0821・ヴィダ王国の王都に到着
Side:ファーダ
先代公爵との話の後は部屋で休んだミクと代わり、俺はこの時間から動き出す。こちらの大陸に来て初めて本性をバラしたが、特に何か問題になるような事は無いな。おそらくだが転生者が居たからだろう、ミクが本性を出したのは。
転生という事実が既に信じられないようなものなのだ、もう1つ増えたところで問題あるまい。おそらくはそれぐらいだろう。それでも伝えられた側からすれば、やってられない事実だろうがな。国家が勝てない個人が存在するのだ。
それでも悪人しか食い荒らさないだけマシであり、問答無用で皆殺しにされないだけありがたいと思うべきだが……。知った側がどう思うかは相手の自由だからな。特に孫の方は愚かな事をしかねん。まあ、したらしたで消えるだけだとは伝えたが、どうなるやら。
公爵家の町にもスラムはあるが、これはどちらかというとワザと許しているという感じだな。そうする事でコントロールしているのだろう、随分とマシなスラムだ。子供も見当たらないし、掃き溜めとは言い難い状態だ。
それでも悪人は居るので喰うし、【空間魔法】の【掌握】を使いつつ魂の判別をする。【空間魔法】が無かった頃は面倒だったが、今は【掌握】を使って一気に魂を判別出来るので、悪人の居る場所はすぐに分かるようになった。
とはいえ簡単に分かるようになっただけで、喰いに侵入したりは今までと変わらない。悪人の数が多ければ時間が掛かり、それだけ苦労をする事になる。ミクは公爵家の中で監視しているので、今日は俺1人だ。
ミクが監視をしているのは、ミクや第4王子の存在を知って動くヤツが居るかどうかの監視となる。先代、今代、孫。この3人はミクが怪物だと知っているが、他のヤツは全く知らない。知る事が出来た騎士は全員喰ったので主要な3人しか知らないのだ。
ミクが怪物との情報が出回るなら3人プラス辺境伯とヴィーと偽治癒師。この6人しか居ない。よって情報元は容易く分かるようになっている。場合によってはお漏らししたヤツを喰って終了だな。それが一番良い。
悪人を喰いつつ探しているが、武闘派としてそれだけしっかり手綱を握ってきたんだろう。本当に悪人の数が少ない。少なすぎて俺が喰う分が無さ過ぎるな。早めに王都に行って喰ってくるか。時間が掛かるのは早めに何とかしたい。
…
……
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王都に飛んできたのは良いが、ここはまた随分と悪人が多いな。とりあえずスラムから喰って行くか。騒ぎにならないのはそちらだからな。
王都のスラムはアレだ、風俗街みたいな場所だと言えば分かりやすいと思う。かなりの賑わいではあるんだが、それだけ悪人の数も多い。見られていないヤツから喰っていくんだが、なにやら妙な暗躍をしているヤツも居るぞ?。
書類を調べると何処ぞの貴族と繋がっているのが分かる。役に立つか立たないかは別にして、ちょっと持っていって保存しておくか。別に損な事は無いし、要らないようならコソッと廃棄すればいいだろう。
誰も見なければバレないし、バレなきゃ誰の仕業か分からない。それに悪人を食い荒らしているだけだし、そのまま証拠書類などを置いていれば誰かに燃やされるかもしれん。これは必要な措置だ。
ついでにいつも通り金銭を頂いて行くが、これは唯の報酬なので気にしなくて良い。それに有効活用と社会への還元が必要だからな。闇の金銭を、また闇に戻されても困る。日の光の元に出さないといけない。
スラムの悪人が喰いにくいがコレに関しては悪人ではない客がいるからだ。前にもこんな町があったが、こういうタイプは仕方がない。次の日になったら突然娼館に人が全く居ないというホラー展開になるかもしれないが、そこは許してほしいところだ。
悪人ばかりの娼館に行くのが悪いという事でもあるし、そもそもそういう所だと知っていた筈だからな。俺が喰わない以上は普通か善人だが、だからといって自分から悪人の所に行っているヤツを助ける義理は無い。
色々な事を考えつつ喰っていかないと、いちいち面倒でストレスが溜まりそうだ。やはり普通のヤツや善人が邪魔で仕方ない。こんな奴等がスラムに来るなよと言いたくなる。それでも我慢して悪人を喰うし、必要なら眠りの香りで眠らせていく。
そうしないといつまでも終わらない可能性があるくらいに元気な奴等が居るんだよ。俺としては今日中に出来得る限り終わらせておきたいんだ。明日も王都の掃除なのは分かりきっている事でもあるから、余計に減らしておきたい。
今日も出来得る限り頑張るが、このままだとスラムすら終わらないで朝を迎えそうだ。何処の国でも王都が一番汚れが酷いが、この国も変わらないらしい。
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Side:ミク
次の日。私達は2つの馬車を護衛しながら王都へと進む。1つの馬車には辺境伯と偽治癒師。もう1つの馬車にはヴィーと先代公爵が乗っている。朝食でも変わらず公爵は引き攣った顔をしていたので、相当に私が怖いらしい。
まあ、昨日喧嘩を売ってきたのは公爵も同じだ。最初に喧嘩を売ってきたのは孫だが、その後は私を舐めて騎士を嗾けてきたからな。アレが無ければまだマシだったのだろうが、実に余計な事をしたというところだろう。
アレが無ければ私は正体を晒していない可能性が高い。それも含めれば余計な事をしたという認識があるのだろう。ポンコツな孫に比べれば、まだ周囲が見えているようではある。所詮その程度と言えなくも無いけど。
それはともかくとして、王都はそんなに遠くはないので今日中に着くらしい。私達にとっては遅すぎてストレスが溜まるような旅路だが、それもようやく終わるようだ。いちいち【空間魔法】を使ってやる義理も無いので徒歩で来たが、本当に面倒臭い。
馬車自体が遅いので何とも言えないし、ここまで鈍足でよく納得するものだ。特にヴィーは色々な乗り物を知っているだけに余計にそう思う。私なら自分の足で移動した方が速いので、わざわざ乗ったりなどしない。
ウダウダと下らない事を考えて暇を潰していると、ようやく前方に王都が見えてきた。私達がそのまま進んで行くと。貴族だからかすぐに通され、私達もさっさと王都に入る事が出来た。そしてそのまま公爵家のタウンハウスへ。
辺境伯だけは自身のタウンハウスへ行き、中を確認してくるそうだ。きちんと管理しているか、手を抜いていないかなど、確かめる事は沢山あると聞いた。今回は唯でさえ抜き打ちのような形なので、余計にしっかりと確認したいらしい。
気持ちはよく分かると先代公爵も言っていたので、そういうものなのだろう。私達は気にしないし興味も無いので、そのまま公爵家のタウンハウスへと行く。
中に入って馬車を降りた3人は、先代公爵を先頭にしてタウンハウスの中へ。私達が入ろうとすると止められたが、先代公爵が客だと言って私達も中へと入る。そのまま応接室のような部屋へ案内され、そこで寛ぐ事に。
私達もやっと来たという気持ちしかない。本来ならもっと早かったのを、かなり遅らせる羽目になったからね。仲間達も何だか疲れた顔をしている。自分の足の方が速いっていう状況だと、やっぱりストレスだよね。
「さて、これから陛下への謁見申請をするんじゃが、早ければ明日か明後日には叶うじゃろう。それまでは第4王子殿下も証人のそなたも我が家に居てもらう。でなければ何をしてくるか分からんからの」
「ヴィーも証人も死なれたら困るからねえ。もし死なれでもしたら、後腐れのないように王城内を掃除した方がいい。ミクなら秘密裏にやってくれるしさ」
「本当に出来るのだろうからこそ、何とも言えんのう。わしらの想像の埒外すぎて、どうにもならん。1国家があっさり転覆させられる力など、想像もした事が無い」
「そりゃそうだろうさ。そもそもミクと同じヤツなんて何処にも居ないよ」
私と言うよりは、正しくは本体と同じヤツは居ない、だね。
ま、神どもが新しく創ったら知らないけど。




