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0085・久しぶりの第2エリア




 気を取り直したカルティクは、ミクの槍を見つつ色々と考える。自分ならばどういう槍が良いのか、どのような太さが自分に合うのか。そういった事を考えていると、ミクが質問をする。



 「そもそもカルティクは長物なんて使おうとしてなかったのに、何故急に槍を使おうと思ったの?」


 「私は短剣が得意だし、【気配隠蔽】で気配を消してからの急所突きの所為で<影刃>と呼ばれたりしてるの。だけど、そもそも戦いにおいてはリーチが長い方が有利だし、杖のように使えば歩くのに便利じゃない?」


 「うーん……なら石突は丸い玉のようなヤツが良いね。私は地面に突き刺す事も考えての剣状の物だけど、殴りつける為に玉状の石突の物もあるし、それなら歩く時に杖のようにも使えるよ」


 「いやいや、槍を杖のように使うっていいのかい? 槍は武器だよ? そんな雑に使っていいもんじゃないだろうに」


 「??? ……シャルは何か勘違いしてるようだけど、武器って道具だよ。敵を殺す道具。どこまでいっても道具でしかない以上は、どう使うかは本人次第でしかない。歩く際に杖のように使ってもいいし、戦闘にしか使わないならそれでもいいと思う。持ち主の好きに使っていい物だよ、道具は」


 「そんなもんかねえ……。あたしは口を酸っぱくして、大事に使え、無駄に使うなと教えてきたんだけど、それは間違ってないと今でも思ってる」


 「それはそれで良いんじゃない? 軍なら無駄に抜くなとか、ちゃんと整備しろと教えるのは当たり前だと思うよ。国のお金で買い与えられてるんだし。でも探索者は自分のお金で買うからね。なら自分で決めていいでしょ」


 「ああ、立場の違いか。……そうだね、今までとは立場が違うんだ。あたしも考え方を変えていかないといけないね。いつまでも将軍の考え方をしていてもしょうがない」


 「とりあえず要望は受けたから、今本体が作ってる。とはいえ時間は掛かるから、渡すのは夕方か明日の朝ね。それじゃ、私はそろそろ行くよ。第2エリアか第3エリアに」


 「あ、ちょっと待って。ここ最近、第2エリアに怪しい奴等が増えたらしいから、行くなら第2エリアにしてくれない? 出現する魔物が魔物だから、ミクは変身し辛いだろうけど」


 「そういえば第2エリアって、牛系とか鳥系にウサギやネズミしかいないんだっけ? それだと確かに食べ難いね。第3エリアだとゴブリンになり済ませるんだけど……」


 「誰かさんがそれをし過ぎた所為で、河岸を変えたみたいなのよね。とはいえ犯罪者どもが第4エリアで戦える訳も無し。結果として第2エリアに増えたのよ」


 「成る程ね。まあ、分かった。とりあえず第2エリアをウロウロしてみる」



 そう言ってミクは宿を出発。一路ダンジョンへと向かう。シャルも探索者登録をした後で、初心者エリアから始めるだろう。


 シャルの肉体では普通に食事と睡眠が必要だ。なので人間種と同じ感覚で使える肉体となっている。そもそもミクには分からない感覚なのでアレだが、ワイバーンも人間種と同じく普通に食事をして睡眠もとる生き物だ。


 それ故にシャルには扱いやすいだろう、などとミクは本気で思っていたりする。シャル本人が聞けば「同じ訳がないだろう!」と怒りそうだが、人間種の感覚を知らないミクからすればこんなものだ。


 第2エリアへの魔法陣に乗り、ミクは荒地ダンジョンへと移動する。中に入ると、すぐにウロウロしつつ犯罪者を探していく。


 久しぶりに20キロ四方のダンジョンに居るので、感覚が少しズレているらしく修正しながらだが。



 『少し前まで5キロ四方のダンジョンに居たから、どうしても感覚がズレるね。すぐに修正できるだろうけど、変な気分だよ。もう忘れてるっていうか、ズレるなんてさ』


 『仕方がないのではありませんか? いきなり変わっているようなものですし、簡単なものに感覚を合わせていた訳ですから』


 『そうだ、おっと……アレ、怪しいね?』


 『確かに怪しいですね。何故コソコソとしているのでしょうか? ここは荒地ですから丸見えなのに、そのうえコソコソしていたら怪しさ満点ですけどね?』


 『とりあえず近付いて声でも掛けてみようか? そこでどういった反応をするかだね、その後が決まるのは』



 レティーと話しつつ、何故かコソコソとしている集団に近付いていくミク。すると、突然向こうが声を掛けてきた。



 「そこの女、いったい何の用だ! オレ達にそれ以上近付くと犯罪者だと見做すぞ! 止まれ!!」


 「何を慌ててるの? 妙に怪しいうえにコソコソしてるみたいだけど。もしかしてお前達、犯罪とかしてないよねえ?」


 「は? オレ達が犯罪なんて「助けて!!」する訳な、クソッ! 黙らせろ!!」


 「助けてって声が聞こえたね? 助けてと言われた以上、助けないとなー」


 『完全に棒読みですし、襲う気マンマンですよ? もう少し隠しませんか?』


 「クソが! 相手は女一人だ、さっさと殺すぞ!!」


 「「「「「「おうっ!」」」」」」



 そう言って男達はミクに襲い掛かってきたが、ミクがウォーハンマーとバルディッシュを取り出して両手に持つと、急に立ち止まって焦り始めた。



 「なんだよ、アレ! なんであんな重量級の武器を両手に持って平然としてんだ!? あいつ絶対に手を出しちゃいけないヤツなんじゃねえのか!!」


 「バカか!! 今さら後に退けるわけねえだろ! 攻めろ! 殺せ! オレ達が生「ドゴォン!!」き残……」


 「さっさと掛かってこい、ゴミども。お前達はここで皆殺しになるしかないんだよ。向かって来ないなら、こっちから行くぞ?」



 地面を叩き付けて男達を怯えさせた後、ミクは一気に飛び出して蹂躙していく。ウォーハンマーの一撃で頭どころか胸まで潰し、バルディッシュの一撃で頭頂から股間まで真っ二つにする。


 まさに化け物の如き暴れっぷりで、3分待たずに男達は皆殺しにされた。流石としか言いようがない蹂躙劇である。


 全ての男達を殺した後、荒地に所々ある小山の裏に連れて行かれていた女性達を確認すると、どうやら犯される寸前だったらしく、ギリギリで助けられたようだ。



 「大丈夫? ヤられる前に助けられたみたいだけど、心の傷は思ったより深くなりがちだから、一ヶ月は気をつけるようにね」


 「あ、あの! ありがとうございます! 酷い目には遭ってないので大丈夫ですが、その、私達あまりお金なくて……」


 「いいよ、いいよ。こいつらの持ってる物を貰ってくから、貴女達は気にしなくていいって。それより、元気ならちゃんと狩りをして帰った方がいいよ。お金稼がないと困るんでしょ?」


 「あの、本当に良いんですか? お金を支払わなくても……」


 「大丈夫だよ。そもそも私が本来行くのは第5エリアだし、今日第2エリアに来たのは、最近犯罪者が多いらしいから見回りに来ただけだから。で、早速助けられたってわけ」


 「そうだったんですね、おかげで助かりました。本当に、ありがとうございます!!」


 「「「「ありがとうございます!!」」」」



 ミクに感謝を言ってから、女性5人チームは狩りをする為に移動していった。ミクはそれを見送った後、死体を漁って武器をアイテムバッグに入れていく。


 その後、死体を移動させて小山の後ろに隠し、焼き払うフリをする為に【聖炎】を使う。遠くから見れば死体を燃やしているように見えるだろう。実際には喰らっていて、もう無いのだが。


 第2エリアは死体を喰うのも厄介だと、ミクは嘆息しつつ周囲を確認している。たとえ特殊なスキルを持っていても、認識出来ない速度で喰ってしまえば見つかる事はない。


 ミクはその速さで喰らった為、誰かに見られていてもバレる事はないのだ。死体処理の魔法である【聖炎】での誤魔化しも終わったので、ミクは歩き出す。次の獲物を求めて。


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