0826・タウンハウス内での話し合い
Side:アレッサ
「とりあえず一旦話を戻しましょう。仮にわたし達が二手に分かれるとして、どういう風に分かれるのが良いのかしら? 何か案がある人は居る?」
「もし分かれるとしたら、ミクさんとファーダさんは分かれた方が良いと思います。何かあっては困りますし、御二方は眠る必要がありませんからね。何かあってもすぐに気づけます」
「そうですね。それにミクとシャルも分かれた方が良いでしょう。ミクは指揮もできますし、シャルは元々英雄であり将軍です。私達はそういった経験がありませんから従っていた方が良いですしね」
「私よりは本物のシャルの方がいい。それを考えるとシャルは北かな? 向こうはフィルオル侯爵家と北のテモニー王国らしいし、それを考えると向こうの方が多人数なんだよ。むしろ将軍の腕の見せ所じゃないかな」
「流石にそこまでは出来ないね。仮に軍権を預けられても無理さ。将軍をしていた時と違って、下っ端がついて来ない以上はどうにもならないよ。精々が相談役ぐらいじゃないかい? それ以上は難しいだろう」
「それでも相談役になってくれるだけ、ありがたいと思うがな。己と同じように物が見える者は貴重だ。おそらくは先代殿が指揮権を持たれるだろうから、そなたの話を聞かぬという事はあるまい」
「それなら良いけどね。あとはファーダが情報収集をしてくれるかどうかだ。あたし達の命を優先すると、夜の情報収集をし辛いだろうから難しいかな?」
「それは無理だね。おそらく先代公爵が頼んできてもファーダは断るだろう。皆の安全の方が先だしね。ファーダには適当にアイテムバッグを持たせておくから、それで問題ないかな? 干物とかなら持たせておけると思う」
「それを考えると、あたし達の方は食事が良くないって事かい? それはちょっと勘弁してほしいんだけど?」
「こっちだって変わらないよ。流石に戦争の時に自分達だけ良い物を食べる事は出来ないし、兵士が爆発する危険は冒せないからね。そっちにもドラゴン肉を持たせるぐらいじゃない?」
「「ドラゴン肉!?」」
おお、やっぱりこっちの星の者もドラゴンには驚くね。まあ、当たり前と言えば当たり前なんだけど、わたし達にとっては倒せる敵でしかないからさ、昔と違って慣れちゃった感があるのよ。ドラゴンに。
「私達は普通にドラゴンが倒せますから、ドラゴンのお肉ぐらい持っていますよ。もちろん腐らせない為に大半はミクが持っていますが、私達だって少々の干し肉ぐらいはこうしてアイテムバッグの中に入れています」
「マジかー……。異世界ファンタジーの定番たるドラゴンの肉を持ってるなんて驚きだよ。そもそも倒せないのがドラゴンだったと思うんだけど、そっちの面子だと倒せるんだなぁ」
「まあ、あたし達も最初はそんな事が出来るなんて思ってなかったけどね。気付いたらって感じさ。1頭倒せば数年は遊んで暮らせるだけの金が入るし、あたし達は遊んだりなんてしないからね。酒飲むぐらいだから、後は暇な日々さ」
「だからこの戦国乱世の大陸に来たんだけどね。説明は出来なかったけど、本当はミクに誘われて暇潰しに来たんだよ。わたし達は全員寿命が無いから、暇なのは辛いんだよねー」
「暇潰し……。とはいえそれで助かったのも事実だから、何とも言えないなぁ。実際来てくれなければ、間違いなく毒で死んでただろうしさ。そういう意味では国の恩人でもあるんだと改めて気付いたよ」
「そうですな。こちらの御仁達が居らねば、我が国はテモニーの傀儡に乗っ取られるところでした。第2王妃は捕縛出来たでしょうが、第2王子がどうなったかは……」
その時ドアが開いて外から先代公爵が入ってきた。どうやら王城での話は終わったみたいね。
「第2王子は行方不明、おそらく王城の中には居らぬ。王城の門番がフィルオル侯爵家の紋章が描かれた馬車が出て行ったのを目撃しておった。おそらく第2王子はその中であろう。4頭牽きにしておったらしい」
「それではかなりの速さで進んでしまいますな。追いつけぬでしょうが……」
「そうじゃ、行けてもフィルオル侯爵家までであろう。流石にテモニー王国まで逃れる事は出来ぬよ、北の辺境伯が立ち塞がるからの。更に言えば既に魔鳥を飛ばして北の辺境伯には報せておる。おそらくは間に合う筈じゃ」
「ただし篭城に入ると、目の前を通過される恐れはありますな。言っても仕方ありませぬが……」
「そうじゃの。逃がすなと言うのは簡単じゃが、決死の覚悟で止めねばならぬようになる。それでは野戦にならざるを得ぬし、辺境伯領の兵だけでは壊滅させられてしまう。流石にそこまでせよとは誰も言わぬであろう」
「むしろ第2王子を押し付ける形になりましょうかな。こちらとしては大々的にテモニーのやった事を流布すればいいだけですし、それだけでテモニーから嫁を迎え入れるなどという事はしますまい」
「すればどのような目で見られるか分からんからの、拒否するのは当然よ。そのうえ第2王妃が何をしておったかも明らかにされる。そうすれば帰ってくる事など出来んし、向こうも厄介者扱いであろう」
「鼻つまみ者かもしれませぬぞ。ま、正しくはそう仕向けるのですが」
「それぐらいは役に立ってくれんとのう。散々こちらにやってくれたのだ、そういう国だと印象づけてやるわ。そうなれば他国の信用も低下するじゃろう。幾らやられた方が悪いとはいえ、それでも信用出来ぬ国など信用せんわ」
北の国の事はどうでもいいし、第2王子もどうでもいいのよ。わたし達にとってはどういう風に分けられるかの方が重要なの。そこの話をしてもらわなきゃ困るのよね。
「で、わたし達はどう分かれたらいいか改めて話し合いましょう。さっきまでに決まったのはミクとファーダは分かれる。そしてシャルはミクとは違うチームね。これはシャルが元将軍であり、護国の英雄と言われていたからよ」
「ふむ。北のテモニーと西のナロンダにそれぞれ分かれてくれるという訳か。確かにそなたらが居てくれれば戦いも楽になるな。しかし分かれ方か……」
「アレッサとティアも分かれた方がいいね。血と精気の違いはあるけど、同じ戦場よりは別々の方がいいでしょ。それとロフェルはシャルの側だね。何といっても馬鹿力があるから、有効に使えるでしょ?」
「確かに有効に使えるだろうけど、代わりに巨大なハンマーを作っておいてくれないかい? 木の門とか土塀とか破壊する用の槌。できれば柄は2メートルくらいのが良いね。どうせロフェルなら振り回せるだろ」
「そりゃ出来るけど、いつものようにドラゴン素材じゃないと耐久力が保たないわよ? 本気を出したらドラゴン素材でも保たないけど」
「いや、ドラゴン素材が保たないって……なに?」
「前にも言ったけど、ロフェルは鬼神族なんだよ。そのうえスキルに【剛体】というのがあってね、それと【陽炎の身体強化】を同時に使えば、ドラゴン素材の武器すらパワーに耐えられないってわけ」
「うわぁ……」 「「………」」
「そう言う気持ちは分からなくもないんだけど、ミクは素のパワーだけでドラゴン素材が保たないからね? 【身体強化】や【剛体】を重ねないといけない私以上は居るのよ」
「だからこそ最強の怪物なんですよね。ドラゴンを一瞬で殺したのを初めて見た時には眩暈がしましたよ。そこまでかと」
「本当に一瞬だったものね。ミクにとっては普通の事なんでしょうけど、一瞬でドラゴンの首が落ちた時には変な笑いが出たわね。私は」
どっちの気持ちも分かるけど、私なんてノーライフキングがボコられるのを目の前で見たわよ。今思い出しても呆れるしか出来ないけど。




