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0829・フィルオル侯爵領・領都陥落




 Side:ロフェル



 フィルオル侯爵領の領都前。敵はなるべく野戦でこっちを削ろうと思ったんだろうけど、まさか不死玉を使っての自爆をやってくるとは思わなかった。たしかにあんな兵が迫ってくれば恐怖でパニックになっても仕方ないと思う。アレは無理だ。


 そんな恐怖の兵も遠くから射殺してしまえば済むと気付けば、対処の方法はあるって訳ね。私も恐怖を感じていたけど、【火魔法】を使って遠くから火を着けてやればいいっていう提案には驚いた。殺る気に満ち溢れた意見だと思うわ。


 もちろん先に爆発させてしまえば敵にしか被害が出ないんだから当然だけど、敵を爆死させるという、今度は敵を恐怖のドン底に陥れそうな策を言い出すなんてね。私? もちろん嫌いじゃない。相手がやってきた事を返すだけだし。


 まずは侯爵領の領都を陥としてから進む事になる。何故なら無視して進むと、領都から追加の兵が襲ってくるかもしれないからだ。でも、相手はそう思わせて時間を稼ぐ気なんだと思う。それをどうするかの話し合いをするらしい。何故か私達も参加しなきゃいけないみたいだけど。



 「ここは無視して一気に辺境伯の領都まで行くべきです! どうせ敵はこちらを引き付けておきたいだけなのですから、それにバカ正直に付き合う意味などありませぬ!」


 「そうは言われるが、そう思っていたら背後から十分な兵で強襲されたらどうする? 相手がこちらの動きを見破っていたらだ。そうすれば辺境伯領への救援どころではなくなるぞ! ひいては惨敗した愚か者どもと罵られるわ!」


 「両者の意見がここまで真っ二つに割れておってな。それでどうしたものかと思うておるのじゃが、何か妙案はないか?」


 「どちらの意見も正論なだけに、どっちかが間違ってるって事が無いのが痛いねえ。でも解決するなら簡単だよ」


 「ほう? それは?」


 「問題は領都に兵が十分残っているかどうかだ。兵が少なきゃ大した事はできやしないし,多ければ奇襲で相当の損害を受けかねない。問題の根源は領都に居る敵兵がどれぐらいか分からない事。それと門を開けるのに相当の時間が掛かり、そして犠牲が出てしまう事だ」


 「そうじゃの。敵兵の数が分かれば動きようはある。とはいえ、それには領都の中に侵入させるか、門を開けて少し戦ってみるしかない。反撃が少なければ兵も少なく、反撃が苛烈ならば兵は多いとなる」


 「しかし門は簡単には開きませぬ。こちらは向こうのように用意はしておりませぬので、アンデッドの核を用いるあの武器は持ってはおらぬのです。それでは門を破るに従来の方法を使うしかなく……」


 「そんな方法では時間が掛かり、犠牲も多くなる。とてもではないが、そんな策を使うわけにはいきませぬぞ! やるならばお前達だけでやれ」


 「もちろん門を開けるのは俺達がやる、いちいちお前達の力を借りる必要も無い。しかし門が開いた後はお前達の番だ。いいな?」


 「「なに!?」」


 「門が開くならば後はこちらでやろう。しかし門が開くのか?」


 「最悪でも数発攻撃すれば開く。最も速い場合は一撃で潰れる。ま、とりあえず攻める準備をして待っているがいい」



 ファーダはそう言うと、領都の門へと歩いていく。先代公爵は指示を出しているけど、公爵家の騎士も王軍の騎士もバカにしたような感じで居る。まあ、頭の悪いのはどうもいいし、私達は興味も無い。精々ファーダの矛先がそっちに向かないといいわね。


 領都の門まで大凡おおよそ100メートル。敵から散発的に石や矢や魔法が飛んでくるけど、こちらにまで届くものはない。



 「さて、大した門ではないが、さっさと終わらせるか。【爆熱球】」



 ファーダが前方に大きな魔法陣を出すと、そこから巨大な火の玉が現れ、それが領都の門へと飛んでいく。壁の上に居た兵士達は慌てて逃げたようだけど、あの【爆熱球】は結構速い。あの逃げ足で間に合うのかしら?。


 そして巨大な火の玉が門にぶつかり、「ドゴーーーン!!!」という大きな音と共に大爆発の余波がこちらにまで飛んできた。石や砂などがこちらにまで届き、ちょっと痛いけど目をつぶって我慢する。


 腕で防いでいても相当の爆風がこちらにまで来た。下を向き爆風が治まるまで待つと、ファーダの魔法一撃で門が跡形も無くなっているのが見えた。それどころか門の周りの壁まで無く、門の近くの建物まで破壊の爪痕を残している。


 とんでもない威力なのは見ていれば分かるのだが、ファーダは何事も無かったかのように軍の方へと歩きだし。「さっさと攻めろ!」と大きな声で言った。それをきっかけに慌てて動く騎士団と王軍。明らかにファーダを見る目に怯えが見えるわね。


 私達もまた戻り、殿しんがりの位置まで後退しようとすると待ったが掛かった。町に攻め込むのを見届けろという事らしい。



 「何でわざわざそんな事をさせるんだい? ファーダはやるべき仕事をやっただろうに、他にあたし達が必要になる事なんて無いだろう」


 「すまぬが居てくれ。そなたらが見ているとなれば阿呆な事をしようとする者もらんじゃろう。その事も分からぬ者は、分かっておる者に切られるのみよ」


 「ヴィダ王国にも愚かな兵士が居るのかい。ボンクル王国も散々やってくれたからねえ……。とはいえ、ここは自国内だろうに。それでもやらかす奴が居る、と?」


 「そんな者は何処にでもる。そなたは将軍として立派だったのか、それとも兵士がしっかり規律を守っておったのじゃろう。こちらでは残念ながら、下らぬ事をする愚か者が当たり前にるのだ」


 「睨みを利かせていれば下らぬ事をせんなら構わん。皆は戻って俺だけ居てもいい。別に苦ではないからな」


 「流石にファーダに全てを任せるのもアレだからね、私達もやるさ。それに多く居る方が目立つだろうし」


 「それにしても下らない者達でしたね。指揮命令系統が2つもあると揉める元なのですが、あの者達は理解もしていないのでしょうか? 戦いとはそんな事をしていても勝てるほど甘い物ではないのですが……」


 「まあ、今回ので分かったでしょ。自分達に対してアレが飛んできたらと考えたら、下らない事は言ってこないわよ。そもそもファーダはミクと同じなんだし、敵に回せば喰われるだけ」


 「わしはそれを知っておるが、大多数の者は知らぬからのう。ここで十分な実力を見せくれて良かったわ。これでいちいちくちばしを挟んでくる事もあるまい」


 「あら? どうやら兵士が戻ってくるようですね。おそらく大して敵兵が居なかったのでしょう。ついでにあそこまで破壊されたのですから、降伏したのかもしれません」


 「それは確かにあろうな。あんなものを見せられたら逆らう気など起きぬ。もし町中に落とされでもしたら、それだけで町は大混乱じゃ。それを機に略奪に走る民まで出かねん」


 「ならば一発落として、後は高みの見物をしていればいい。楽に済むならば、それに越した事は無い」



 ファーダの言い分に先代公爵は若干引いてるけど、そもそも怪物は怪物の感性で物事を語るから、ズレてる部分はズレてるのよ。考えたって理解出来ないし、正面から受け止める意味も無い。そういうものと考えるのが一番いいのよね。


 おっと、兵士が走ってやってきた。何か報告する事でもあるのかな?。



 「はぁ、はぁ、はぁ。申し上げます! 領都には侯爵家の者は誰もらず! 既に軍を率いて北に行ったとの事でございます。また町の兵士は降伏しており、侯爵家の屋敷はもぬけの殻でございました!!」


 「うむ、分かった。騎士や兵士に撤収を伝えよ。すぐに北の辺境伯領へ進軍する!」


 「ハッ!」



 貴族は相変わらずだけど、逃げ足だけは速いのよねえ。


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