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0849・ヴィダ王国王都・王太子の宮殿




 Side:ヴィドラント・ユークス・ヴィダ



 下らない宮廷雀どものバカな言葉の所為で、ミク達がキレて暴れかねないと思って割って入ったけど、良い感じに納まって良かったよ。奴等は何に対して喧嘩を売っていたかを全く理解していないからなぁ。まったく、やれやれだよ。


 自室でそんな事を考えながら溜息を吐いていると、今日の正妃教育が終わったウィルミナが部屋に来た。どうやら今日はおれの部屋に来てもいいと許可が出たらしい。何気にお祖母様は厳しいんだよね。


 今は正妃教育が出来るのがお祖母様しか居ないから大変なんだ。お祖母様が存命な内に正妃教育を終わらせなきゃいけない。もちろん絶やさない為に全てを知っている特別な侍女が居るんだけど、それでも正妃であったお祖母様が教える形が重要なんだ。



 「お疲れ様、ウィルミナ。今日も大変だったみたいだね」


 「お疲れ様でございます、王太子殿下」


 「何だか他人行儀な気がするから、部屋の中だけでは名前で呼んでくれないかい? 君も2人きりの時には気を抜くといい。ずっと張り詰めていても上達する訳じゃないからね」


 「………それも前世の記憶なの? ヴィー」


 「そうだね。前世には効率という概念があって、掛かった時間に対する最大の効果とでも言えばいいのかな? そういう考え方があるんだよ。だから、ずっと学ぶのは良くないし、ずっと体を鍛えるのも良くないって分かってるんだ」


 「成る程、そうなのね。それにしても、時間に対する最大の効果……」


 「そう。今までのやり方では10日で10の効果があったとして、効率よくすれば10日で15とか20になったりする。上手く時間を使う事こそが効率かな? そして勉学や体を動かす事に関しても、休みを入れた方が効果は上がると分かっていたんだ」


 「そうなんだ。休みを入れた方が効果が上がる……」


 「必ずしも休みを入れれば効率が良くなる訳じゃないけど、労働は特にそうだね。上手く休みを入れながら働いた方が仕事は進むんだよ。むしろ休みを入れない方が疲れ果ててしまって、却って仕事が進まない事の方が多いんだ」


 「……うん。それは分かる」


 「それにしても自分の知らない知識が好きだなんてビックリしたよ。おれを好きな理由がそれかー、とは思ったけど、でも妙なところの女性をあてがわれるよりはウィルミナの方がいいけどね」


 「私も同じよ。知識も知恵も無いバカに嫁がされるくらいなら、知らない知識を沢山持ってるヴィーの方がよっぽど良いわ。正妃教育は大変だけど、知らない知識がどう使われるのかとか、楽しみで仕方ないから」


 「乾いた関係だなぁ。前世では考えられないけど、貴族同士の結婚でもそうなんだから仕方ないか。まして王族であり王太子なんだから、もっと無理なのは当然なんだな」


 「そこまで私達は乾いた関係でもないでしょう? 今はまだ無理だけど、陛下は出来得る限り早く挙式を行われると言っておられたわ。そうしたら夫婦の契りは交わせるでしょう?」


 「そう言いながら抱きついてくるのは勘弁してほしいんだけど?」


 「今日は殿方を誘惑する方法を習ったのよ。殿方はすぐに他の女を見るから、正妃がきちんと管理しなければいけないらしいの。コレを」


 「ひっ!? ちょっと握らないで! マジで握らないでウィルミナ!!」


 「ふふ、冗談よ。学んだ事は事実だけど、握り潰せとは習ってないわ」


 「冗談でも止めてくれ。男にとっては死活問題だからさ」


 「うふふふふ………」



 何か笑い方が猛烈に怖いんだが、本当に彼女が正妃で良いんだろうか? 今さらながらに疑問が湧いてきたぞ?。


 って、ちょっと待って。握ってはいないけど優しくするのも止めてくれ。結婚するまでは問題だから!!。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ミク



 ヴィダ王国の王都を出発して2日。私達はボンクル王国に入った。ヴィダ王国の王都を出てから人目につかない場所で【転移】し、デジム王国の北の辺境伯領に移動。その後はゆっくりと北上して今に至る。


 ボンクル王国の辺境伯領に来たが、やはり余所者に対する警戒心は強い。とはいえ傭兵が来ただけなので、そこまで過剰に反応はされていない感じかな。いつも通り悪人を喰うので、今日は宿をとって休む。


 特に喧嘩を売られる事も無いけど、不審者を見る目でジロジロと見てくる。あれほどの大敗を喫したのだから仕方ないとは思うものの、だったら最初から喧嘩を売るなと言いたい。必死になって警戒しても意味は無いだろうに。


 警戒するとしたら敵国の軍であって傭兵じゃないからね。何を考えているのかは知らないけど、ご苦労な事だよ。


 私達は酒場で夕食を食べているが、酔っ払いに絡まれる事もなく食事中だ。ただし悪意が飛んできているので、こちらを襲おうとしているのは分かっている。酒場の中で襲ってこない程度には分別があるらしいけど、どのみち喰うので問題なし。


 食事の邪魔をされるのは腹立たしいが、夜の食事のメニューだと考えれば腹も立たないのだから不思議なものだ。むしろもっと悪意を向けて来いとしか思わない。



 「鬱陶しいけど今日限りだと思えば問題も無いねえ。明日にはスッキリしてるだろうから、今日しか見られない光景とも言えるしね」


 「それでも鬱陶しい事に変わりはないんだけどね。明日には無くなるだけマシだけど、その明日には町を出て行くし……。何処まで行けばこの鬱陶しいのが無くなるのやら」


 「さて、それは分かりませんが、それでもある程度行けば無くなるでしょう。あくまでも国境近くだからこうなるだけですし、中央に近付くほど視線は減ってきますよ」


 「そうですね。ボンクル国を適当に見回ったら、次は更に北の国でしょうか? それとも中央部に向かって進みます?」


 「そっちは本物の戦国乱世らしいし、この大陸の中央には大森林があるみたいじゃない? その周りに出来たのがリョーク中央大帝国の始まりの国だった……って聞いたんだけど」


 「それで合ってる。中央大森林の大きさによっては、中央の国もそこまで大きくないのかもしれないね。あくまでも帝国の領土が他の国に比べて大きかっただけで、そこまで大帝国でもないのかも」


 「それより中央部がどうなってるかの方が問題でしょ。場合によっては小さく分かれた国自体が滅んでいるかもしれないじゃない? 戦争でさ」


 「戦国乱世なら十分に考えられるねえ。私達の場合は適当に見て回る事が大事だから、あまり戦争に巻き込まれても困るんだけど、それでも降りかかる火の粉は払わないといけないし……。なかなか面倒な事になったりするかも」


 「そう言いながら楽しそうにするのもどうかと思うわよ? シャル」


 「まあ、いいじゃないか。どっかの傭兵団の指揮権だけ奪って指揮してやろうかねえ。それなら面白い事も出来そうだしさ」


 「懲りないわねえ……。また囲われそうになっても知らないわよ?」


 「傭兵なら問題ないだろ。後腐れの無いように潰し合ってもらえばさ」


 「そういう状況に持って行く為に動くって事ですね。まあ、劣勢の方に味方して双方を潰し合わせればいいだけですし、そこまで難しい事ではないでしょう」


 「劣勢の方に【群狼王】を使えば、互角ぐらいの戦いは出来るだろうからね。後は潰し合いで終わりさ。それでも多数に引き分けたんだから立派だろう?」


 「引き分けというか、両者負けの気もするけどね」


 「どっちでもいいよ。これからも私達は悪人潰しを続けるだけだからね。それより、そろそろ宿に戻るよ。後ろをつけてくるかは分からないけど、襲ってくる可能性もあるから気を付けるように」



 ロフェルは私が連れて行けばいいとして、相変わらず大した事の無いエールでも酔っ払うね。どうしてこうも弱いのかは未だに分からないけど、撃沈しない程度に抑えられないものかな?。


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