0896・地下牢からの脱出
Side:ミク
銃火器メーカーの1つである<ファイアスター>の会長から魔法銃の話を聞き、カルティクがその発展系の危険性を予想した。私達にとってそこまで危険な物ではないが、更に世の中を混乱させる事は可能だろう。要人暗殺が捗りそうだし。
それはそうと、私はもう1つ聞いておきたい事を聞く事にした。それは連発銃の事だ。それも小銃での連発銃。
「もう1つ聞きたい事がある。それは小銃に連発銃が無い事なんだけど……正しくは装填数の多い小銃の事ね。何故か売られている小銃には単発銃しか無いって聞いてる。これは明らかにおかしい」
「おかしいとは何故じゃ?」
「薬室。つまり弾を入れる所にボルトアクションで押し出すんだけど、その手前、つまり弾を入れる所の下に空洞を作れば良いだけ。その空洞部分に予め弾を篭めておき、下からバネで競り上がるようにすれば5発から8発は先に装填しておける筈。こんな簡単な構造を誰も思いつかない何てあり得ない」
「………」
「やっぱり私の予想した通り民生品には無いだけで、軍関係は持ってるね? 小銃は拳銃に比べて命中率も安定していて威力も高い。軍にとっては装填数の多い小銃は民間には下ろせないって訳か」
「……ふぅ、すまんがワシから聞いたとは言わんでくれ。お主の言うた通りの構造の小銃は既にあるし、確かにお主の言う通り騎兵隊に配備されておる。しかし民間に下ろす事は出来ん。唯でさえ盗賊団がおるのだ。そいつらに使われれば大きな問題じゃからの。民生品には出来ん」
「それは仕方ないわね。確かに小銃の方が安定してるもの、かわりにリボルバーの方が扱いやすいんだけどね。でも小銃にリボルバーの機構を組み込まないの? アレなら6発は入るじゃない」
「イリュ、それは駄目なんだよ。リボルバーの構造を小銃に持って来ても、力が逸れて弾の威力が上がらない。ボルトアクション式が適しているのは、薬室を密閉する事で、全ての威力が弾を前に飛ばす事に使えているからなんだ」
「うむ。小銃にリボルバーの機構を組み込んで実験した事があるが、小銃の威力が低下した。その理由は弾薬が爆発した時に、その威力が分散された為じゃ。つまり弾頭に対しての推進力の低下。これの所為で威力がむしろ減ってしまったのだ」
「リボルバーは組み込めるけど、威力が減ってしまうから意味が無いって事ね。確かに威力が減るって思うと、わざわざリボルバーの機構を組み込んだりしないか。せっかく小銃を使ってるのに威力が減るんじゃ……」
「色々と研究はしておるんじゃがな、ワシは回転弾倉で限界なんじゃろうの。それ自体は別に構わんのだが、帰って真相だけは明らかにせんと気が済まん。たとえ結果的に家族が離れてもじゃ、騙されたままで納得など出来ん」
「まあ、それはあんたの人生だから好きにすればいいけどね。それはともかく夜まで長いわねえ。っと、アイテムバッグを出したままだと奪われるわ。回収しといて」
「ああ、了解」
私は再び一瞬でアイテムバッグを転送する。そもそも人間の認識できる速度じゃないので、目の前で起きている事が理解出来ないだろう。理解させる事も、その必要も無いから、このまま放置しておくし説明もしないんだけどね。
…
……
………
牢屋の中の汚い壺みたいなトイレしかないので、カレンとエリーが色々と恥ずかしい思いをしたけどそこは割愛。昼食や夕食も無いままに夜を迎えた。
私達は動き出す前に全員がアイテムバッグとアイテムポーチを出して身につける。カレンもエリーも少年も起きているけど、既にちょっと眠そうだ。とはいえ緊張や牢の中という事もあって眠れないのだろう。
私は鉄格子から離れるように皆に言い、アイテムポーチの中から長巻を取り出す。ちょっと使い難いものの鉄格子の右上の方に刃を置くと、そこから左へと真っ直ぐ振り抜く。
次に右下に刃を置いて左に振り抜き、振り始めの場所と振り終わりの場所から縦に切る。つまり鉄格子を四角に切り裂いた形だ。後は押してやれば鉄格子は四角く外れてアイテムポーチの中へと入った。
「おお………凄いが滅茶苦茶じゃのう、お主。とんでもないわ」
「うん、凄い」
「ま、とりあえずはコレで出られるんだけど、問題は寝ている連中なんだよね。皆で一斉に行くと起こすだけだから、私達が先行する。必ず後から来るようにね。特に余計な音で起きられると面倒だから」
「分かりました」
「分かった」
「うん」
「了解じゃ。ワシらも脱出に失敗したら困る。もし失敗すれば間違いなく、奴等はワシらを殺すじゃろうからの。そもそも人質は無理に生かす必要が無い。生きていると思わせられれば良いだけじゃ」
「良く分かってるわね。とはいえ私達が居る以上、そんな事にはならないけど。それじゃ行きましょうか」
そう言って3人が先行して先に進んで行く。特にイリュとカルティクの持つスキルは姉妹と老人と少年には見せられない。アレはこの惑星で使える者は居ないだろうし、言い訳が不可能だ。
特にカルティクの【闇影操作】は夜に極悪な威力を発揮する。あれは闇や影があれば幾らでも暗殺可能なスキルである以上、知られれば余計な恐怖がつきまとう。とてもじゃないけど、人間が耐えられるものじゃない。
恐怖から口を滑らせる、そんな事もよくある事の1つだ。しかし姉妹も少年も老人も立場がある。そんな立場の者が恐怖から口を開くと面倒な事にしかならない。だからこそ見せる訳にはいかないんだよね。
私は知覚しているが、上のログハウスに居る盗賊の生命反応が次々に消えている。3人が殺して回っているらしい。そして上のログハウスの生命反応が全て消えたので上へと上がる事にした。
「姉妹も老人も少年も待たせたね、上の掃除が終わったようだから上がろうか。ただし出来るだけ静かにする事。まだ1つ目のログハウスの盗賊が片付いただけで、残りの2つのログハウスの盗賊は残ってるから」
「ワシの名はノルトス・ガーフリーで、この子はアレン・ガーフリーじゃ。流石に老人とか少年とか言われても困るでな。名前で呼んでくれ」
「了解。とりあえず全員なるべく音を立てないようにね。相手は銃を持っている以上、慎重なぐらいでちょうど良い」
私はそう言うと、ゆっくりと上へと上がる為に進んで行く。こういう時は気が焦るものだから、動きが荒くなり音を立てやすくなる。だからこそ先頭の私がゆっくり動く事で、意図的に後ろの者の動きを遅くさせる。
そうしないと子供に理屈を説明しても実践できないだろうしね。私はゆっくりと上へと進み、隠し階段から脱出した。ログハウスの中に出てくると、多少の血の臭いはするものの思っている以上に少ない。おそらくアレッサが殆どを吸収したんだろう。
その事は横に置いておくとして、私はゆっくりと動く事を再度言いつつログハウスの入り口近くまで移動する。
「大きな声を出さないようにね。まだ他のログハウスの中には生きている盗賊が残っている。皆は出来るだけ音を出さずに暗殺しているけど、盗賊を起こさないようにする為に時間が掛かる。今はここで座って落ち着こう。焦っても仕方ない」
「そうじゃの。ここまで上がって来れたんじゃ、十分過ぎるであろう。あれだけの数の盗賊が居ったのだから、簡単には終わるまい」
姉妹と少年は無言でノノを撫でる事で緊張を緩和させようとしてる。まあ、音を出さないなら何でも良いけど、緊張し過ぎもあまり良くないし……でも音を出す訳にもいかないしね。困ったものだけど、盗賊が全滅するまでは我慢してもらおう。




