0897・とある人物の最期
Side:アレッサ
わたしとイリュとカルティクは盗賊団<ヴェノム>の連中を暗殺して回っている。イリュとカルティクなら容易く暗殺できるんだけど、わたしは簡単には出来ない。<真・吸血鬼族>って強力な種族だと思うんだけど……まあ、いいか。
とにかく自分がしなければいけない事はキッチリとしないとね。改めてそう気合いを入れると、わたしは霧にした首から上を盗賊に近づける。そして霧の一部を口に戻すと盗賊に噛みつき、一気に血を吸い上げた。
血を一気に吸い上げられた盗賊は、あっという間に乾涸びて死んだ。わたしはそれを繰り返して暗殺していく。当然ながら見つかる事も音を立てる事も無い。そもそも噛みつきから死亡までの間に意識が復活している者は居ないだろう。
起きている者ならばまだしも、寝ていたのであれば意識が起きる事も無く死んでいる。わたしが血を奪う以上、そんな悠長な暇を与える訳が無い。よってバレずに処理できている。それはともかく2つ目のログハウスも終わりそうね。
イリュとカルティクは3つ目のログハウスに取り掛かっているけど、あの幹部の男だけは最後に残しておくみたい。あの男しか居なくなったらミクを呼べば済むし、死体は全て回収しているから子供達の気分が悪くなる事も無いでしょう。
私も乾涸びた死体を回収し、さっさと3つ目のログハウスに近付きますかね。2人なら問題なくやってるでしょ。
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Side:ミク
イリュから【念話】が来たので、私は姉妹や少年に老人を連れてログハウスを出た。音を立てないように改めて言い含め、3つ目というか一番前のログハウスへと向かう。ログハウスは縦に並んでいて、幹部の男が居たのは何故か一番前のログハウスだった。
ここに来る道を考えれば、普通は幹部なんだから一番奥の私達が捕まっていた地下牢のあるログハウスだと思うんだけどね? 何故か道に対して一番前にある矢面に立つログハウスで寝泊りをしている。理由が不明だけど、気にしたら負けかな?。
そのログハウスの中に入り、音も立てずに滑り込むと幹部の男の部屋に入る。そしてロープで縛りつけようとすると慌てて起きたので、ブン殴ってから捕縛した。意識を失ったが気にしなくていいだろう。コイツしか生き残ってないし。
私は幹部の男を外に引きずり出し、皆には見えないようにまだ明かりは付けず仲間達に【念話】を飛ばす。
『この幹部の男を尋問しておくから、その間に地下牢のあったログハウスで死体を出して血を全てアレッサが吸い取っておいて。それから死体の持っている装備を全て剥いでから【聖炎】でログハウスごと死体を焼く。そこまでを任せたいけど頼める?』
『了解、了解。子供達に死体を焼いているのを見せる訳にも行かないからね。ログハウスの中じゃ見えないだろうし、そのログハウスごと焼けば問題ないでしょ。子供達だってよく分からないだろうし、説明する必要も無いわね』
『装備は貰っておくのよね? 大丈夫かしら、バレそうな気がするけど……』
『バレたって問題ないよ。死体を直に見てなきゃそこまで精神的に傷を負う事も無いでしょ。それ以上は私達の考えてやる事じゃないね。さ、始めるよ』
『『『了解』』』
イリュ達が動き始めたので、私は【生活魔法】の【灯り】を使用して辺りを照らす。やっと灯りが出来たからか、子供達は少し安堵したようだ。老人は私が魔法を使った事に驚いたが、私は気にせず幹部の男の顔を蹴る。
「ガッ!?」
「起きたか? 既にここにはお前以外の盗賊は居ない。仲間達が皆殺しにしたからな。それより何故お前を生かしたかだが、そこに居るノルトスが聞きたい事があるだろうと生かしただけだ。だから質問に答えるといい」
「ケッ! 何でオレ様がこんな奴に喋る必要がある! ふざけんじゃねえぞ!!」
「何故お前は私の所に来なかった? 何故妻は私に訴え出なかったのだ? 彼女はそんな大人しく去るような女性ではなかった筈だ。それが何故……」
「んなもん知るか! オレの方が聞きてえよ! 何でクソ親父をブチ殺さなかったのか、何で言われた通りに出て行ったんだってな! にも関わらずお袋は最後までオレには何も言わなかった。言わなかったんだよ!!」
「そうか……。彼女はどうしたのだ? 今は何処で何をしている?」
「オレがガキの頃に死んじまってもう居ねえよ! その後だ、オレが<ヴェノム>に入ったのはな。長い間に色々な悪事に手を染めて、やっと幹部になったからてめぇに復讐しようと思ったらこのザマだ! クソが!!」
「そうだったのか。……私が聞きたいのはそれだけなのだが、どうするのだね?」
「どうするって、殺すに決まってるでしょ。これまでに多くの犠牲者が居る。その犠牲者達が納得するとでも? ここまで散々好き勝手にやってきたんだろう、地獄に落ちろ」
「ケッ! てめぇらこそ地獄に落ちやがれ! 生まれも育ちも恵まれてやがる癖に偉そうに上から言いやがってよう。てめぇらのようなもんが居る以上、オレ達のようなのは無くならねえんだよ。<ヴェノム>はてめぇらのようなヤツが作り出す毒だからなぁ!!」
「言いたい事はそれだけみたいだな。ならば処刑を開始する」
私は幹部の男の言い分を完全に無視し、寝ている時にも着けていた男の装備を剥ぎ取ると、燃え始めているログハウスへと連れて行く。段々と外に炎が広がっていくログハウスを目にして男が尻込みを始めた。
「おいおい……てめぇ、まさか!」
「お前が予想した通りだろうが、あの中に放り込んでお前を焼き殺す。焼死は死亡原因の中でも相当に苦しい死だが、お前のような罪人には相応しい罰だろう? 出来るだけ醜く惨たらしく死ね。それがお前への罰だ」
「ふ、ふざけてんじゃねえぞ!! 何でオレがそんな目に遭わなきゃなんねえんだ!!!」
「言っているだろう、それがお前への罰だ。散々今まで罪を犯してきておいて、今さらヌルい罰で死ねると思っていたのか? 私は言った筈だぞ、地獄に落ちろとな」
「クソッ! ふざけ、うぶぇっ!? 何だコリャ? オレに何を、うぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?!!」
私は幹部の男にアイテムバッグに入れていた油を掛け、その後に右手だけで持ち上げて燃え盛るログハウスに投げ入れた。投げられただけなら脱出して助かる事もあるだろうが、油をたっぷり掛けられた以上は生き残れないだろう。良く燃えるし。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 熱い熱い熱い熱い熱い!! ギャァァァァァァァァァァ!!!!!」
幹部の男が外に転がってきたが、火が熱くて仕方ないらしい。私は燃えている幹部の男を掴むと、再び燃え盛るログハウスの中に放り込む。
「ギャァァァァァァァ!!?! アガッ!? 熱い熱い熱いーーー!!! アアァァァァァァァァァ!!?!?!」
もはや何をどうしていいか分からないのだろう。幹部の男は燃え盛るログハウスの中で転げ回り、やがて声も聞こえなくなった。生命反応も消えたので死んだらしい。
アレッサ達が近くで「良いのか?」っていう顔をしてるけど、それは姉妹や少年に対してだろう。もしかしたら老人に対しても含まれているのかもしれないが、仕方ないかと思い、私は口を開く事にした。
「グロッグ……何故お前は道を間違えたのだ。お前が私を憎んでいたのは構わん。だが妻が悲しむとは考えなかったのか? 私の事は怨んでも憎んでも構わん。せめて妻に顔向け出来ん生き様だけはしてほしくなかった」
どうやら私が口を開く意味はあまり無いようだけど、一応子供達には説明しておくか。




