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0889・国について




 Side:ミク



 今、私達は道の端で休憩をしている。流石に長時間歩き続けるのは13歳と10歳には厳しいので、適度に休憩を挟みつつ進んで行くしかない。ふくらはぎや太腿をマッサージして回復させているけど、2人は文句も言わずに受け入れている。



 「すみません。皆さんは疲れていないようなのに、私達の所為で遅れてしまって……」


 「別に気にしなくても良いわよ。文句も言わずに黙々と歩いてるだけマシでしょ。我儘放題で「歩けない」とか泣き言を言われ続けるより遥かに良いわ。それに歩き慣れていないなら体力も無いだろうしね。ミクがマッサージしてくれたから、多少は回復するでしょう」


 「とにかく歩いていればその内に慣れるでしょうし、今は歩く事を続ける事が大事よ。それはそうと、貴女達の家が侯爵家って事は国があるのよね? その割には国の名前を全く聞かないんだけど、どういう事か分かる?」


 「ウェルキスカ王国というのが国名ですが、ご存じなかったのですね。我が国は中央ガウトレアと東ガウトレアを持つ国でして、それなりに大きな国土を持っています。北にアロトム王国があり、こちらは北ガウトレアとマルアエイ地方を持っている国です」


 「西にはね、西ガウトレアと南ガウトレアとアッテールク地方を持ってるダスガンド帝国があるよ。この国はウェルキスカを狙ってるんだって。それと東にヨッテルフィ地方を持ってるメヌシール王国があるよ」


 「そうだったのね。普通はナントカ国のナントカ地方という言い方をするのに、何故か地方名が付いている町なんだもの。その割には貴族家があるし、いったいどういう事なのかと不思議になってくるわよ? 普通は」


 「そうなのですか? かつてこの辺りはオルドミラ大帝国だったからだと思います。随分と古い話になるそうですが、この大陸には大帝国のような国があったそうですから、それで地方名の方が先に来るのでしょう。私達にとっては普通なのですが……」


 「まあ、この辺りの人にとっては普通なんでしょうね。かつては同じ大帝国の地方だった訳だもの。今は違うと言っても、古い時代の大帝国とやらは大きな意味を持つのでしょう」


 「そうですね。過去に大帝国と同じく大陸を統一しようとした国が幾つもあったとされています。何処の国も成功した事は無いので、大帝国だけが成し得たと言われていますが………ダスガンド帝国は諦めていないと父上は言っていました」


 「昔に成した国とかがあると、どうしてもその栄光を自分も……なーんて思うヤツが出てくるんでしょうね。そんな夢を見ても意味は無いんだけど、何故かそういう夢を見ているヤツほど理解しないのよ」


 「現実が理解出来るなら夢を見たりしないわよ。それにしても大帝国の夢を諦めていないなら、このウェルキスカ王国を本気で狙ってそうね?」


 「そうですね。西の方では小競り合いが多いそうです。国の騎兵団がその度に出陣するので、国庫の負担が大きいと父上も嘆かれておられました」


 「ああ、成る程。帝国が豊かかどうかは知らないけど、その辺りも狙ってそうね。王国が強いなら持久戦を仕掛けてきていると考えるべきかな? 小競り合いでも多いと負担は大きくなるし、続けられるとキツいわよねえ」


 「小規模であっても小競り合いでも戦争は戦争。そして戦争にはかなりのコストが掛かるわ。帝国が上手くコストを抑えてるなら、コストが余計に掛かる王国側は厳しいでしょうね。もしかしたら新兵器とかも作ってたりして」


 「それもあるだろうけど、王国に手を入れてくる事もしてるんじゃない? 姉妹が誘拐されたのも裏で帝国が絡んでるとかさ。王国内に混乱を起こしたりしてきているのかもね。あくまでも勝手な予想でしかないけど」


 「私達が襲われたのも、もしかしたら帝国が……ですか。分かりませんが、そういう事もあるのですね」


 「あくまでも可能性の話だけどね。帝国というのが諦めていないなら、敵国内を引っ掻き回すぐらいはするんじゃないかって事よ。あくまでも帝国のヤツが王国内の盗賊を金で雇ってやらせているのかもしれないし?」


 「そうなると足は付き難そうね。どうせ適当な偽名を名乗ったりして、帝国の者だと分からなくしていたり、もしくは王国の者を雇ってやらせているかも。部下の部下の部下の部下がやっていたりしたら、大元まで辿れない可能性が高いわ」


 「………そんな事まで考えなければいけないのですね。国同士の事とはいえ大変です。父上と兄上は大丈夫でしょうか?」


 「私達は国とか貴族に関わりたくないから、そういう事は分からないけどね。まあ、大変なんじゃない? 西に狙ってきている国がある以上はさ」


 「そうだね。さて、そろそろ話を止めて先に進もうか。大分回復したみたいだしね」



 私はアイテムバッグから椅子を取り出して座らせていたのだが、その姉妹に話しかけて椅子から立ち上がらせる。折り畳み式の椅子を畳んでからアイテムバッグに仕舞うと、私達は再び西への道を歩いていく。


 第一南町から北への道を進むと東ガウトレア中央町に行けるのだが、私達は西へと進むのを優先したので中央町には進まなかった。元々中央町に行くと西へは進み難いので、第1南町から西へと行くのが中央ガウトレアへ行く正規ルートになる。


 東ガウトレア中央町から西には森と山があり、ある程度迂回しないと進めない。それと森と山に生息する凶暴なモンスターが出やすく近付くのは危険である為、基本的に中央ガウトレアに進む場合は第1南町から西へと行く進路をとる。


 だから姉妹を捕まえていた盗賊団と私達の進路が合うのは、普通の事であり珍しい事じゃない。地理的には普通の事なんだし、ある意味では必然の結果とも言える。ま、姉妹にとっては幸運な必然だったという事だ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:イリュディナ



 なんだかんだと言って姉妹は良く歩いたわね。村を出発してから3日。ようやく東ガウトレア第1西町に辿り着いたわ。村を経由するから町まで遠かったけど、中央町から西に行くのが簡単なら苦労もしなくて済んだのにね。


 私達だけなら関係なく森や山の近くを通っても良かったんだけど、姉妹が居るからなるべく楽な道を通って進むしかない。私達もおかしな事をする訳にもいかないし、怪しい行動をとる訳にもいかないから、普通の人と同じ道で進むしかないんだけどさ。


 それでも中央町から西の方が距離的には短いのよ、町から町の距離が。第1南町から第1西町まで斜めに移動しなきゃいけない所為で、無駄に距離を歩く羽目になったのよ。ここからは乗合馬車に乗れるし多少は違う筈。



 「ようやく町だし、2人の顔も心なしか明るいわね。今までずっと徒歩だったけど、乗合馬車ぐらいはあるでしょう」


 「ええ。とはいえ多少は歩けるようになってきていたので、歩くのも悪くはないと思いますが……。それでも楽な方が良いですね」


 「もう疲れたから歩きたくない。それでも歩かなきゃ帰れないなら歩くけど……」


 「エリーは10歳だから仕方ないとは思うけど、それでも歩かなきゃいけないかもしれないから、そこは気をつけるようにね。あんまり言いたくないけど、2人を狙ってるのが来るかもしれないし」


 「「………」」



 ここ3日は襲われる事も無く歩いていただけなんだけど、2人は実際に狙われているのよ。それを忘れてもらっては困るからね。ちょっと意地が悪いかもしれないけど、思い出してもらったわ。


 町はどんなヤツが居るかも分からないし、緊張感は持っておいてもらわないと困るのよね。それと、ミクは意図的に町の掃除を行ってない。それはつまり、町には普通に悪人が居るという事。


 気を付けないとね。


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