0873・解体所
Side:アレッサ
ミクが解体の仕事を請けるって言って請けたから、まずは解体師との顔合わせとなった。私達はハンター協会の裏にある解体所に行き、そこに居る解体師のオッサンどもと現在色々話している。受付嬢も一緒だ。
「今日は登録したばかりの皆さんが依頼を請けて下さったので、私は定時であがらせてもらいます! 良いですよね!!」
「そんなに強く言わなくても、明日までに間に合うんなら問題ねえって。それに難しいヤツはやらせねえから、問題ねえよ。今日は早く帰ってゆっくり寝るといい」
「それよりお前さんらの腕が分からん。まあ解体なんぞした事ないだろうからアレだが、ちょうど少し前に売りに来たヤツがあって手をつけてねえんだ。それで見本を見せてやるから覚えてくれ」
足が片方無いオッサンが、足の杖を突きながら獲物の方に行く。膝から下が無いけど、そこに木製の器具が取り付けられてて杖みたいなのが突き出てる。いわゆる膝から下にT字の物を取り付けてる感じね。それで歩いているわ。
他の者も似たようなものだから、体の何処かが駄目になった者がハンターを辞めて解体師になったって感じかしら。まあ、順当なんでしょうね。元々モンスターと関わりある仕事だったんだし。
兎のモンスターの解体を見ているけど、やってる事は兎の解体と同じね。当たり前だけど特に難しいところなんて無いわ。皮を綺麗に剥がす事と、内臓は必要ないから捨てるって事ね。何故か部位毎にバケツを分けてるけど。
「こっちは心臓だ。腸や肝臓と違って心臓は素人が食っても危険な事はねえからな、オレ達のようなのが帰って一杯やる時のツマミだよ。こういうのは役得というもんで、捨てちまうような物は持ってっていいのさ。ただし腸とか肝臓は酒場行きだ」
「あの酒場にもなる食堂?」
「おう、そうだ。あそこは腸を綺麗にして煮込んだもんとか出してくれるぞ。安値だがこれがまた美味くてな。パンに吸わせりゃ絶品だ。モンスターの部位で捨てられるのは骨ぐらいか? その骨も乾燥させて砕いて肥料にされるのも多い。だから要らない歯とかぐらいか。絶対に捨てられるのは」
「そうだな。兎の歯もそうだが、余ほどいい牙でもない限りは捨てられるな。まあ、捨てるのもダンジョンなんだがよ。ダンジョンで死んだものや外から持ち込んだ物を捨てて放っておくと、ダンジョンに吸収されちまうんだ。たとえどんな物でも死んでりゃな」
「生きているものは吸収出来ない訳ね。で、そろそろ私達も始めていい?」
「おう。余ほどの下手こかない限りは大丈夫だろ。横で見てるからやってみな」
そもそもわたしは下手な訳じゃないし、解体自体は何度もした事があるのよ。もちろんあのクソ吸血鬼の所為なんだけど、それでも知識と経験は感謝してやらなくもないわね。こういう時に役に立つし。
「ん? お前さん吸血鬼か? もしくはダンピールなのか? 血を吸い取ってるみてえだが……」
「………そうだけど、それがどうかした?」
変ね? 驚いているけどそれだけで、恐怖したり嫌な感情は向けてこない。この星に不死者は居るって聞いてるけど、もしかして思っている以上に多い? それとも何か理由がある?。
「吸血鬼かダンピールか知らねえが、こうも綺麗に血の量を調節されるとやっぱ違うって分かるぜ。都会なんかじゃ解体師の殆どが吸血鬼かダンピールって聞くからなぁ。血が必要だが解体所は毎日血塗れだからだけどよ」
「そうだな。ここも1人ぐらい吸血鬼かダンピールが来てくれりゃ楽になるんだが……そうそう上手くはいかねえか。それにしても嬢ちゃんは解体仕事せずに旅でもしてんのか? 随分珍しいな」
「毎日飲まないと滅ぶって訳でもないからね、特に旅をするのに不都合って事は無いわよ。まあ、解体は血を得るのに楽な仕事だけど……」
「オレらも現役の頃に吸血鬼やダンピールの人達にぞんざいに渡してたけど、実際に自分でやってみると大変で最初は苦労したもんだ。………で、お前さんらは全く苦労しねえんだな?」
「解体してそのまま持っておき、後で焼いて食べるとかあったからね。旅なら普通だし、解体方法を知らないモンスターはあるけど、解体そのものに苦戦する事はないかな? 特に難しくもないし」
「そうねえ。特に兎なんて食べられるの多いから割とやるし、珍しい方法とかあるのかと思ったらそれも無いし。そうなると知ってる方法で済むから簡単よ」
「教え甲斐がねえが、その分オレ達も楽でいいか。何なら手取り足取り教えても良かったんだけどなー。ガハハハハハハハハ!」
ま、暇してるオッサンなんてこんなものね。それはともかく大した問題もないようだし、後は実際の混乱っていうか混雑状況を味わってみないと分からないってぐらいかな? それまでゆっくりしていましょ。
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Side:カルティク
今私達は忙しく働いている。というのも引っ切り無しに解体所に持ってくるからだ。もちろん田舎だから数は少ないのだろうが、その分だけ解体師も少ないので急がしさは都会と変わらないか、こちらの方が上らしい。元々解体師が3人しか居ないのもどうかと思う。
私達4人が入っているから今日は楽なんだろうけど、いつもならコレに受付嬢が数人参加するそうだ。休みの受付嬢も解体時間は働きに出て来てくれるらしい。もちろん問題なのは分かっているそうだが、なり手が居ないので解決しないそうだ。
まあ、毎日血塗れになる仕事に立候補する者はなかなか居ないでしょうね。居ないからこそ何処かしら欠損してしまったりしている人達で回している訳だし。ちなみに3人の中で一番軽かったのは右手の小指の欠損だった。
それでも右手の握力が下がってるので、銃の反動を制御できないらしく引退となったみたい。この星じゃ刃物を使ってモンスターと戦う事は滅多に無いらしく、銃が使えないなら引退するしかないんだってさ。この辺りは狩人と変わらないみたいね。
どのみち戦う者が戦えなくなったら引退するしかないんだし、そうなったら解体師は悪い仕事じゃないと思うんだけど……戦える連中からしたら負けた者みたいに見えるのかも。
素早く捌いて次、素早く捌いて次。そうやって繰り返し、夜になったぐらいで終わった。夕方の馬車に乗れなければ歩いて帰ってくる羽目になり、その時間だと既にハンター協会も解体所も閉まっているらしく受け付けていない。その御蔭でこれで終わりってわけ。
「いやぁ、ご苦労さん! 素人じゃなかった4人が入ると本当に早いな! そのうえ血抜きの足りない奴は整えてくれるし、本当に今日は楽だった。ありがとうよ!」
「私達も色々な解体を知れたし、悪い事じゃなかったわ。こういうのは覚えておいて無駄にならないからね。明日もするだろうけど、何日私達が入れるかは分からないから」
「それは分かってるさ。だが少しでも楽になるなら、その分だけオレ達も息を吐けるってもんよ。それだけでも大分違うんだ。本当にありがとう、助かった!」
「今日はヤケ酒じゃなくて、じっくり楽しんで酒飲むかねえ。これも何ヶ月ぶりなんだって話だが」
「じゃあ、私達は依頼の完了を言ってくるから。お先に」
そう言って私達はハンター協会の建物に入り、受付嬢に依頼の完了を報告した。この時間に終わっている事に驚いているようだけど、いつもはどれだけ遅くまで解体をやってたのよ。これは本当にブラック労働環境だったみたいね。
依頼完了と30ダルを貰った私達は、一路食堂へと向かう。この町には2軒あるらしいけど、善人にしたウェイトレスの方ね。わざわざ別の店に行く意味も無いし。




