0861・リョークスル帝国・辺境伯領の町
Side:ロフェル
私達はリョーディカ連合での悪人喰いを終え、最後の国とも言えるリョークスル帝国へとやってきた。リョージア王国へとミクが【転移】し、その後は東へと移動して10日。時間は掛かったものの、国境を越えて町へと入っている。
辺境伯が治めているらしいので、ここは普通に国家として在るのだろう。リョージア王国でさえ微妙だったのに、リョーディカ連合はもっと酷く、正直に言ってまともな国の体を為していなかったからね。やっと普通の国家に来たという気がする。
そんな辺境の町中だけど、何だか不穏な感じがするのは私の気のせいじゃないみたいね。町の者からの視線が何だか良くない。悪意までは向けられていないと思うんだけど、何だか厳しい視線が多い気がする。
「この町の人、妙に厳しい視線を向けてくるわね? 傭兵に対してだからなのか、それとも余所者だからなのかは分からないけど、あんまり良い雰囲気じゃないわ。まあ、分かって向けてきているんだろうけど」
「それにしても変だけどね。そもそも傭兵なんて何処にでも居るし、その傭兵が魔物を狩っている訳だろ? 何でそれに厳しい目を向ける必要があるんだろうねえ。傭兵が減ったら損にしかならないだろうに」
「そこまで考えていないのではありませんか? 何か傭兵嫌いな理由があり、その感情が先なんでしょう。それ以外に考えていないような気がします。それに感情が先というのは分かりやすいとも言えますよ?」
「まあ、そうなんだけどね。それにしても鬱陶しいのと同時に、わたし達に対する下卑た視線は感じないんだけど……ミクが何も言わないっていう事は悪意は無いんでしょ?」
「無いよ。悪意までは感じないけど、それに近いものは感じるから、何がしか傭兵か余所者に関してあるんだろうね。それが何なのかは明日にでもなれば分かると思う。悪人でも知ってるでしょ、それぐらい」
「そうですね。おそらく地元の物なら知っているとか、そんなレベルの話でしょうから、喰われる連中でも知っていると思いますよ。明日になれば全てが明らかになるでしょう」
私達は宿に行って3人部屋を2つとり、いつも通りゆっくりと休む。特に急ぐ事も無ければ、今すぐしなければいけない事も無いし、この町では情報収集がし辛そうだからね。今はゆっくりしつつ別の町も見た方が良い。
それでこの町特有なのか、それとも国全体の事なのかが分かる。国全体だと面倒だけど、それでもミクの情報収集は問題なく出来るでしょうし、それで何とかするしかないわね。
町の人が最初から敵対的だと何も情報が得られないから、流石にどうにもならないのよ。お金を使っても口を開かせられたら良い方で、その情報も正しいかどうか分からない。適当な嘘を言ってくる事も十分にある。
そこに関して何故か分かれば対処が出来るかもしれないんだけど……。今はまだ分からないから考えても無駄ね。ミクからの情報を待ちましょう。
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Side:ノノ
夜になり我らは外に出て悪人を喰らっておるが、まさか傭兵嫌いの国とはな。……いや、傭兵嫌いとまでは言えんか。正しくは傭兵組織が嫌いだと言うべきか、それとも大人数の傭兵グループが嫌いと言うべきであろう。
このリョークスル帝国は、リョーク中央大帝国が崩壊した後に最も早く出来た国だという。かつての公爵は崩壊を予見していたのか、それとも公爵が崩壊させたのかは分かっておらんが、建国までのスピードが二ヶ月も無かったそうなのだから驚くしかない。
混乱の中をまとめたのだろうが、それでもあまりに早すぎる。どう考えても知っていたか、それとも崩壊させた元凶かしかない。それはともかくとして、ここリョークスル帝国は混乱の中で一番に建国され、そこから歴史を紡いでいる国という事になる。
しかしそのリョークスル帝国において3年前、とある大事件が起きた。国の中央西にある侯爵家が滅ぼされたのだ。その侯爵家を滅ぼした者の名は<無敵の鋼鉄団>。そいつらは侯爵家を滅ぼしただけではなく土地まで乗っ取った。
そして侯爵領は自分達の物だと言い張ったのだ。これに対してリョークスル帝国は軍を派遣したが、まさかの出来事が起こる。それは帝国軍が<無敵の鋼鉄団>に負けたという事だ。
力で奪い返す筈が敗れた帝国は、屈辱の中でその理不尽を認めるしかなかった。そして起こった事はそれだけではなく、傭兵が<無敵の鋼鉄団>に合流したり、依頼料を驚くほどの高値に吊り上げ始めたのだ。
結果として傭兵はこの国では嫌われる対象となった。もちろん魔物を狩っているのは傭兵だし、そんな事は誰もが分かっている。しかし、だからといって傍若無人な連中に納得している訳じゃないという事だろう。
特に侯爵家は滅ぼされている。皆殺しになったという事らしいのだが、だったらミクに依頼をして亡くなったあの男は誰だという事になる。……ま、おそらく生きていたのであろうな。そしてリョージアまで逃れていた。
『最後にミクに会って依頼できたのは本当に幸運だったのだな。本人はそんな事も分からぬまま旅立ったが』
『分からぬままであろうが無かろうが、俺達のやる事は変わらん。いつも通りゴミを喰らうだけだ。それにしても貴族の領地を乗っ取った奴等が軍に勝つとはな。何があったのやら?』
『そいつもシャルと同じようなスキル持ちかもしれない。それに魔力が多ければ、多くの者の能力を引き上げられるだろうしね。ナロンダのスキル持ちの中にそういうのが居た筈だし、他にいても不思議じゃないよ』
『確かに。一応<無敵の鋼鉄団>とやらは数が多いみたいであるし、その者どもを強化できるのであれば軍に勝つ事もおかしな事ではあるまい。どのみち、そやつらの命運も長くはないのだしな』
我らが居る以上、悪人の命は長く保たん。その為に在るのであるし、その為に創られたのだ。我らは我らの為すべき事を為すのみ。
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Side:マハル
「とんだとばっちりと言いますか、何と言えばいいのやら……。ターゲットである<無敵の鋼鉄団>の所為で、傭兵が良く思われていないとは思いませんでした」
「わたしも予想外だわ。とはいえ考えてみれば普通の事かとは思うけどね。いきなり来て虐殺するような連中を好むなんて事は無いわ。その侯爵領を攻めた戦いでも、町の人の多くを殺したらしいじゃない」
「そういう話だったね。何故そいつらが領地を奪ったのかは知らないけど、その所為で他の傭兵も調子に乗り、その結果はみ出し者扱いをされている。それがこの国における傭兵の立ち位置」
「それでも多少はマシになったようだがな。何と言っても、結局は傭兵が居らねばモンスターから守る事は出来んのだ。それに依頼料を法外な値に上げた者どもは、結果的に専属を失って叩き出されたらしい」
「成る程ねえ。まあ、調子に乗った阿呆が失敗するのは何処でも変わらない事だけどさ、それも時間が過ぎて多少はマシになったって事ね。そういえば<無敵の鋼鉄団>とやらは爵位持ちになったの?」
「そこは分からない。まだ情報も多くないし、何と言っても辺境で仕入れた情報ってだけだからね。中央に進んで行けば今以上に詳細な情報も分かるだろうけど、まだ国の端っこじゃ今ぐらいが精一杯だよ」
確かにそうでしょうね。これから先、段々と明らかになっていくのでしょうが、今はまだそこまでの情報は手に入らないでしょう。問題は一気に<無敵の鋼鉄団>の所へ行くのか、それとも最後に回すのか。
ミクさんはどっちにするんでしょうね?。




