0657・本体空間とノノ
Side:本体
分体でリョージア王国王都の掃除を行っているのだが、何故かその合間に大きな眼の姿をした神が目の前に現れた。実際には大きな眼の中に大量の眼がある姿の神だ。あまり私に関わろうとしなかった筈だが、何かあったのか?。
「私は主に見る事に特化しておるし、それ故に忙しいのだ。今回ここに来たのはお前の様子を見る為と、幾つか教えておく事があるからだな」
「教えておく事?」
「まず1つ目だが、もう1つ分体を作る許可をお前に出す。どうも手が足りていないようなのでな。どんな姿にするかは好きにしろ。それから2つ目は新しい【根源魔法】を創ったらしいので、お前に教えておく。それと【重力魔法】もだ」
「重力……それを私に教えていいのか?」
「別に全てを教えたりはせん。お前が分体で役立てられる程度だ。それ以上のものなど必要あるまい? 喰えば済むのだからな」
「まあ、確かにそれはそうか」
「なら、受け取れ」
「ぐあっ!?」
またこれか!? どうしてこう予告も無しにやるのだ。不意にやってくる所為で痛覚を遮断せん間に送られてしまう。しかも痛みが酷いので痛覚を切る事すら出来ん。何でこんな事をやってくるのだ……!。
……落ち着いてきたから痛覚を遮断したが、まったく毎度毎度いい加減にしてほしいものだ。ブチ込まれた知識を精査して分かったが、新たに創られたのは【浄化魔法】か。
【清心】に【聖心】。【聖清】に【聖界】に【神聖界】。そして【神聖浄滅界】が新しく創られたようだ。
というか、【浄滅】の上である【神聖浄滅界】が本来の目的の気がするな。それ以外はついでと言っていいのではないかと思う。
【清心】と【聖心】は病んでしまった感情や心を正常化する為のもののようだ。【聖心】はトラウマにも効くらしい。結構な威力だが、精神にまで手を出していいのだろうか?。
【聖清】は【清潔】や【聖潔】の上位互換だな。体の悪いものなどを全て浄化できる便利な魔法だ。そして【聖界】と【神聖界】は範囲的な浄化になる。いわば【浄滅】の下位互換であり、【神聖浄滅界】が上位互換となる。
【重力魔法】に関しては4つ。【引力】と【斥力】に【加重】と【減重】であり、どういうものかは魔法名で分かる。どれも使い勝手は良さそうだが、地味に強力なのばかりだな。それにこれ以外の【重力魔法】なんて必要なのか甚だ疑問がある。
………まあ、余計な事は考えなくていいか。神どもが私に教えて問題無いと思ったのだろうしな。使えるものは何でも使えばいい。
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Side:ミク
「で、神様が急に来て分体をもう1つ増やしていいと言われたと? それは良いんだけど、何でわたし達に相談するの? 別にミクが決めればよくない?」
「ちょっと悩んでるんだよね。女性体と男性体はあるから後は子供の体かと思ったんだけど、犬とか猫みたいなのでも良いかなと思ってる。私達と一緒に居ても怪しまれないタイプの体」
「ああ、成る程。確かにそういう肉体のもあれば便利そうですね。とはいえ動かすのはミクというか本体なんですから、本体が操りやすい姿の者でいいのでは?」
「そうそう。どのみち食い荒らしに行く時には透明ムカデの姿なんだろうし、いつもの姿としてなら便利なヤツか簡単なヤツでいいと思うよ。居ても問題無いヤツなら変じゃないだろうし」
「犬でも猫でもいいですけど、どちらもこの星には居ないような気がしますよ? 狼とか虎なら居るかもしれませんが、それらは人間種にも居るんですよね。何かしら言ってきたりしませんか?」
「どうかしら? それにそんな事を言い始めたらキリが無いわ。ドラゴンの姿とかにしたら絶対に狙われるだろうし、それならもう犬か猫でいいんじゃない?」
犬か猫どちらがいいか聞いたら、2対3で猫だった。ちなみに私達とレティーとセリオは参加していない。レティーとセリオは分体の見た目なんてどうでもいいと言ったからだ。私も割とどうでもいいんだけどね。目立たなければ構わないし。
結局、白猫の姿に決まったのでさっさと出した。この部屋にはファーダも居るから結構狭いんだけど、何故かアレッサが早速モフモフし始める。
「ふぉぉぉぉぉぉ! 手触りが凄くイイ!」
「あら? これは凄くいい手触りですね。モフモフ度も高いですし素晴らしいです。何でしたら犬バージョンもあると更に良いと思いますよ?」
「まだ言ってるのかい。既に決まったんだからもういいだろうに……。ま、ミクなら幾らでも変えられるだろうけど、1つに固定しておかないと怪しまれるからね。それは無理だろう」
「それよりアレッサ、いつまで触っているのだ。我は玩具ではないぞ?」
「おお! 分体3は自分の事を我って言うんだ? 3体目なのに一番偉そう」
「そうではない。今回は動物なので今までとは違う一人称にしただけだ。そもそも分体が1つ増える毎にいちいち個性を創らねばならんという、こちらの身にもなってみよ」
「面倒臭いんですね」
「面倒臭いんだね」
「面倒臭いのでしょう」
「それは面倒よね」
「まあ、面倒なんだろうね」
「その通り面倒臭いのだ。とはいえ個性は創っておかねば混乱する元だからな。本体の一部領域を使って個性を持っているとはいえ、分体が増えれば良いという訳ではない。混乱せん為にも色々とせねばならんのだ」
「そんな事よりも分体3の名前を決めなきゃいけないんだけど、どうしようか? タマとかは無しで」
「えー!」
「さすがにそんなガイアでよく使われている名前はちょっとマズいですね。この星にもガイアからの転生者が居ましたし、ガイアにすら転生者が居たほどです。名前からバレる訳にもいきませんし、名前ぐらいしっかり考えましょう」
「ニャーとかニーとか?」
「鳴き声からというのは分からなくもないけど、流石に安直過ぎるかねえ。もうちょっと捻った方が良いんじゃないかい? ニーヤとかクーニャとか」
「クーニャは悪くないと思うけど、ちょっと呼びづらい? ニー、シュー、シャー、ナー。ナーニャ、ナーナ。ナナでよくない? 呼びやすいし」
「その考えならニニでもネネでもノノでも問題ないですし、シュシュでも問題ないですね。ナナだと日本人に居そうな名前ですし、ペットにもありそうですよ? 被りそうにないのはニニかノノですね」
「じゃあ、ノノで決定ね。一応……うん、雌猫の姿だから都合が良いし、これで終了。いちいち考えるのも面倒臭いからさ。次いくよ」
「うぇーい。ノノもアゲてくー?」
「お前、思っているよりも面倒臭いのだな? 早速、我を動物扱いしおって……」
「動物に見えるんだから、動物でよくない? だいたいのヤツが見た目で騙されるから動物の姿にしたんだしね。だから咄嗟の時に間違えないよう、普段から動物扱いしてるだけよ」
「お前の場合、単にモフりたいだけであろうが」
「いてっ!」
ノノが爪を立ててアレッサの手から離れると、即座にティアが抱き上げた。その速さにガックリ来たのか、ノノは諦めたようだ。今度はティアにモフられてるし、もう好きにしろって感じ。
未だにユルい感じの空気が流れているけど、今はいいか。どのみち今日食い荒らしたら明日は西に行くんだしさ。東が目的地だからこそ、その前に西を片付けておきたいんだよね。
特に連合とかいいながら、実際には寄り合い所帯にすらなっていない連中。東は強固らしいからこそ、先に西を叩いておきたいんだよ。東を先に潰すと西が面倒な動きをする可能性があるので、その芽を今の内に消しておきたい。
それからでも無敵の鋼鉄団の事は間に合うだろう。どうやら貴族の領地を乗っ取ったみたいだし。っていうか噂としてはあったんだけど、それが大陸最大の傭兵団だとは思わなかったよ。




