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0830・北の辺境伯領・領都の惨状




 Side:テイメリア・フェルス・ゴールダーム



 侯爵家の領都を陥としたものの、そこには侯爵家の者は誰も居ませんでした。仮に侯爵家の者がテモニー王国に逃れたとして、本当に迎え入れられるのかははなはだ疑問です。正直に申して、そんな火種になりそうな者など始末すると思うのですが……。



 「そうだね。もし私がテモニー王国の者なら情報や金などを全て手に入れてから始末するか、それともヴィダ王国に返すよ。国同士の関係なんて良くなったり悪くなったりするものさ。ずっと悪いなんて事も無いし、ずっと良いなんて事も無い」


 「そう考えた場合、ずっと悪くなる原因なんて居ても邪魔って事? だから殺すか追い返すんでしょ?」


 「その通りさ。正直に言ってテモニー王国とやらも頼られたって迷惑だろう。3代前に王族の血筋が入ってるっていっても、正しくは他国の貴族だからねえ。それが居る所為で延々と因縁に引き摺られる恐れがあるんだ、そんなものを将来の子孫に背負わせる訳にはいかないだろう?」


 「国同士の関わりなど冷えて乾燥しているものです。だからこそ他国に依存してはならないのですし、他国を信用してもいけないのです。付かず離れず、警戒し続ける関係が一番正しいと言えるでしょう」


 「それはそうなんだろうけど、それぐらいは逃げた侯爵も分かってそうだけどね。なんで事を起こしたのやら? 言葉は悪いけど、こうなるって想像ぐらい付くと思うけど……」


 「それは微妙なところだな。少なくともフィルオル侯爵家のやっていた事はなかば以上成功していた。いわば最後の最後で全てが引っ繰り返された形だ。それを想像しろというのは酷だろう」


 「まあ、最強の怪物が現れて全てを引っ繰り返すなんて想像は無理か。逆に言えば全てが引っ繰り返されてパニックになったのかも。全てが順風満帆だったのに、それがいきなり崩れ去ったんだからさ」


 「そうですね。フィルオル侯爵家の立場になってみれば、全てが上手くいっていたのに、いきなり駄目になったという情報が舞い込んできたのです。よく逃げようと考えられたと思いますよ。少し前まで上手くいっていたのですから」


 「そういえばそうね。何かの冗談だと思わず、フィルオル侯爵家ってすぐに逃げてるわ。何か決定的に信じられる情報でもあったのかしら? そうでなきゃ、いきなり失敗したから逃げろって言われても……普通は逃げないわよ」


 「確かにね。しかも上手くいってる最中にいきなりだ。その御蔭で今のところ助かってるんだけど、何で失敗したのを信じたのやら……。全ては辺境伯の領都に行けば分かるかねえ? それとも既に占領されてるか。どっちかだけど、どちらなのやら」


 「出来れば耐えていてほしいのですが、一領主が挟み撃ちにされて耐えられるかと言えば……。それに侯爵が味方のフリをして近付いた場合、門は簡単に開くかもしれません。そうなると、もう……」


 「全ては行ってからさ。軍も動き出したようだし進もうじゃないか。今のあたし達にはそれしか出来ないんだしね」



 そうですが……辺境伯とその領都の人達は大丈夫でしょうか?。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:ファーダ



 あれから2日。やっと辺境伯の領都に来たが、そこにあったのは略奪の限りを尽くされた廃墟だった。どうやらテモニー王国とフィルオル侯爵家がメチャクチャにしたらしく、未だに黒煙が上がっている家屋などが見え、一部には叫んでいる人達が見える。


 俺達は町へと入り、多くの人達の亡骸を弔いつつ、生き残っている人達を助けて回っていた。この星には【詠唱魔法】があるが、その1つに【治癒魔法】は存在する。だが、俺達は【詠唱魔法】を殆ど知らないので使えない。なので瓦礫の撤去などがメインだ。



 「申し訳無いが、俺が使えるのは【根源魔法】であり、この星に設定されている【詠唱魔法】ではないのだ。だから【治癒魔法】を使用する事は出来ない。簡易的な治療程度なら出来るが、それ以上を行うのは不可能だ。そもそも俺は傷つかんし、傷ついてもすぐに治るのでな。余計に必要が無い」


 「そうか。そなたにも知らぬ事があるのが驚きだが、使えぬ以上は仕方ない。今は魔法使い達が駆けずり回っておるが、辺境伯領は壊滅じゃ。辺境伯の屋敷には殺された辺境伯一族の死体がさらされておった。テモニーの者どもは畜生以下だったらしいわ」


 「少なくともさらす事まではしなくていい筈なんだけどね。どうやら向こうさんは一線を越えたみたいじゃないか。どうせあんたの事だ、許す気は無いんだろう? このままじゃ舐められたままになっちまうからねえ」


 「その通りよ。このままでは我が国は舐められたままになるし、辺境伯の無念を晴らしてやらねばならぬ。我が国に手を出した以上、それは火傷では済まぬのだという事を教えてくれるわ……!」



 怒り狂っているな。まあ、気持ちは分からんでもない。俺達でさえ舐め腐ってくれている奴等に容赦などせんからな。それに死体を玩具のようにしてさらすのは駄目だ。それは明らかな悪であり、悪である以上は容赦など要らん。


 シャルやティアにロフェルも激怒しているし、敵に容赦をしなくてもいいのは助かる。俺達なら門は簡単に開けられる。が、むしろ門を開けずに阿鼻叫喚の地獄絵図を作った方がいいだろう。なーに、やりようは幾らでもある。


 俺達は辺境伯の町の瓦礫撤去などを行いつつ、周辺の貴族に使いを出して食料と受け入れを待つ。既に辺境伯の領都は壊滅しており、ここで暮らしていくのは無理だ。全て片付けてから整地し、再び町を作るまでは長く掛かってしまう。


 そこまでの破壊をされているのだから、よほど入念に破壊したのが分かる。おそらく行われたのは略奪と火付けだろう。女子供だろうが老人だろうが何だろうが、切られて突き刺された死体と、火に焼かれて死んだであろう死体しかなかった。


 それこそが3人がブチギレている最大の理由でもある。だがそれは他の騎士や兵士も同じだ。自国の領土であり、いわば仲間をここまでにされた以上は、怒り狂うのは当たり前の事であり当然の権利でもある。


 今我慢出来ているのは目の前に助けなければいけない人達が居るからであり、その人達が居なければすぐに追いかけているだろう。まあ、関係なくテモニー王国に侵攻するのだが。



 「魔鳥が帰ってきたが、陛下が「後ろは気にせず、出来得る限りテモニーを潰せ」と書かれておられる。辺境伯領の詳細を送ったのじゃが、激怒されておられるらしい。後ろを気にするなと言われる以上、補給はきっちりしてもらえるのじゃろう」


 「そうでなければ「後ろは気にするな」なんて書いたりしないだろうさ。あたし達は食料の事もあるから、ここで一旦止まるしかないね。まだ無事な建物とかあるから、ここで騎士と兵士を休ませよう」


 「うむ。周辺の貴族を含めた所から食料が来るじゃろうから、それが来たら出発じゃ。我が国に手を出した事、必ずや後悔させてくれるわ!」



 怒りのままに動くのは良くないが、今すぐ追いかけないだけ十分な理性は残しているな。しかし、ここまで酷く破壊すれば全面戦争になるのは当然なのだが……テモニー王国には余ほど勝つ自信があるように見える。


 それともここまでの破壊は挑発で、何処かでヴィダ王国軍を待っている? こちらがキレて追いかければ、罠に嵌めるつもりだった可能性は無いだろうか?。



 「それはあるだろうけど、考えても意味は無いね。何故ならあたし達は動いてないしさ」


 「まあ、それはそうか。俺は一足早く堀を直しておこう。近くに敵軍が居るなら、今の状況では攻めて来るかもしれん」


 「防御も碌に無いからね。確かに攻めて来る恐れは無い訳じゃない。堀だけでも整えておくべきか」



 壁は【土剛壁】で十分な物が出来るんだが、そこまですると色々と問題があるかもしれんので、やりたくても出来ない。かなりの防御力になるからな、そんな物を残していく訳にもいかん。


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