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0884・東ガウトレア第1南町




 Side:カルティク



 私達は泊まった村から出発し、更に北へと進んで行く。ミクとファーダとノノがかなりの範囲の村を善人化したとの事で、今日は走って進む事が出来るみたい。やれやれ、昨日みたいに暇になる事は無さそうで何よりよ。


 善人化でお疲れなミク達には悪いけど、私達としては善人化に関係なく素早く進みたいわね。まあ、悪人を無視する訳にもいかないから当然なんだけど、全ての悪人を丁寧に潰していけって訳でもないみたいなのよね。ミクはなるべく潰しているけどさ。


 おそらく神様的には一定程度の悪人が潰されればそれで良いんでしょう。とはいえ、その一定の数が桁違いに多いからミクは地道に善人化している訳だけども、それでも簡単に終わらないのが恐ろしいところね。どれだけ悪人が蔓延はびこっているのかしら。


 そう思いながらも、今日は街道を走って進む。周囲からちょこちょこ見られてはいるものの、特におかしな視線は無い。女性に対するアレな視線も、悪意の篭もった視線も無いわね。やっぱり既に善人化されているからかしら?。


 それでも普通の奴等は居ると思うんだけど、私達と同じように移動している奴には元悪人が多いって事の証拠のような気もする。そうでなければ女性に対する下卑げびた視線ぐらいはある筈だものね、普通は。


 それなりに早く進んで来た私達は、お昼前には東ガウトレア第1南町へと辿り着いた。ミクからの情報では東ガウトレア第2南町と然して違いは無いみたい。こっちの方が少し都会に近いっていうのと、男爵が住んでいるっていうだけね。


 私達は町中に入り、そのまま食堂へと直行する。この星の良い所は村や町に入るのに税が掛からないところね。ミクに言わせれば当たり前らしいし、入る度に税が掛かるんじゃ、それだけ色々な物が値上がりするって言われたわ。


 商人だって休みに立ち寄るんだし、そこでお金を取られていたら運ぶだけで値段が吊り上がっていく。だから最後には税を無くして値段を下げる方向に行くんだって。



 「そもそも物の売値が高いのは、大抵の場合において輸送コストが高いからだよ。商人だって高値にしたくなくても、輸送にお金が掛かり過ぎてせざるを得ない事が多い。その中の1つが村や町の税だね」


 「税を取れて潤うかもしれないけど、その皺寄せは食べ物とかに回ってくるって訳ね。結果的に高くなるんだから、最初から税を取って儲けようとしなければいいって事か。ただ、こういうのは一斉にやらないと不満を持たれるでしょうけど」


 「不満を持つのは分かるけど、むしろ多くの商人に必要な物を売った方が儲かるのにね。商人も使いやすい村や町だと思えば止まってくれるだろうし、結果的に物が売れて得をする。そういう形が望ましいんだけど……アルデムでは難しいわね」



 町中や食堂の中でするような話じゃないけど、周りで聞いてる人なんて居ないから気にする必要は無いか。それよりも、今日はここで泊まる気は無いみたい。だから昼食を終えたら西へと移動を開始するんだって。


 今日1日でどこまで行けるか分からないけど、行ける所までは行きましょうか。村か何処かに泊まれば済むでしょ。


 東ガウトレア第1南町を出た私達は、一路都会があるという西へと移動して行く。そちらにも既にファーダが先行しているので、特に道中の懸念は無い。強いて言えば盗賊団が居る可能性はあるとの事なので、気合い入れて探しましょうか。


 …

 ……

 ………


 東ガウトレア第1南町を西に進み、村を2つ越えた先の森に大人数を発見したとミクが言い出した。そして私とイリュが空間と闇影で調べると、あからさまに悪党のような連中がたむろしているのが分かった。


 しかし拠点となるような場所は無いのに、何故大人数の荒くれというか悪党のような連中が森の中に集まっているのかしら? どう考えても……って、あれ? 中心に居るのは女性と少女ね。


 森の中の開けた場所に居るけど、これってもしかして……。



 「イリュ、女性と少女が見えてる?」


 「ええ、見えてるわ。十中八九、人質か何かでしょうね。着ている物がドレスである以上は、貴族の奥方と娘ってところかしら。……問題は私達が助けてもいいのか困るところね。近くに軍の気配は無し、か」


 「それならわたし達が助けなきゃいけなくない? このままでも殺される心配は無いでしょうけど、何をされるか分からないわよ? 余計なのに関わって面倒という可能性はあるけどさ」


 「少なくとも貴族っぽい女性と娘は普通だから、助けてもおかしな事にはならない可能性が高いとは思う。普通の中でも善人寄りだし」


 「そう。それなら助けましょうか。盗賊の中心に居るのが厄介だし、こいつら結構色々な武器を持ってるわね。調子に乗ると怪我する恐れが高いわ。それに私達の力を見せたくは無いのよねえ」


 「なら、私が前で盾を構えるよ。それなら問題なく防げるだろうしね。片手で銃を扱うにも限度があるから、右手はいつも通りのウォーハンマーでいけば十分でしょ」


 「私達はミクの後ろで盗賊どもを撃っていれば問題ないでしょうけど、問題は2人が人質にとられた場合ね」


 「その場合は魔法を使えば済むでしょ。それか一気に接近してカチ割ればいい。どのみち近接戦闘に慣れていないこの星の連中じゃ高が知れてるからね、それで動きは確実に鈍るよ。後は魔法乱射で勝利できる」


 「そうね。それじゃ素早く接近するわよ。音を立てたって構わないわ。どうせ大立ち回りする事になるんだから、正面から正々堂々と叩き潰してあげましょう」



 私達はそう決めて森の中へと入っていく。それなりに下草も生えているので音を隠すのは難しい。それも分かっていて盗賊はこの森に潜んでいるのかもしれないわね。ま、ミクに見つかったのが運の尽きだけど。


 私達は既に確認した女性と少女の下へと一直線に進んで行くけど、やはり途中で見つかったわね。この星では【気配察知】系のスキルを持っているヤツが多いのかしら? それとも荒れている星だからスキル持ちが盗賊になっている事が多い?。


 おっと、余計な事を考えている場合じゃないわね。既に向こうが動き出してる。



 「そこに居る奴等、出て来い! オレの【気配察知】は誤魔化されねえぞ! そこに居るのは分かってるんだからなぁ!!」


 「別に隠れる気は無いよ。……さて、ここに多くの反応があるから来たけど、やはり盗賊か。それに………そこに居る女性達は何だ?」


 「ケッ! てめぇに話すとでも思ってんのか! ここで死ねや!!!」



 盗賊達は姿を現したミクに一斉に撃ち込むけど、ミクは盾で完全に防いでいて全く効いていない。むしろ盾に当たった弾があちこちに跳んでいるだけだ。そしてミクが狙われている内に、私達は【気配察知】持ちの男の頭を撃ち抜く。



 「ガッ!?」


 「くそ! 【気配察知】持ちが殺られた! 他にも潜んでる奴が居るぞ!!」


 「森の中だ! 森の中の何処かから撃ってきやがる!!」


 「あの盾女が出てきたのはワザとだ! こっちの【気配察知】持ちを最初に殺す気だったに違いねえ!!」



 どうやらこちらの位置が分からなくなって大混乱しているようね。どのみちこっちの位置が分かったとしても無駄なのよねえ。私は影になっているし、イリュは跳躍させる準備が出来ている。アレッサは堂々と回復すればいい。


 最後にはミクが神様の権能で癒せるらしいから、そもそも私達が死ぬ事はあり得ないのよ。どう考えても私達が勝つんだけど、あの女性と少女がどうなるかは分からないわね。


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