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0818・公爵家の愚か者




 Side:シャルティア



 ミクがバカを公爵の前に放り投げたけど、公爵自身はバカの事を何とも思っていないようだね。生きていると分かっているからか、大怪我をしているけれど気にはしていないみたいに見てとれる。どういう事なのやら?。



 「ふぅ……。こやつには愛想が尽きそうになるわ。我がデューダス公爵家の唯一の跡取りだからか調子に乗りおっての、公爵家の者だからか周りを当たり前に見下しよる。昔からそうじゃったが、コヤツを矯正する事は出来なんだようじゃ」


 「成る程、唯一の跡取りだから甘やかされてきた訳か。まあ、私がそんなゴミを許す事など無いのだがな。公爵家の権威も権力も同じだが、権威や権力というものは暴力に裏打ちされたものなのだ。こいつはそれを理解していないらしい」


 「暴力に、かい?」


 「そうだ。国なら軍事力と言い換えても良い。しかしな、それを歯牙にもかけぬ者はこの世に僅かながら居るのだ。1国家の軍事力に勝てる怪物というものが、この世には存在する。コイツはそれを知らんと私は言っているわけだ」


 「そなたは1国家の持つ軍事力に勝てると本気で言っているのかね?」


 「勝てるに決まってるだろうに。ミクはね、知っている者達からは最強の怪物と呼ばれるんだよ。その最強の怪物が、1国家より弱い筈が無いだろう? あたし達にとったら当たり前の事さ。当たり前過ぎて疑問も湧かないね」


 「……どうやら息子が言った事も間違ってはいなかったらしい。そなただけで国軍に勝てるなど、あり得る訳があるまい。ここまで頭が悪い者に息子がこんな風にされたとは……おい」


 「「「「「ハッ!」」」」」



 公爵らと一緒に来ていた騎士が動くが、阿呆に過ぎる。所詮は自分の見えているものしか見えない奴等か。あの爺さんは先代公爵だったのかもしれないけど、爺さんだけはジッとミクを見ている。


 先ほどの【陽炎の身体強化】を見極めようとしているんだとしたら甘いねえ。実に甘い。あたしがわざわざ最強の怪物だと教えてやったっていうのに……。あの爺さん以外はおごっているんだろう。愚かな事さ。


 ミクの周りを騎士が囲んだが、ミクは鼻で笑ってるね。それに大して怒ったのか、騎士達は一斉に剣を抜いて襲いかかった。が、それだけしか出来ず、何故か5人の騎士は全員宙吊りになってる。どうやら触手を使ったらしい。



 「なっ!?」 「ぐっ!」 「ぐぉ!」 「何だ!?」 「うわっ!」


 「……どういう事だ? 何故騎士達が宙に浮いている?」


 「それは……うん? 気絶から回復したか? お前のようなザコが何故調子に乗っていたのか知らんが、手も足も出ずにボコボコにされた気分はどうだ?」


 「……きさ……ころ……やる」


 「ほうほう、私を殺してやるか。いやいや素晴らしいな。お前如きゴミが私を殺せると? それは素晴らしい、是非やってみせてくれ。いつでもいいぞ、楽しみに待っていよう。ただし気をつけろ? 失敗すればお前もこうなる」



 そう言うと、ミクは首から上を肉塊に口と牙が生えた姿に変え、5人の騎士を貪り始めた。「ゴリ、ボリ、ベキベキ、バキィ!」という音が鳴り、胸鎧を着けていた騎士がミクに喰われていく様がハッキリと見える。


 それを見ている公爵家の3人は目を剥き、唯々喰われる様を見せられ続けるしかなかった。



 「だから言ったろう? ミクは〝最強の怪物〟だと。あたしは〝怪物〟だと言ったんだよ。理解したかい? ミクに暴力など通用しない、喰われて死ぬだけだ。人間種の持つ暴力など、怪物にとっては児戯でしかないんだよ」


 「「「「「………」」」」」


 「辺境伯もヴィーも声が出ないようだね。あたし達からすれば至極当然なんだけど、怪物に喧嘩を売るからこうなる。当たり前の結果になったに過ぎないのさ。どう考えたら人間種如きが最強の怪物に勝てるのか、あたしには分からないね」



 喰い終わったミクは、その場に要らない肉を放り出して顔を戻す。そしてそれを【葬炎】で焼き始めた。辺境伯もヴィーも何をやっているのか分からず、困惑の色を浮かべてる。流石にミクも説明してやるようだね。



 「何を困惑しているのか知らないけど、これは先ほどの騎士どもの膀胱とはらわただ。小便や糞が入っている部分など要らんからな。こうして焼いて処分しているだけだぞ?」


 「「「「「!!!」」」」」


 「生々しいけど単なる事実ですしね。ミクにとっては自分以外の生物というのはすべからく食べ物でしかないのです。つまり、食べ物でしかない者達が、いったい何を調子に乗っているのか。これがミクの偽らざる本心なのですよ」


 「そうだね。そもそもミクは神様が創りだした最強の怪物。その役目は地上のゴミを食い荒らすこと。普通に生きている者や善に生きる者ならば構わない。だが悪徳に生きるゴミは食い荒らせ。それが神様からの命令」


 「私達はその旅路の仲間というところね。だからこそ貴方達のようなのを見るとバカバカしく思えてくるわけ。だって神様の命に沿うゴミじゃない? さっきからの言動を聞いてたらさ?」


 「そうですね。とはいえ知らなかったのですから仕方ないのかもしれませんが、だからと言って神様の使徒とも言えるミクさんが遠慮をする必要なんて無いんですよ。ゴミは処分されるだけです」


 「「「「「………」」」」」


 「だから言ったろう? 最強の怪物が1国家に負ける筈が無いってさ。世の中には、お前達が知らぬ化け物が存在するんだよ。自分の知っている事が世の中の全てな筈が無い。あんまり世の広さを舐めるんじゃないよ」


 「それ以前にそこのゴミと貴様が私に喧嘩を売ってきたのだが、それは私に喰われたいという意味でいいか?」



 ミクがそう言った瞬間、爺さんがバカ2人を無理矢理に謝罪させた。それも殴りつけながらの無理矢理にだ。しかしその2人もミクの恐ろしさを知ったからか全力で謝罪を始める始末。本当に呆れてくるバカさ加減だね。



 「謝罪があったので許してやらんでもないが、私が気に入らんというなら何でもしてこい。その時がお前達の命の終わる時だ。楽しみにしている」


 「「………」」


 「恐怖で真っ青になっているところ悪いんだけどねぇ。ミクは神様からゴミを食い荒らせと言われてるって言ったろ。だからこの世をウロウロしているんだよ。今は公爵家の領地だから、今日の夜に領都の悪人は行方不明になるだろう。それは覚えておきな」


 「それはつまり……喰われると?」


 「それ以外にあるかい? ちなみに止めるのは不可能だよ。それが神様の命令だからね。だからこそ、ミクは魂の色で悪人かどうかが分かるんだし、神様から様々な事を教えられている。つまり最強の怪物から逃げる事は出来ないのさ」


 「そういえば、ミクは何でそこのゴミを喰わないの? それがちょっと不思議なんだけど、何か理由がある?」


 「いや、特には無いね。そいつはギリギリで悪人になってないんだよ、だから元々喰う気はなかった。もちろん私に敵対する奴等は善人かどうかなど関係なく殺されるけどね。それが嫌なら他人に喧嘩など売らなければいい」


 「いつも通りの当たり前な言葉ね。私達もそうだけど、ミクに喧嘩を売る奴等は唯の阿呆なのよ。最強の怪物だと分かった以上、それは簡単に理解出来るでしょう?」


 「「「「「………」」」」」



 そうアレッサに言われ、顔をコクコクと上下に振るしか出来ない5人。ま、ミクの本性を理解すればそうなるだろうさ。そして吹聴ふいちょうなどしない。そんな事をすれば喰われるという事は、バカでも分かる事だ。


 流石にそこのマヌケも理解してるだろう。


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