0840・テモニー王国男爵領・町攻め
Side:マハル
テモニー王国の辺境伯領を陥としたボク達は、一路テモニー王国の王都へと進んで行きます。途中の村などはスルーし、進んで行く事3日。次の町へと辿り着きました。ここは男爵領だそうですが、町はそれなりに大きいですね。
「ヴィダ王国方面へ行く為に必ず通らなければいけない場所だろうからな。それなりに通る者は多いのだろう。敵国とはいえ商人には関わり無しな部分はある。相手がどんな国だろうが商売をするのが商人だ」
「確かに……。しかし町が広いのは、辺境伯領を越えた敵をここで止める為ではありませんか? 堀などもきちんと備えていますし、橋を落とせば入れなくなっているみたいです。篭城用の町と言うべきでしょうか?」
「橋を落として出て来れないようにしたら先に進めるな。別にこちらは無理に町を陥とす必要も無い。辺境伯領の者達を虐殺したから、同じ辺境伯領に報復しただけだ。そこからはフィルオル侯爵家と第2王子追跡だからな」
「そうじゃの。フィルオル侯爵家の者は何処まで行ったのか、第2王子は何処へ行ったのか。そこが明らかにならん以上は攻め込まねばならん。必要とあらば王都すら陥としてやるわ」
「それは横に置いておくとして、あの町はどうする気? 何か早速門を閉じてるし、こちらに向かって敵兵が何か構えてるけど……」
「弓を構えているだけだから、特に問題のある武器ではないな。放っておけばいい。それより橋を破壊して放置するならそれでも構わんが、どうする? きっちりと潰して行くか、それとも橋を壊して無視するかだが……」
「できれば潰していきたいの。何処かに抜け道があって後ろから奇襲されるという可能性が無い訳ではない。後々苦しむぐらいなら潰していくべきであろう」
「ならば橋を壊すか。ミク、今回は3発でいこうと思うが良いか?」
「橋を壊してから、門の破壊ね。了解、了解」
前に歩いて行った御二人は、今回も100メートルほど離れた場所から【爆熱球】を放ちます。最初にファーダさんが放って橋を壊し、次に再びファーダさんが門へ。そしてそれを追いかけるようにミクさんが門のすぐ下の地面へ。
こうする事によって門付近までも破壊してしまうのですが、門の近くの地面が抉れてしまうのが難点です。とはいえ今回の町は橋が無ければ入れないのですが、どうするつもりなのでしょうか?。
土煙がこちらまで来ますが、ミクさんとファーダさんは走って町へと近付きます。流石に目を開けていられないので顔を腕で守りますが、土煙が晴れた後には、何故か橋の代わりに地面が繋がっていました。
その中を御二人が戻って来られるのですが、僕たちは意味が分かりません。
「【土壁】の魔法を使って、橋の代わりに地面を隆起させただけだよ。あれで橋が無くても町中に進入できる。心配しなくても全部終わって町を出る時には、あの地面は元の堀に戻しておく。だから苦労するのは町の奴等だけね」
「………あっはっはっはっはっ!! 相変わらずメチャクチャでとんでもないのう! これじゃから面白いのだ。では、そろそろ号令を頼む!」
「仕方ないねえ。お前達! ここから先にもまだまだ町はあるんだ! こんな所で無駄に命を散らすんじゃないよ!! それじゃ、突撃ーーー!!!」
「「「「「「「「「「ワォォォォォォォォォォン!!!!」」」」」」」」」」
【群狼王】のスキルの事は聞きましたけど、本当に尋常じゃないと思いました。味方の士気を高いまま維持できると言いますか、下がった士気を上げられるって反則過ぎるでしょう。素人のボクでもそう思います。
色々な人が居るのが軍ですし、その中でも色々とあります。更には殺し合いが得意でない人も、血を見ると駄目な人も中には居るかもしれません。そんな人達の士気を強制的に上げて、下がっても魔力を使えば上げられる。
それに前回も見ましたけど、士気が上がっているというよりは全員が戦闘狂にでもなったような反応でした。正直に言って高揚感とか興奮で、自分が何をしているのか本人もあまり理解していないのでは? と思えてなりません。
そんな一種のバーサーカーみたいな人達と一緒に突撃していきます。地面があるので橋がある必要もなく、全員が突撃して町中へと突入。敵兵を手当たり次第に倒しながら進む。ここまでは前回と同じですが、今回はスキル持ちの騎士が複数居たようです。
一番前で先代公爵が戦っていますが、明らかに分が悪いですね。僕達がその間に割りこみ、一気にスキル持ちとの戦いを支配。その間に周りの連中を男爵の屋敷に向かわせます。
「チッ! 貴様それなりに出来るようだな。しかじっ!?」
「いちいち戦場で喋ってるから、そうやって殺されるんですよ? ここは戦場であり、既に戦いの最中だというのに……。ちょっと暢気に過ぎませんかね?」
「貴様……! お前達、この勘違いした愚か者を叩き殺してやれい!!」
「「「「「おう!!!」」」」」
全員がスキル持ちの騎士とはいえ、僕が負ける可能性なんて極めて低いんだよ。何故なら僕以外にも居るんだから、僕だけに注目してると殺されるに決まってる。
「なっ!? 貴様ら何者だ!!」
「高が多少のスキルしか使えないヤツなんて相手になる訳ないでしょうが! この程度の腕で調子に乗るとか、どうして馬鹿ばっかりなのかしらね」
「弱いからでしょう。自らが強いと勘違いしている弱者だから調子に乗るのですよ。本当の強者は世の中に強い者など沢山居る事を知っていますし、それ故に油断などしません」
「そうね。こいつら揃いも揃って大した事が無いし、おまけにプレートアーマーばっかり。そんな冑を着けてるから私達の事が見えないのよ。どうせ一撃で死ぬんだし、プレートアーマーって意味無いでしょ」
「こいつらにとっては意味があるのだろう? こちらの攻撃力が高過ぎて何の意味も無いが、一般の攻撃ならば防げる。とはいえ、俺からすれば怯えすぎだと思うがね」
「ま、どうでもいいじゃん。そこのリーダーっぽいヤツはマハルに任せて、私達はさっさと行くよ。男爵一族も皆殺しにしなきゃいけないんだしね」
「何だと!? 貴様らのような蛮族をこの私が許すなどぅぉっ!?!」
「他所見するから殺されるんですよ。敵を目の前にして他に気を取られるとか、スキル持ちの騎士ってどうしてこう……!」
何でスキル持ちの騎士って基本をないがしろにしてるんだろう? スキルさえあれば強いと思い込んでるのか、それとも環境がそうさせているのかもしれない。幾らなんでもスキルを持っているのに弱過ぎる。
真面目に修行をしていない証拠だと思えるんだけど、何故かそんな奴等が偉そうにしてるんだよね。スキルが絶対の指標みたいになってるんだろうか? スキルさえあれば騎士になれると決まっているなら、あの弱さも分からなくはない……かな?。
騎士になるのが大事で、後は大して努力もしない。そういう形なら弱いのは分かる。でも中には努力して強くなる人も居ると思うんだけど、今までそんな人に会った事がない。となるとやっぱり居ないのかな。
っと、そんな事を考えていないで、早く男爵の屋敷へと行かないといけない。ミクさんとファーダさんは路地に消えたから悪人を喰いに行ったんだろうし、他の人達は屋敷に行っちゃってる。
っていうか、大通りに1人ポツンと居るのも、場違いって感じがして何か恥ずかしいな。さっさと移動しよう、移動。




