0886・姉妹との話と村への移動
Side:ミク
私が死体を【聖炎】で燃やしていると、助けた姉妹が驚いていた。相変わらずだけど、この星の奴等は何故か魔法が使える程度で驚くんだよね。庶民には縁遠いものだから驚くんだろうけど、何故貴族の姉妹まで驚くのやら?。
「私が使った【聖炎】がそんなに珍しい? 誰も彼も魔法を使うと驚くんだけど、貴族の護衛とかは魔法が使えるって聞くんだけどね。何でカレルフィアやエリデシアが驚くのかが分からない。見慣れてるんじゃないの?」
「私の事はカレン、妹の事はエリーと呼んで下さい。それよりも魔法ですが、父の護衛などには使える者も居ますけど、私達の護衛などでは使える者は居ません。そもそも魔法が使える人は希少なんです。吸血鬼やダンピール、更には魔族なら今も使えるそうですが……」
「解体所に行ったら、魔法で綺麗にしてたの。いきなり綺麗になったから、ビックリした」
「ああ、【清潔】の魔法かな? それぐらいは普通に使えると思うけども、不死者や魔族なら使えるんだけど人間には少ないのか。流石にそこまでは知らなかったな。私達は普通に使えるし」
「そうね。でも魔法を使える者が何故怖れられたりしているのかしら? 魔法が使える者は珍しい……までは分かるんだけど、何故怖がられるのかは分からないわ」
「魔法が使える人って、いきなり襲ってくるかもしれないから怖いって聞いた事がある。銃は取り出さなきゃいけないけど、魔法はいきなり使えるって」
「ああ、そういう事か。でも1人殺すのにもそれなりの魔法を使わなきゃいけないし、銃の方が手っ取り早いんじゃないの? それでも恐れるって事は何がしかの理由がありそうね?」
「もしかしたらだけど、自分達が使えないから怖れてるんじゃない? 自分達に無いものを持ってるってだけで怖がるからさ。恐怖っていうのは大凡そんなものだし」
「まあねえ。それよりもこいつらの持っていた物を仕舞って、さっさと森を出ましょうよ。魔物が来ても面倒だし、死体の処理も終わったんだからね」
その後に残しておいた男を尋問したものの、この姉妹を襲った組織の名前は知らなかった。正しくは金を受け取っただけで、組織の名前は向こうが名乗らなかったらしい。
それに、かなりの腕前の者が居たらしく、怖くて聞けなかったそうだ。結局聞いても意味が無かったので始末し、死体を焼いたら出発する事にした。
私は素早くアイテムバッグに物やお金を入れると、すぐに殿の位置に着く。一番前はアレッサで次にイリュ、その後ろに姉妹が来てカルティクという形だ。後ろからに関しては私が居るので問題無い。
前はアレッサだけど、ウォーアックスを出せば魔物でも簡単に対処できる。この星では銃火器で魔物を倒すんだろうけど、あれじゃ仕留めるまでに時間が掛かり過ぎる。正直に言って近接武器の方が楽なんだけど、この星は銃が当たり前だからね。ヘタレが多い。
森の中を歩いていき、外へと出た段階で姉妹は疲れていた。特に妹の方が疲れているのでノノを放すように言う。無駄に重い荷物を持っているんだから疲れるのは当たり前の話だしね。
「ううー………」
かなり渋々といった様子でノノを放すエリー。何がそこまで気に入ったのか知らないけど、ノノはようやく放されたので自由に動き回る。もちろんアレッサやイリュからも距離をとり、いちいち抱き上げるなと言わんばかりの態度をとる。
2人も今は姉妹を連れて歩く必要があるのを分かっているので、特にノノには何もせず村の方へと歩いていく。姉妹はそれなりに疲れているのだろうが、それでも急ぐように村へと移動を開始する。
「早めに村に着かないと村で休む事も出来ないからね。2人が頑張れば頑張るほど、後で楽になるよ。その分だけ休める時間も増えるからね」
「遅いと食事して宿に行ってとウロウロする必要があるからね。疲れてるところに更に追加する必要が出てくるし、それは大変だろうから急ごうか」
姉妹も村に着いてすぐに休めると思っていたのだろうが、食事の時間が重なるとそうも言っていられないと分かったのか、頑張って歩く事にしたようだ。正直に言って疲れ程度なら生命の神の権能で回復できるんだけどね。それは黙っておきたい事だ。
村に着いたらマッサージしながら権能を使えば誤魔化せるかな? とりあえず姉妹をなるべく歩かせないといけないからね。ちょっとしたズルくらいは良いだろう。誰も損しないし。
…
……
………
「やっと着いた……。疲れたよ、お姉ちゃん」
「本当ね。歩くってこんなに大変だったかな?」
「普段歩かないから、あの程度の距離で疲れたとか言わなきゃいけなくなるのよ。それが嫌なら普段から歩いて体力つけなさい。今回の事もそうだけど、最後に自分を助けてくれるのは体力よ? 逃げるだけの体力が無いと死ぬわ」
「そうそう。それは誰しもが変わらない事なの。疲れて動けませんじゃ、死ぬしかなくなる。それから助かる為には体力をつけて逃げ切れるようにするしかないの。簡単な事ね」
「13歳とか10歳とか、相手はそんな事をこれっぽっちも考えてくれないのよ。そうなった時に体力をつけておけば良かったと思っても遅いの」
姉妹も思うところがあるからか神妙な顔をして聞いてるね。ま、とりあえずは村の宿屋で部屋をとるかな。そう思って宿に行ったら、4人部屋が1つしか空いていなかった。仕方なくその部屋をとり、私達は部屋で休憩する。
「それにしてもギリギリだったわね。まさか4人部屋1つしか空いてないって、商人でも来たのかしら? それならこの部屋しか空いてないのも分かるんだけど」
「この村は通過していくだけの村だものね。そこまで宿に泊まる者も多くないでしょうし、単にタイミングの問題じゃない? それでも4人部屋がとれただけマシよ。野宿にならなくて済んだじゃない」
「私達だけなら何の問題も無いけど、姉妹を連れての野宿は出来れば避けたいわね。身を守る術を持たないから危険よ」
「私も生き残れるとは思ってもいません。正直に言って、森の中でもいつモンスターが出てくるかと気が気ではありませんでしたし……」
「私は盗賊が怖かった。あの人達いきなり銃を撃ったりするんだもん。他の人に怒られてたけど」
「そりゃそうでしょ。自分達がここに居るって知らせるようなものなんだから、他の盗賊達からすれば怒る事でしかないわ。まあ、それが無くてもミクが気付いてるから意味は無かったけどね」
「そろそろ夕食かな? 出来れば早めに済ませておきたいから行こうか。混雑している中で食事をするのも嫌だし」
「そうね、そうしましょうか。早めに食べれば後でゆっくり出来るし」
姉妹もある程度は体力が回復したからか、ベッドに腰掛けていたが立ち上がり、皆で一緒に食堂へと移動する。
中に入ったらメニューを持って来てもらい、好きに注文していく。姉妹は予想に反して普通に食べるようだ。食べる量を少なくして痩せているのが美しい貴族女性、という妙な美意識は無いらしい。
とはいえ子供の頃からきちんと食べていなければ、カレンのような体になったりはしないだろう。13歳で大人びた肉体をしているのだから、それだけ食べてきた筈であり、今も美味しそうに食事をしている。
どうやら村の食事にも慣れているようだ。元々東ガウトレアを見て回っていたと言ってたから、その時にも村での食事なんかはあったんだろうね。いちいち文句を言われても面倒だったから、これは嬉しい誤算というヤツだ。
私達が食事をしていると、徐々に客も入って来たので客が増える時間が来たようだね。早めに来て正解だったよ。これからの混雑に巻き込まれたくはなかったし、早めに食事を終わらせて戻ろうかな。
姉妹が追加で注文しそうな気もするけど。
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