連れて来たんだけど、中に行って話してきてくれる?」
「それよりも私達が中へと入った方が早いです。私はカレルフィア・ディオレム。ここに居るのはエリデシア・ディオレムです。今すぐここを通しなさい」
「え? ディオレム……! わ、分かりました。すぐに門を開きます!!」
門番は慌てて門を開くと、カレンとエリーはずんずんと歩いて行く。私達はどうしようか悩んだけど、カレンがついてきてほしいと言うので、仕方なくついていく事に。あんまり面倒なのと絡みたくないんだけどね。
それでも届けておいて後はスルーだと、それはそれで貴族のプライドを傷付けるのよねえ。本当に面倒臭い生き物だと思うわ。




