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0083・イリュとシャルと説明と




 「3日目以降は特に何もなく、さっきも言った通りダンジョン攻略1日目で40階を突破、2日目で60階を突破した。その後は61階からの砂漠を攻略して、80階のワイバーンを撃破って流れ」


 「その日あたしは王城に呼ばれたんだけど、王と宰相に侯爵からも疑われてたね。もちろん知らぬ存ぜぬでかわしたけども。それでもあたしが移動してきた場所で、代官や貴族が次々と行方不明だ。怪しい事この上ないだろうさ」


 「でしょうねえ。とはいえ証拠が無い以上は、どうにもならないでしょう? 何で近衛騎士に殺される羽目になってんのよ?」


 「それなんだけど、王は元々暗愚なフリをしてたんだ。とはいえ、言葉の端々や態度で分かるものさ。どうやら先代の教育でそうなったみたいだけどね、そこはいい。重要なのは裏でどうこうとしなくなったんだ」


 「裏?」


 「そもそもあたしのカロンヴォルフ家は、そういう事をする為に一代限りになってるんだよ。そして国の為に結構な汚れ仕事も危険な事もしてきた。その結果の将軍位であり伯爵位なのさ」


 「成る程。そこまで国の裏側に関わりがあれば、伯爵位ぐらい与えないと示しがつかないわねえ。裏で汚れ仕事をさせておいて国が評価しないんじゃ、国家としても国王としても格が落ちてしまうでしょうし」


 「ああ。でも先代と今代は、その裏の仕事をなるべく無くそうとしてた。その事自体は決して悪い事じゃない。なるべくなら裏で手を汚す者なんて居ない方が良い。しかし、それが国に齎した結果は……」


 「裏から手を出されないっていうんじゃ、当然腐った連中は蠢動するでしょうね。証拠さえ掴ませなきゃ好き放題できるんだし、命の危険は無いときてる。国を腐らせる政策、もしくは方針としか思えないわね」


 「その通りさ。結果、腐った貴族が悪事を今まで以上に働くようになった。にも関わらず王は頑固にも方針を変えようとしない。まともな貴族も王の方針に賛同している。これじゃあ、国が傾いていくだけだ」


 「まあ、歯がゆい思いがあったって事でしょ? 国の方針は分からなくもない。今さら方針を変えられない王の立場も分からなくはない、何故なら今止めたら隙になるから。しかし腐った汚物どもは好き勝手をする。じゃあ国の為にどうする? って感じね」


 「ああ。そうやって悩んでいる最中にミクに会った。あたしにとっては、とても都合が良かったんだよ。なんたって最強の怪物なうえ、神々が創られた地上のゴミを滅ぼす生物なんだ。我が国のゴミどもも、これで滅ぼせる。そう思うのは当然だろう?」


 「手詰まりだったところに、全てを解決する一手が目の前に現れた。そりゃ何がなんでも掴むわよねえ。で、その結果、何故か近衛に殺されたと」


 「王の方針としては、裏の暗殺などはしないという事。そこに宰相が入れ知恵してたのは間違いない。どういう入れ知恵だったか知らないけどね、結果としてあたしを暗殺する羽目になった。おそらくだけど、王は知らないと思う」


 「暗殺を禁じた王が、国の要ともいえる女将軍を暗殺か。歴史書には稀代のバカとして記録に残るでしょうね。たとえ宰相の責任にしたとしても、醜聞は必ず残る」


 「あの宰相には、同じように嫌味ったらしいけど駆け引きが得意な息子が居る。おそらくそいつが後を継ぐ形で宰相となり、今の宰相は後ろで後見しつつ暗躍、ってところが落とし所だろうさ」


 「ごめん、宰相の息子は私が喰った」


 「「………」」



 イリュもシャルも言葉が出ないようである。「いったい、いつ?」、「何故?」と思考がぐるぐると回り、か細い声がシャルから出た。



 「い、……いつの、事だい?」


 「屋敷が襲撃された日。もしかしたら私とシャルを分断したかったのかも。私はダンジョンを出た途端襲撃されてね、それは使いを寄越した子爵の逆恨みだったんだけど、兵士の詰め所に連れて行かれたんだよ」


 「詰め所に?」


 「襲撃が成功しても失敗しても良かったみたい。成功したら私を殺せる、失敗しても兵士に難癖つけさせて私を勾留。そして適当に罪をでっち上げる。それで私に対する逆恨みの感情は満足、生きていればワイバーンを取ってこさせればいい」


 「バカ過ぎる……」


 「バカ過ぎだろう、そいつ……」


 「問題は牢の中に入れられた後、宰相の息子が来て自分の下につけば牢から出してやるって言ってきたのよ。寝言は寝てから言えって言っておいたけど。その時に、宰相の息子からシャルが襲撃されて殺される事を聞いたの。あれは自分が宰相を継げるから口が軽かったのかな?」


 「どっちみち宰相の息子もバカだったという事さ。ミクが喰ったって事は、宰相はどうするんだろうねえ。あいつ、息子は1人しかいないっていうのに……。今さらあたしを殺した事は無かった事にならないよ?」


 「私を罠に嵌めようとした兵士2人と子爵家の家族、そして宰相の息子。それらを喰らった後シャルの屋敷に行ったら、近衛騎士に囲まれてるシャルが居た。大立ち回りをやってるシャルの言葉を聞いてカチンときたんだ。こいつ私を騙してたな? って」


 「ああ、最後だからって派手に色々口走っちまったけど、それを聞かれてたのかー……」


 「近衛騎士達に切られて刺された後、体をオークにして首を切り落とし、シャルに売ったワイバーンのナイフ3本を回収して逃げたの。その最中に首を本体空間に転送して、本体にくっ付けて蘇生。無事に生き返りましたー、って感じ」


 「そこがもう意味不明だけど、言っても始まらないから言わない。で、首から上になったシャルは普通に体があるみたいだけど? それはどうなってるの?」


 「首から上にした後で色々聞いて、こいつは腐った汚物を抹殺する手伝いをさせる。そういう罰に決めたの。私を騙してた罰だね。で、ワイバーンの骨と血肉に私の血肉を加えて体を作成、首から上をくっ付けた」


 「そんな適当な……」


 「私の血肉が拒否反応やその他を無くし、更には首から上と肉体との融合を助けてる。結果、何故か暗い銀髪の褐色肌になった。こんな事もあるんだなぁと思ったけど、反応は千差万別だから、他の者に同じ事をやっても同じ反応にはならないんだよね」


 「そ、そうなんだ……。ところでワイバーンの血肉とか、ミクの血肉ってどうなの?」


 「どうって言われてもね……。元の体の3倍以上のパワーに、頑強な体。4倍以上もある魔力に、骨も内臓も強い。そして極め付きは不老になってる。これをどう表現すればいいんだい? あたしは」


 「うわぁ………」



 イリュは肉体のスペックを具体的に聞いてドン引きしている。圧倒的に強くなっているうえに、不老という尋常じゃない状態。妖精の女王であった自分も不老だが、かくもあっさりと不老仲間を作らないでほしい。そう思ったのだった。



 「それで、ミクはシャルに何をさせたいわけ? ここまでメチャクチャにした以上は、相当の何かがあるのよね? むしろあるべきよね?」


 「別に? ただゴミどもの情報を仕入れてくるとか、喰えそうな奴を教えてくれればいいよ。喰うのは私の仕事だし、私の食事でもある。フィグレイオ以外なら好きに旅すればいい。戻ってきて腐ったゴミどもを教えてくれれば、尚いいね」


 「………」


 「まあ、そうだろうと思ったよ。ミクの目的からすれば、あたしがやるべきはそういう事だろうからね。かつて女男爵になった時も、期待されていたのはそういう事だし、情報収集は長く熟してきた。ある意味じゃ、本業みたいなもんさ」


 「今はお金儲けが先だね。探索者になってブラッドスライム買って、ダンジョンを攻略するといいよ。私がついて行かなくても問題ないでしょ?」


 「まあ、大丈夫だと思う。【精神感知】に【精神看破】は未だに使えるからね。バカどもに騙されたりなんてしないよ。逆に殺してやるさ……っと、そいつらの死体は持って帰ってきた方が良いかい?」


 「いや、要らない。私は生きたまま踊り食いをするのが好きだからね。死んで時間の経った、活きの悪いのは好きじゃないんだ」


 「あ、ああ……そうなんだね」


 「………」



 色々言いたい事はあるのだが、口は開くまいと思うイリュであった。


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