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0869・町へ




 Side:イリュディナ



 私達は未だに洞窟前に居るけれど、そろそろ移動したいところね。ただ……どっちに移動したら良いかサッパリなのが問題だけど。



 「そうだね、そろそろ町へと移動しようか。別に野宿でも何ら問題は無いんだけど、一応この星も魔物が出るらしいから怪しまれかねないし」


 「そうそう。町が近くにあるかは知らないけれど、さっさと移動するのが一番良いわ。町がどっちに在るかも分からないけど。……そういえば、お金はどうしたの? 盗賊達は持ってなかった?」


 「おっと、忘れてた。実はガイアと同じく紙幣と貨幣だったよ……ほら」



 ミクがアイテムバッグから取り出した物は、確かにどう見ても紙幣だった。1、5、10、100と書いてあって、後は貨幣があるみたい。そっちは1、5、10、50と書いてあるわ。単位が良く分からないけど、おそらく紙幣が上で貨幣が下でしょ。


 紙幣が全部で4430、貨幣が全部で3920あったので4人で分ける。余りはミクの物にして、私は紙幣が1100、貨幣が980となった。これがどれぐらいの価値なのか分からないところが痛いわね。


 おまけにレティーが居ないから盗賊の死体から情報が手に入れられないのよ。ミクがある程度の情報を手に入れられると言っても、それは悪意や善意によるものしか無理だそうだし……。常識が無い事のボロが出そうね。


 とりあえず私達は移動する事にし、再び鬱蒼うっそうとした森の中に入っていく。既にファーダは本体空間に戻り、ノノは鳥の姿になって周囲を調べに行った。町がどちらの方向にあるかは知っておきたいからね。


 私達は適当に1方向に向けて歩きつつ、森からの脱出を図る。こちらの方角であってるかは知らないけれど、周辺の情報を得てきたノノが戻ってくれば分かるでしょ。そう思っていたら、頭上に鳥が飛んできた。


 その鳥が地面まで下りてくると素早くノノの姿に変わり話し掛けてきた。アレッサは早速抱き上げたわね。手が速い……。



 「……こちらの方角だ。こちらの方角に真っ直ぐ行くと町のようなものがあった。ただし寂れているのか人は全く見当たらなかったぞ。あと、町には壁も無く堀も無かった。どうやって町を守っているのかは分からん」


 「もしかしたら魔物を狩るようなヤツが居て、そいつらが町の近辺の魔物は狩り尽くしたのかな? そうなれば魔物も近寄って来ないでしょ」


 「確かにそれはあるかもしれん。ただ、町に入る為の入町税などは無いと思われる。それと……ゴーストタウンでなければ良いのだがな」


 「それは仕方なくない? 言っても始まらないし、行かないと分からないわよ。今はまだこの星の事がサッパリなんだし、これからでしょ」



 私達はノノが示した方角に走って行き、強引に草などを掻き分けて進む。そこまで時間が掛かる事も無く森を出た私達は、多少速度を落として歩く。何処で誰が見ているか分からないのと、町はそこまで森から遠くないからだ。


 この星の移動手段がどうなっているか分からないけど、ガイアみたいに車とかあったらと思わずには居られないわ。走るのは良いんだけど、怪しまれるかもしれない事は出来ない。


 この星で【身体強化】が一般的なら使うのも問題無いけれど、一般的でないなら怪しまれる元にしかならないし……でも移動速度が遅いのは納得いかないのよね。ストレス溜まるから。


 そんな事を考えていると前の方に町が見えてきた。盗賊があの森に居たぐらいだから、そこまで遠い訳が無いわよねえ。町への道とかを塞いで商人とかを襲うのが盗賊だもの、補給を考えたら町から遠くにアジトを構えたりしないわ。


 私達は歩いて近付いていくけど、少なくとも建物の外を歩いている人は見えない。畑とかは見えるけれど、それ以外は防護柵も無い町。本当に大丈夫なのかしら? 魔物の襲撃を考えていない造りとしか思えない。


 天然の魔物が居ないガイアならまだしも、この星では普通に魔物が出るのよね? 何で町を守る為の物が無いのかしら……。やっぱり町の近くには魔物が居ないのが正解なのかも。


 町に入った私達は周りの建物を確認しながら歩く。この星の言語に関しては、早くから神様がミクにブチ込んでいた。私達はそのミクから受け取ったけど痛みは受けていない。ミクは悶絶してたんだけど、私達にはその痛みを与える気は無いらしくて助かったわ。


 だから文字を読む事も会話をする事も出来るんだけど、看板には絵が書いてあるだけで文字が書いてないのよ。困った……皿とフォーク? という事はアレは食堂なんじゃない?。



 「アレ食堂なんじゃないの? あそこに入って聞いてみましょうよ」


 「おっと、そうだね。私達は始めてここに来た、だからこの辺りの常識に詳しくない。……というていでいこうか」



 そう言って皆で食堂らしき場所に入る。ドアを開けると「カラン、カラン」と鳴ったが、客は誰1人として居なかった。そもそもこの店は本当に営業してるのかしら? そんな素朴な疑問が出てくるわね。



 「……客? そっちの席に座ってくれる?」



 こっちは客なんだけど、えらく態度の悪いウェイトレスねえ。まあ、そういう町なのか国なのか。それとも文化なのか知らないけど……それとも余所者だからかしら? どっちにしても碌なものじゃないわ。接客ぐらいちゃんとしなさいよ。


 そう思いつつ指定された椅子に座るも、店の中にはメニューも何も無い。どうなってるの? この店。



 「メニューも何も貼り出してないけど、この店なにがあるの? メニューが無きゃ注文出来ないし、ここはそもそも何の店?」



 ウェイトレスに対してミクが言うと、面倒臭そうに奥へと引っ込んだウェイトレス。そして戻ってきた時にはメニューを持っていた。最初から出しなさいよ、それが客に対してする態度?。



 「はい、これでいいんでしょ。決まったら、どうぞー」



 そう言って戻ろうとしたウェイトレスを見たミク。するとウェイトレスは前に倒れそうになったのでミクが素早く支えた。


 ミクが何かしたようね? 何かは知らないけど、いい気味よ。



 「もしかして善人にしたの? こいつが悪人かどうかは知らないけど、態度が悪かったからちょうど良いわね」


 「悪人と言えば悪人だけど、善人にする程でもなかった。そんな感じかな? とはいえここまで態度が悪いと善人にした方が良いと思えてね。ついでに情報を聞きだすにも都合が良いし」


 「確かに善人なら喋ってくれそうだものね。ついでに悪人は善人に変えて情報を聞き出す? ミクも大量に食べるのは面倒臭いだろうし」


 「そうだね、それも良いかもしれない。今までの星で結構食べてきているから多少は善人にしても問題ないだろうし、神どももそこまで目くじらを立てたりしないでしょ」



 何だかよく分からないけど、ミクは善人にする事が出来たんだっけ? そしてそれをこのウェイトレスに使ったって事ね。それなら……おっと、目を覚ましたみたい。



 「申し訳ありません。何故わたしはあんな事をしていたのか……」


 「まあ、色々とあったんじゃない? それより私はランチセットでお願いね。後、さっきのは話し相手になってくれたら許すよ」


 「私もランチセットね」


 「面倒だからランチセット4人分でいいわ。オーダー通してくれる?」


 「分かりました。少々お待ち下さい」



 さっきまでと違い過ぎるわね。流石は善人。それはともかくとして、この善人にされたウェイトレスには早急に常識を教えてもらわないと困るわ。場合によっては致命的な失敗をしかねないしね。


 ランチセットは200モルって書かれてたけど、貨幣の方か紙幣の方かすら分かっていないんだもの。このままじゃ本当に大きな失敗をしかねないわ。


 今さらになって気付いたけど、常識も何も知らない土地に行くって大変よ。同じ星の外国より難易度が高いわ。


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