0866・次なる惑星への準備
Side:本体
<無敵の鋼鉄団>の女は霊薬を飲ませたらすぐに襲ってきたが、それをかわすと諦め、団長だった男の死体に縋りついて泣いていた。その隙にさっさと逃げ、夜になるとリョークスル帝国の皇帝の執務室に首を置いて脱出。これで復讐の依頼は完全に終了となる。
次は何処へ行こうかと話し合っていたのだが、手から耳が生えている姿の神がやってきて、私を次なる星に向かわせると言ってきた。どうやら先ほどまでの星はアレで良いらしい。まだ南東の大陸には行っていなかったのだが、そこらは構わないようだ。
私は言われた通りに皆をアルデムに送り、<妖精の洞>で話をする事にした。ここでは知っている者しか居ないからな。
「さて、単刀直入に話すと次の惑星に行く事が決まった。そして新しい惑星に連れて行けるのはアレッサとイリュ、次いでカルティクぐらい。他の皆は残念ながら連れて行けないんだけど、当然それには理由がある」
「理由かい?」
「そう。次の惑星は銃や兵器でドンパチしてる所らしいんだ。魔物も出るし不死者も居るけど、全体的に治安が悪く荒くれ者が多い惑星。ダンジョンもあるらしいけど、そこのダンジョンはダンジョンマスターが居るタイプ」
「ダンジョンマスターですか……。しかし何故3人だけしか連れて行けないので?」
「言ったでしょ、銃や兵器があるって。つまり皆だと死亡する可能性が出てくる。それでもアレッサやイリュなら簡単に復帰できるからだよ。片や<真・吸血鬼族>、片や<元妖精女王>。この2人は別格の回復能力を持ってるから問題なしってわけ」
「ああ、そりゃそうだね。でもカルティクはどうなんだい?」
「カルティクはイリュの大元にくっついている感じだから回復させる事は可能。ただしこれは強制するものじゃないから、無理についてこなくてもいいよ? あくまでも行けるなら、だから」
「私は行ってもいいけど、どうしようかしらね? たまには全然知らない星ではっちゃけても良い気はするんだけど……」
「私はそれが怖いんだけど? イリュが暴れるって、また危険に突っ込む予感しかしないし……」
「じゃあ、行くわ。ついでにカルも巻き込むからね? はい、決定! 取り返しはつきませーん」
「……いや、元々行く気だったでしょ? 暇だって言ってたし、何で自分を連れて行かないのかって言ってたじゃない。迷ってもいないんだから、私の所為にしないでよ」
「行くならばこの宿はどうするのだ? まあティアやロフェル、それにマハルに任せておけば大丈夫か。3人はゆっくりしておけばいいし、特に問題は無さそうだな。それよりいつまで触っている気だ?」
「思っていたよりも遥かに手触りが良いから、もう少しだけ」
「こいつもアレッサと変わらん気がするのは気のせいか? どうしてこう、触らずには居られんのだ」
「「そこにモフモフがあるから?」」
「こいつら………」
下らないコントみたいになったが、宿の事などはアルトムに聞けば分かるだろう。そう思い、後は任せてアレッサとイリュとカルティクを本体空間に入れる。
そこまでは良かったのだが、早速神どもが遊び始めた所為で時間が掛かる羽目になってしまった。何故わざわざ余計な事をするのか……。
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Side:イリュディナ
瞼を開いて目を開ける。あれ? いったい何してたんだっけ? ……ここはミクの本体空間か。
久しぶりにミクの本体空間に来たら、おかしな姿の神様を見て……それより先の記憶が無い。既に本体空間には本体しか居ないみたいだけど、前に見た時より大きくなったわねえ。ビックリするほど本体が大きくなってるし、何故か色々な本が山ほど置かれてる。
「うん? 起きたか。神どもも相変わらず容赦なくやったが、それが神どもなので諦めろ。あいつらはこちらの言う事など欠片も聞かんからな。冗談でも何でもなく嵐のようなものだ」
「そう……それで私は何をされたの? 何だかおかしな事になっている気がするんだけど……」
「う、ん………ここは……?」
「おはよう、カルティク。これで2人とも起きたんだし、さっさと<鑑定の石板>で調べたら? 神様が2人にブチ込んでたの、相当ヤバい物に見えたしさ。あれが何かは怖くて聞けなかったけども」
「私だって詳しく聞かんかったくらいだ、それで正解だろう。どうせ聞いたところで無視されるか適当な事を言われるだけだ。奴等は聞かせる気のある事しか言わんし説明せん」
神様がどうとかは聞きたくないから、さっさと<鑑定の石板>とやらで調べましょう。聞いていても仕方がないのだし。
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<イリュディナ>
種族:幻想精霊種・空間
年齢:0
性別:女
スキル:空間知覚・空間操作・空間跳躍・亜空間
特殊:空ノ間
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<カルティク>
種族:幻想精霊種・闇影
年齢:0
性別:女
スキル:闇影知覚・闇影操作・闇影跳躍・闇影空間
特殊:闇ノ影
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「これは……よく分からないわね。とりあえず妖精じゃなくなったんだけど、これってマズいんじゃないの? だって今まで妖精だったから死ななかったんでしょ? でもこれじゃ普通に死ぬような……」
「いや、違うぞ? 今までは妖精の大元があり、それで復活できたのだ。ただ、これからはそれを超えてしまったというだけになる」
「超えたってどういう事? そもそも私の種族が霊人族っていうか、人間種じゃなくなってるんだけど……」
「おそらくイリュと関わりがあったからだろうな、そっちに寄せられてしまっているのは。とはいえ悪い事ではないのと、そもそも幻想精霊は殆ど不老不死と言っていい存在だ。お前達を殺す事は実質不可能だろう。私でもない限りは」
「ミクに殺されるのは当然としか思わないけど……それでもほぼ不可能っていうのは凄いわね。私より遥かに上じゃん」
「いや、そんな事は無いぞ? アレッサの<真・吸血鬼族>も十分に凄い。何せ血さえあれば、体の全てが粉砕されても復活するのだ。アレッサも十分におかしかろう」
「それはおかしいわね。とてもじゃないけど、まともな生命とは言えないわ。ま、私も似たようなものになってるんでしょうけどね」
「お前達の場合は、そもそも本体が違うのだ。お前達も私と似て、本体は別の場所に格納されている。その本体が滅ぼされない限りにおいて、お前達が死ぬ事は無い。とはいえ私のように本体空間がある訳では無いがな」
「そうなの?」
「ああ。お前達の本体はそれぞれの空間と闇にある。そこに攻撃する術を持たない限り、お前達を殺す事は不可能。であるからこその〝幻想〟精霊種なのだ。唯の精霊種と同じではない」
「逆に言うと、そんな種族にするようなモノをブチ込まれたわけね?」
「そうだけど、諦めた方がいいわよ? 神様に文句言ったところでねえ……聞いてもらえるなら本体が愚痴ったりしないでしょ? それ以下の私達が言っても何も意味が無いの」
「まあ、でしょうね。イリュも諦めたら? そもそも強くしてもらって文句を言うのはお門違いよ?」
「……そうだけどさ、今までと同じで姿も変えられ……?」
体を変えようと思ったら、何だか他にも変えられる姿があるわね? 試しに……って! これ冗談でしょ!?。
「男に変わったな。成る程、性別としては女がメインだが変えられるという訳か。まあ、だから何なんだという話だが。それはともかく新しい惑星に行く前に、お前達には力の使い方をここで練習してもらう。いいな?」
「流石に全く使えませんじゃ駄目だろうしね。おまけに力も特殊な感じだし、今までと違うでしょ。それが終わってから次の惑星って事ね。ちょっと楽しみだけど、銃火器が怖くもあるかな」
「それぐらいでいい、攻撃力が上がり過ぎているからな。何でもそうだが慎重で悪い事はないのだ。といっても、やる事は変わらず悪人を喰うだけだか」
そこはね。神様の命なんだから変わらないでしょ。
ここまでお読みいただきありがとうございます。第3部は魔物の国と乱世を描いてみたかったのですが、魔物の国をああしてしまったが為に、本当の戦国乱世を描くのが難しくなってしまいました。
南東の大陸にいる魔族の設定もあったのですが、それは没にして第4部にその構想を組み込む事に決めて手直ししています。
次の第4部のイメージは荒れたウエスタン風の世界。列車や銃にバイクなどと色々と出てきますが、何とか頑張って描こうと思います。
いつもそうですが、リアクションを下さる事や、ポイントを下さる事が励みとなっております。
これからも拙作を宜しくお願いいたします。




