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0890・東ガウトレア第1西町




 Side:アレッサ



 東ガウトレア第1西町にやってきたけど、ミクは意図的に悪人の掃除を行っていない。その理由は、姉妹を狙った者達を動かす為。姉妹が生きてこの町に来たとなれば、同じ組織の奴等は必ず動くでしょ。それを狙ってる。


 レティーが居ないので、こういう方法を使わないと敵が分からないのよ。わたし達なら狙われたところで余裕で対処できる。当然それもあって意図的に危険な状態というか、囮になるような事をしているってわけ。


 町に着いたわたし達は真っ直ぐに宿へと向かい、4人部屋を1つとる。最初こそ4人部屋しか空いていなかったけど、防犯の観点から4人部屋に6人で泊まって護衛をする事にした。姉妹も部屋にわたし達が居る方が安心できるらしい。



 「私とエリーでは賊が襲ってきたら何も出来ません。皆さんと同じ部屋の方が安心ですし、わざわざ2人だけの部屋を追加でとらなくてもいいですよ」


 「うん。私もノノが一緒の部屋がいい」


 「分かるんだけど、抱き締めて寝ようとするのは流石に止めなさい。ノノも迷惑してたからね」


 「ニャー」



 そう。あろう事かノノを抱きしめながら寝るとかいう暴挙をやってくれたのよ、この子。ミクが快眠の香りを使って寝かせてから本体空間に戻るのを経由して自由になってたけど、普通に猫と考えても抱き締めて寝ちゃ駄目でしょ。潰れてしまうかもしれないんだしね。


 それ以来ノノが微妙にエリーから離れる行動をしているので、流石にエリーもやっちゃいけない事だと分かったみたいで良かったわ。まあ、抱き上げられるのも面倒なノノは、未だにエリーに近付こうとしないけどね。夜は。


 昼間は歩いているから抱き上げる事も出来ないしで、エリーがノノと触れ合えるのは朝と夕食までぐらいだったのよ。もう少し続けて反省が続いたら戻すらしいけどね。子供が泣き叫んでも面倒だから。


 宿の部屋でゆっくりと休憩してるけど、今はマッサージの最中だからノノはイリュが抱き上げているわね。特にどうこうも無く、イリュもボーッとしている感じかしら。そう見えるだけで、実際にはスキルを使って調べてるんでしょうけども。


 私は悪人かどうかとか、嘘を吐いているかどうかしか分からないから、それ以外はミク達に任せるしかないのよ。まあ、嘘は分かるから尋問とか拷問なら役に立つと思うんだけど、そんな事をする機会は姉妹が居る間は無いでしょうね。


 マッサージが終わったミクが椅子に腰掛けて休み始めたわ。権能を使い終わったって事は回復したんでしょうけど、ここ最近のマッサージで体力は随分ついた筈よ。何たって回復しては疲労し、回復しては疲労を繰り返しているもの。


 筋肉だって酷使して回復し、酷使して回復する事で強くなっていく。姉妹の体も権能を使う事で高速に強化が繰り返されているの。正直に言って、このまま徒歩の方が本人達の為になるのよね。乗合馬車に乗るかは悩ましいところなの、困った事に。



 「さて、休めただろうし、そろそろ夕食に行こうか。それなりの時間になってるし、あまり2人の顔を見せて歩かない方が良いからね」



 そう言われると返す言葉が無い2人は、いつも通りの少々早めの夕食の為に部屋を出る。わたし達が周りを護衛しているから、特に見られるという事も少ないでしょうけど、それでも町中には人が居て歩いている。


 誘拐組織か、それに関わりのある連中に見られるかもしれない。……実際には見られる事を期待しているんだけど、それは姉妹には言えない事だからね。態度に表す訳にもいかないから、わたしも気をつけてるんだけど、子供は聡いからなぁ……。


 バレてはいないと思うけど、なるべく態度と言動には気を付けないとね。貴女達を囮にしている、とは絶対に言えないし説明できない。


 食堂に入ったわたし達は適当に注文して運ばれてくるのを待つ。最近イリュがお酒を注文するようになったけど、強いからか問題視されていないのよ。本当に強いらしく、問題の無い量しか飲んでいないみたい。あくまでも本人が言っているだけなんだけどね。


 最悪は【聖潔】か【聖清】の魔法でアルコールを消せるから問題ないらしいけど、前にミクにやられて凹んでたわ。飲む度にミクが【聖清】を掛けるもんだから、全く酔えないらしいのよ。それで怒ってたの。


 イリュいわく、酔いもできないお酒なんて飲む価値が無いそうよ。どれだけ飲んでも正気に戻されるっていうんじゃ、ある意味で拷問よねえ。ミクは元々酔えないらしいけど、酔うという事そのものを知らないから問題は無い。でも、知ってる者からするとねえ……。


 何の為に飲むのかっていう気持ちはよく分かるわ。それってお酒の意味が欠片も無いわよね。水でも飲んでた方がマシよ。



 「ワインを飲んでいるにも関わらず魔法を使ってくるのもどうかと思うけどね。それより、この町では2泊しないの? 銃火器の店へと行くんでしょ?」


 「この町じゃなくてもいいし、今すぐ欲しいって訳でもないからね。中央ガウトレアの第1東町へと行くのは確定してるからさ、そっちでも良いんじゃない? って思ってる」


 「まあ、そこまで行くのは確定してるだろうし、お………」



 今、明らかにこちらに悪意を飛ばしてきたヤツが居る。それも食堂に入ってきたヤツだ。私は見れないけど、3人は既に確認している筈。顔を向けるとバレるから向けられないけど、後で聞いておくか。



 「礼の意味も篭めて行かなきゃいけないでしょ。私達だってタダ働きする気は無いんだし」



 ちょっとイリュは不自然だったわね。流石に何か変だって事に姉妹も気がついた。


 仲間か指示していた連中かは知らないけど、こちらに悪意を向けていたのは事実だし、何よりまだ夕食には少し早い時間だもの。こちらの席には、わたし達しか居ない。なので悪意はわたし達に向けられたもので確定している。


 こうもハッキリと向けられるとは思っていなかったけど、思っているよりは早い登場かしら? 森に居たからね、あいつら。だから見つかるまでは時間が掛かると思ってたんだけど、想定が甘かったわねえ。


 それとも、あの森から動かす予定でもあったのかもしれない。一時的に見つからないようにする為に森に連れて行っただけで、あそこにずっと置いておく気は無かった。そう考えると早く見つかったのも分からなくは無い。



 「それよりも、そろそろ客が沢山入ってくる時間だし、早めに食べ終わって宿に戻りましょうか。騒がしいと落ち着いて食事も出来ないし」


 「そうね。そうしましょうか」



 そんな白々しいセリフを吐きつつ、わたし達は食事を終えて食堂を出る。悪意を向けてくる奴は店を出るのに合わせてついてきた。後ろを尾行してきているけど、わたし達は気にせず宿へと戻る。むしろ泊まっている場所を教えるように。


 宿の部屋に戻ってきてすぐ、カレンが口を開いて聞いてきた。



 「皆さんの態度が急におかしくなりましたが、何かあったのですか?」


 「こっちに悪意を向けてくるのが居た。さっきの食堂で食事をしている最中に入ってきた男。そいつが私達に悪意を向けてきたってわけ。それで私の喋り方がちょっとおかしくなったのよ」


 「悪意を向けてくるって事は貴女達の誘拐に絡んでいる連中か、それともその黒幕かよ。可能性的には黒幕は薄いと思ってる。そういう連中は軽々に動いたりしないからね」



 おそらくは違うと思うんだけど、世の中には例外っていう連中が居るからなー。驚くほど短絡的な事をしたりする奴等が居る以上、黒幕が動いている可能性そのものはあるのよねえ。


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