0874・町と村の善人化
Side:イリュディナ
食堂に入った私達は適当に食事を頼む。私は解体所のオッサン達が言っていた内臓の煮込みにパンとサラダとエールを注文。客は多く、ほぼ満席じゃないかってくらいに埋まってるわねえ。ウェイトレスも忙しそうに働いてる。
それを見ながら運ばれてくるまで待ち、先に運ばれてきたエールを飲む。酸っぱいエールじゃなかったから良かったとは思うけど、それでもあまり美味しい酒じゃないわね。それでも飲めるだけマシだと思いましょうか。
臓物の煮込みは濃厚で、野菜と一緒に煮込まれてるからか確かに美味しい。思っている以上に濃厚な味だから、確かにオッサンが好むのも分かるわね。パンに付けて食べても美味しいし、これはアタリじゃないかしら?。
皆もなかなかに美味しそうに食べてるけど、ミクは普通ね。まあ、アレは人間種を生で食べるのが美味しいと思う味覚だから、私達とは根本的に違うし考えても仕方ないか。だいたいの料理を普通に食べてるから、特に問題は無いと思いましょう。
十二分に食事を堪能したので私達は宿へと戻る。ロフェルっていう鬼神族と違って私達はお酒に弱くないから、飲んだとしてもほろ酔い程度にしかならない。そんな良い気分のまま宿に戻り、ベッドの上にエアーマットを敷いて寝転ぶ。
「高さが妙に高いけど、柔らかいので寝る為には仕方がないか。そういえばミクは夜に出かけるんでしょ? あまり大量に食べ過ぎないようにね。悪人が多いから町が滅びるかもしれないし」
「基本的には善人化で済ませるよ。悪人の中には消えてもらわなきゃいけない奴は居るだろうけど、それ以外はそこまでかな? 前の星で数千人は食べてるからね。今はそこまで食べたいという気持ちは無いよ。まあ、そのうち飢えを感じるだろうけど」
「数千人……」
「前の星は乱世の所があったからね。そこでは荒れている国とか悪人だらけの国とかあったし、ミクにとっては食べる物が大量にある星だったの。面白い事は面白かったけど、そこまで乱世っていうほど荒れてなかったかなぁ」
「ガイアの日本にあった戦国時代。そんな時代でも大規模な戦は早くても数年に一度しかなかったっていうし、あんなものじゃないの? 私達が居たのって長くとも半年ぐらいでしょ。むしろ立て続けに戦闘が起きてた事が異常だと思う」
「でも小競り合いは普通にあったっていうし、その小競り合いだって死人が出るようなものよ? 隣の村に略奪に行くってものだって聞いたもの、それだって戦闘といえば戦闘でしょ」
「それはそうだけど、規模が何とも………。もちろんやってる方からすれば本気なんでしょうけど、食料が足りないから略奪っていうのもね」
「ま、しててもしょうがない話だし、この星は違うんだからいいじゃない。それより私は眠らせてもらうわ。おやすみ」
そう言ってカルはさっさと寝てしまったわね。仕方ない、気分が良いまま私も寝ましょうか。それじゃ、おやすみー。
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Side:ファーダ
夜になったので宿を出たが、久しぶりのガラス窓だな。今まではガイア以外木の窓だったので簡単に侵入できたのだが、この星では侵入に骨が折れるかもしれん。ま、大半は善人に書き換えるのだから侵入を考える必要はあまりない。
【空間魔法】の【掌握】を使い悪人を見つけたら、そいつに善人化を施せば済む。なるべくなら近い方が良いのだが、別に遠く離れていても問題は無い。数キロも離れていては流石に無理だが数百メートルならそこまで難しくはないしな。
何より難しいなら建物に張り付いて使えば済む。少なくとも外から使えば済む距離なら問題ないのだから、俺達にとっては障害にならない。
ミクとノノと手分けして善人化を行っているが、ミクだけは宿を中心に行っている。宿の部屋に誰かが侵入して襲ってきても困るからな、最初に宿の中を掃除しているんだ。俺達は適当に決めた端から順番だ。ちなみに俺が東でノノは西に行った。
悪人を見つけたら善人化を施すのだが、その数は思っている以上に多い。明日から善人の町になると思えば、それはそれで何とも言えなくなってくるが、神どもは容赦をするなと言っているしな。強引でも何でも構うまい。
もしかしたら惑星の神が何かしてくるかもしれんが、それならそれで敵として喰らうだけだ。そうすれば神力も増えるので万々歳だな。今以上に善人化をしやすくなる。おっと町の中心まで来たな。なら次は南に行くか。
ノノも終わって北に行ったようだが、あっちは皆が泊まっている宿がある方角だ。ミクが大半を終わらせているので、すぐに終わるだろう。後は全員で南を終わらせて確認すれば終了か。その後は近くの村だな。
…
……
………
町の善人化が終わった俺達は、それぞれの方角に向かって鳥になって飛んでいく。俺は東の方角に飛んで村を探す。ミクは北でノノは西だ。村にも悪人が蔓延っている可能性が高いし、それも善人にしておいた方が良い。
俺達なら起き続けていても問題は無いので、荒れている星をマシにする為にも善人を増やしておく。ま、途中で盗賊を見つけたら根こそぎ喰って全て回収だ。あいつらは生かしておく価値が無い。そしてノノが盗賊団を見つけたようだ。
俺が進んでいる東はダンジョンがあるからか、盗賊団のような連中は見つからない。おそらくハンターが毎日通るからだろう。やつらも見つかるリスクは増やさないだろうし、東に盗賊団は居ないだろうな。……よし、村を発見した。
この村にも悪人がそれなりに居るなぁ。村に巣食っているのか村人が悪人なのかは知らないが、さっさと善人にして次に行くか。時間を掛ける意味は無いし。
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Side:ミク
昨夜ノノが行った方向にだけ盗賊団が居た。そこまで大人数ではなかったみたいだけど、小銃が手に入ったのは大きいと思う。ただしスナイパーライフルと同じく装填数は1発のみ。これじゃリボルバーが好まれるのも分かる。
どうやら複数発込められる機構は回転弾倉しか開発されていないようだ。何とも歪な感じがするね。それと本体空間に残したリボルバーを試射して分かったけど、これシングルアクションのみしか出来ないヤツだった。
シングルアクションとは弾丸を1発撃つ毎に手で撃鉄を起こす必要がある銃の事で、ダブルアクションは引き鉄を引くだけで撃鉄が起きる銃の事を言う。リボルバーで連射してる銃の殆どはダブルアクション。
ただし西部劇なんかで左手を上下に動かして連射してるのはシングルアクションだ。あれは引き鉄を引きっぱなしにして、撃鉄を下げて撃つのを繰り返す為にああしてるんだけど、命中率が恐ろしく下がるからショーとかでしか使われない方法らしい。
西部劇も映画だからね、だから魅せる方法としてアレをやってたんだろうと思う。普通は1発撃つ毎に親指で撃鉄を下げるそうだ。そして狙いを定めて撃つ。それぐらいしないと拳銃っていうのは当たらないって事だね。……私は当てられるけど。
とはいえそれは例外だから、やっぱり1発ずつきちんと狙って撃つのが良いんだろう。小銃は1丁しかなかったけど、ボルトアクション式だから素早く撃てば何とかなるかな? 5発ぐらい装填できるとまた違うんだろうけど、これじゃリボルバーに流れるのも仕方ない。
もしかしたら複数装填できる小銃は民生品じゃない? 騎士団というか騎兵団なら持っているのかも。ただ、その辺りの事は分からないから、これからも色々と情報収集をしないといけないね。




