0878・町での情報収集と雑談
Side:カルティク
食堂で情報収集中だけど、善人になってるからか割とポンポン喋ってくれるわね。その御蔭で助かってるんだけど、情報を集める知識や技術は磨かれなさそう。ま、わざわざこの星でそんなものを磨く必要は無いんだけどさ。
それはともかくとして、列車という言い方をしたという事は蒸気機関車かしら? 詳しい事なんて全く知らないけど、乗ってみたくはあるかな? ガイアの日本では電車に乗った事があるけど、列車なんて無いのよね。
「何でも物を運ぶのが随分早くなったとか、それに相乗りできれば凄く早く移動できるとか聞きます。乗せてもらうのにも高いお金を払わなくちゃいけないそうですけど」
「まあ、都会にしかない物なんて殆どが高いものじゃない。貴金属も流行の服もバッグも化粧品も、何もかもがそうでしょう?」
「そうですね。憧れますけど、こんな田舎じゃ流れてきても更に高くなってますし、とてもじゃないですけど手が出ません。まあ、ああいうのは持っているだけで見栄を張れますし、大抵は田舎の金持ちオバサンが買うんですけどね」
「そして流行が過ぎれば安値でしか売れない、でも見栄を張る為にまた高い物を買う。後はお金を大量に使う無限ループね。最初から手を出さなければいいのに、見栄を張りたい相手より上で居たいというだけで無駄にお金を使う」
「暇だからそれぐらいしかする事が無いんでしょ? 貴族の女性も同じじゃない。必死に流行物を買って見せびらかして、すぐに別の物が流行るからまた飛びついて見せびらかす。だからこそ儲かってるのが居るんだけど、傍から見たらバカ丸出しでしょ」
「流石に貴族の事は知りませんけど、田舎のオバサンと変わらないんですね」
「言葉は悪いんだけど、女の見栄なんて生まれとか血筋とか一切関係ないわよ? 誰だって相手を見下して悦に入りたいっていう浅ましさは持つの。後はそこから離れられるか、一生それに従って生きるかよ。どちらかしかないわ」
「従う……ですか? 見栄を張り続けるのではなく?」
「そう。見栄を張りたい、相手より上で居たいという虚栄心は誰にだってある。とはいえお金が無いとか色々な理由があって、多くの人は最終的に虚栄心から卒業していくの。アレに拘る意味なんて無いって理解するのよ」
「でも……田舎のオバサンや貴族はそうじゃないんですか?」
「そうじゃないというより子供のままなのよ。虚栄心で見栄を張りたいのは子供の頃からよ、でも多くの人は大人になるにつれ卒業していく。それをしないで、いつまでも虚栄心塗れなのが田舎のお金持ってるオバサンとか貴族女性なわけ」
「ああ。虚栄心を満足させるだけのお金があるからね」
「そう。でも虚栄心の名の通り、結局のところそれは虚ろで幻のようなもの。そんなものを満たせる訳が無いんだけど、満たそうとしてお金を使い続ける。傍から見たらバカだけど、溜め込んだお金を吐き出させるには都合が良いの。だから踊らせるのよ、流行で」
「<流行に踊らされる>という言葉があるけど、正にそういう事ね。踊らされて無駄金を吐き出させて、虚栄心を満たさせてやる。確かに子供のままだと無限にお金を吐き出しそうだし、よく出来てるわねー」
「つまり商人などに都合よく利用されているという訳ですか。流行物という見栄を張れる物を使って」
「そもそもなんだけど、商人は結託して流行物を作ってるわよ? 今年はコレ、来年はコレってね。それを多くの商人が談合して流行らせてるのよ。だから流行物なんて物が巷に出回るの」
「………」
「まあ、憧れの流行物がそういう風に作られたとなれば黙るのも分かるわ。だから本当にそれが素敵かどうかを考えればいいのよ。何十年も使い続けたい程の物なら、流行物かどうかなんて関係ないでしょ?」
「………そうですね、そういう風に考える事にします」
流行に幻想を抱いていたのかもしれないけど、流行なんて所詮は商人の売りたい物でしかないからね。今それを知れて良かったと思った方が良いぐらいよ。知らなければ騙されたままになっちゃうんだし、騙されて無駄なお金を使わされるよりマシでしょ。
食事も終えた私達は宿に戻り、ミクが100ダル払って10日分延長した。この町にはある程度の期間滞在する事になりそうなので、あらかじめ先に払っておく事にしたみたい。まあ、先に払っておいた方が安全か。
多くのハンターがその日暮らしみたいに宿に泊まったり、多くの人で部屋を借りたりしているんだって。お金の無い新人なんかは5人ぐらいで一室を借りているらしい。無茶な事をすると思うけど、駆け出しなんてそんなものかとも思う。
アルデムの狩人だって駆け出しは似たようなものだし、私だって若い頃には苦労をした。それを考えると何処も変わらないんだなと、ちょっと懐かしい気持ちになる。ま、すぐにそんな感情も無くなるけどね。良い思い出が無いから。
宿の延長が終わったらハンター協会へ行き、今日も解体の仕事を請ける。夕方の混雑時の解体だけで1人30ダルは高い気もするけど、それだけ人数が足りていないという事なんでしょう。私達にとってはありがたいから良いんだけど。
解体所に行きゆっくりとしておく。まだまだ夕方には早いのでハンターも殆ど戻ってきておらず、解体所は暇なままだった。ちなみに私達が狩ってきた獲物はとっくに終わらせたらしい。
「綺麗に倒されてるうえに血抜きも完璧。あんな模範的なのは解体するこっちも楽なんでな、だからさっさと終わらせちまうのさ。その方が高値で商人や食堂に売れるからな。どうしたって質の良い物を欲しがるのは何処も変わらねえよ」
「本当ならナイフで首を刈るのが一番良いんだけどね、弾も使わず無駄なお金も掛からないし」
「新人がよくやる失敗か。まあ、あんた達なら問題ないんだろうが、新人は弾代すら稼げなくてナイフで何とかしようとすんだ。そして大抵はケガを負って余計に金が掛かる羽目になんのさ」
「新人の試練っつーか、その失敗をして新人卒業って感じか? ナイフで戦うなんてのは簡単じゃねえしな。それなら剣を持てって話だ。それが怖くて銃を使ってる癖に、ナイフで勝てる訳ねーだろーにな?」
「そうだが、オレも同じ失敗をしてるから何とも言えねえなぁ。中には剣で戦ってるヤツも居るが、あんなのは才能が無きゃ無理だ。正直に言って無茶してるとしか思えねえよ」
「へえ、剣も売ってるのね。この町では見なかったけど……」
「田舎じゃ売ってねえなあ。都会に行きゃ売ってるし、小銃にくっ付ける銃剣も売ってるぞ。アレって以外に役立つから、田舎でも売ってやりゃ新人も多少マシになるんじゃねえかと思うんだが……」
「そもそも小銃が回ってこねえのと、単発だから嫌がるんだよな。人数掛けるなら単発でも威力があるんだから問題ねえってのによ。それに銃剣つけりゃ十分に戦えるだろう」
「いや、それなら最初から槍を持った方が早いでしょうよ。小さい猪相手だと小銃が歪むかもしれないじゃない」
「槍なぁ……昔の時代にゃ使ってたとか聞くが、今の時代に使えるのかねえ……」
「少なくとも昔の人が出来てたんだから、問題なく出来るでしょう。それに剣を使うより槍の方が簡単よ? 剣で切る為には技術が要るけど、槍で突くのはそこまで技術が要らないもの」
「「「へぇ~……」」」
このオッサン達そんな事も知らなかったの? それともコレが普通?。




